ルスルスーさようなら、普通さん。ー

仮乃 あお

文字の大きさ
7 / 13
第1章「普通」

第6話

しおりを挟む
もしかして私は今日死ぬの?
だって、こんな高さから落ちちゃったら、助かるわけがない。
火曜サスペンスでよく出てくる崖くらいは高さがある……ような気がする。
人が落ちている時、スピードが遅く感じるってよく聞くけど、かなり速い。


さようなら、私。


私は目を閉じて、なるがまま真下へ落ちていった。


だが、次に目を覚ました時は、何故か意識があった。
あれ?目が開けれるってことは、私助かったの?
今の事態に追いつけないで混乱してるいると、上の方から声がした。

「大丈夫?」

それは聞き覚えのある低く、落ち着いた声。
目の前にはカナコの顔があった。
そう、私は何故かカナコにお姫様抱っこをされている状態だった。

「え、えええ?!カナコさん?!……てか、カナコさん、私を山の上から突き落としませんでしたっ?!」

慌てて声を上げると、カナコは”は?”と怪訝そうな表情を浮かべながら、私をその場に降ろした。
周りを見回す限り、どうやら山頂に戻ってきたらしい。
どうやって山頂まで戻ってきたんだろう?
カナコが私を連れてきたみたいだが…。
もしかして山頂から落ちたこと自体夢だったりして…。

しかし、それもすぐさま否定されてしまう。


「あなた、一体何者?」


カナコが目の前にいる人物に警戒するように、問い掛ける。
見るからにその人物は……実乃梨だった。

「何者って?私はみよりの幼馴染みよ」

実乃梨が淡々と答えた。
もしかして、山頂から私を突き落としたのはカナコさんじゃなくて、実乃梨……?
そもそも冷静に考えると、本来実乃梨がこの時間にここに居ること自体がおかしい。
実乃梨は今日も歌の練習があると帰ったはず。歌のレッスンは通常通りに終われば夜の七時。そこから更に練習することもあると言っていた。
今はまだ七時五分。練習場所へは電車を使うって過去に実乃梨が言っていた。
レッスンが通常通りに終わったとしても、練習場所からこの山まで五分で来れるわけが無い。
それに真面目で努力家の実乃梨が、練習をサボるとも考えにくい。


「実乃梨なの?本当に……?」


私が問いかけると、実乃梨は気味悪く笑い出す。


「そんなわけないじゃん、まったく騙されちゃって」


次の瞬間、なんと実乃梨の手から植物のツルが現れ、そのツルが私の体にしつこく巻きついた。


「うわっ?!」


そしてそのまま私の意志とは反して、体ごと実乃梨の方へ引きずられる。

「ふふっ、私はこいつを殺したいだけ。邪魔しないでくれる?」

不気味に笑いながら、実乃梨はさらに体に巻きついているツルを強く締め付けた。
かなりの締め付けで、息をすることすら困難だった。

「うっ……うぁぅっ……」

声にならない痛みに、無意識に涙が溢れる。
実乃梨が私を殺したかったなんて。
体が限界を迎えそうだ。もう死が近いのかな。
またしても、意識が遠のいてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Re:コード・ブレイカー ~落ちこぼれと嘲られた少年、世界最強の異能で全てをねじ伏せる~

たまごころ
ファンタジー
高校生・篠宮レンは、異能が当然の時代に“無能”として蔑まれていた。 だがある日、封印された最古の力【再構築(Rewrite)】が覚醒。 世界の理(コード)を上書きする力を手に入れた彼は、かつて自分を見下した者たちに逆襲し、隠された古代組織と激突していく。 「最弱」から「神域」へ――現代異能バトル成り上がり譚が幕を開ける。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

物語は始まりませんでした

王水
ファンタジー
カタカナ名を覚えるのが苦手な女性が異世界転生したら……

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...