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勇者面接
しおりを挟む「いいかげん働きなさい」
魔王やら勇者やらの職業が増える中、優雅にニート生活を送っていた俺はついに母親にぶちぎれられた。
「なんもせずにダラダラ過ごして。今週中に面接すら行かなかったら家から追い出すわよ」
「面接かー。受けてもいいけど採用されるかは知らないよ」
「落ちてもいいから行ってきなさい」
俺は仕方なく勇者の採用試験を受けることにした。家から追い出されたらニート生活すらできないので苦渋の決断だ。
だが俺には策がある。面接でわざと不採用になるような発言をすればいいのだ。
会場に着くといかにも真面目そうな応募者がずらりと並んで座っていた。
今や勇者は人々の憧れである人気職なのでもちろんグループ面接だ。
「それではなぜ勇者になりたいのか、志望動機を一人ずつお願いします」
端から順番に各々が志望動機を語り始めた。
「えっと…僕は街の人の役に立ちたいんです」
「ぼ、僕は魔王を倒してお姫様と結婚したいんです」
「はい、では次の人」
俺の番が来た。
「できれば勇者にはなりたなくないのですが母親に尻を蹴られて仕方なく来ました。正直魔王とか怖すぎて戦いたくないです」
「なるほど。ではもし、どうしても魔王と戦わなきゃいけない状況になったらどうしますか?」
「強い仲間を引き連れて他力本願で討伐に臨むと思います」
周りの応募者は歯に衣着せぬ俺の発言に心底驚いていた。
これで俺の不採用は確定だと確信した。
それから数日後、合否結果が記されている便箋が届いた。
母親にこの合否結果を見せてやろうと俺は意気揚々に中の用紙を確認した。
「貴殿の極めて正直な物言い、高すぎないモチベーション、そして戦闘への冷静かつ計画的な姿勢は勇者として長旅をする上で重要な要素だと判断いたしました。よって、”採用”とさせていただきます」
ー完ー
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