貧乏から貧困、その先。

護茶丸夫

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01 こっちの暮らし

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「俺達の村なんて、中央から遠く離れた田舎だが、まぁまぁ食っていけただろう?」

 数年前に隣村に婿入りした親友のギルが、珍しく俺の所に顔を出した。
 こっちの暮らしを聞いてきたが、どこも似たようなもんだろ。
 苦しくなったのは間違いなく同時期だ。

「去年の収穫の後だ、冬入りする少し前にこっちでは追加の税金の徴収が始まったんだ。」

「ああ、こっちもあった。」

 ギルの所もやっぱりそれくらいだったのか、頷いている。
 いつの間にかとんでもなく痩せちまって、目だけがギラギラしてやがる。
 せっかくの男前が台無しだぜ。
 帰りに何か持たせてやりたいが、なにかあったっけか?

「それで、春に使うための一部を支払ったんだ。ああ、村みんなだよ。」

「支払えたのか? 全員が?」

「ああ、急だったからって、村長が少し立て替えてくれてな。そのあと換金の為に、町までの馬車を出してくれたのさ。」

「そうか、あの村長ならそうするよな。」

 ギルはうんうんと納得したように頷き、それで?と先を促してきた。
 塀の修繕をしながら話しているが、とっとと森への採集に切り替える事にしようか。
 帰りにはそれを持たせてやろう。
 うん、俺名案。
 
「雪が降り始めてたから、若衆総出で何とか戻ってこれた後は、生きた心地がしない冬だったね。」
「買い出しは雪がきつくなる前でギリギリ助かったよ。」

 一緒に家に戻り、籠を取る。
 もう一つを親友に持たせて、森に入る。
 笑って見せたが、こいつはニコリともしねえ。
 いったいどうしたんだ?

「春になって、種まきが終わって、みんなでやりくりしながら畑を囲む塀の補修もしたんだ。」
「そこで追加の税金催促がきたんだよ。」

 歩きながらも、ポンポン話を進める。
 親友はぽつりぽつりと返す。

「俺のとこもだった。いくさ用の徴収だって俺のとこの村長が言ってた。」

「いくさ用だったのか! こっちは教えてくれなかったぜ。でも、村長が全員分の税金を半分出してくれたんだ。」

「そうなのか、こっちはまったくだ。借金して収めたり、娘を身売りに出した家もある。」

 親友は俯きながら、首を横に振る。
 もうすぐこいつのこいつの好物だった、ちっちゃいブドウもどきの場所だ。
 あー小さい頃は、よくここで一緒に食べたな。って、はい?

「はっ? 身売り? お前!」

 確かこいつの娘は、まだ五つだったはず!
 一緒にブドウもどきを食べた頃の、親友の姿と重なる。

「いやいやいや、ない! 六つの可愛い盛りだぞ! あと年頃になっても嫁には出さねえ!」 

 強く首と手を振り、否定する親友。
 良かった、危うくこいつを軽蔑するとこだったぜ!

「村で一番の子沢山の家な、そこの二女が自分から。らしい。」

「あそこの家か。一番上は町に嫁に行ってたんだよな。」

「ああ、その長女も仕送りしてたらしいが。」

「子供六人は多すぎだろうさ……。」

「いや、七人目が……。」

「うっそだろ、おい!」

 何となく気まずくなって、黙々とブドウもどきと、キノコやら酸っぱい果実を収穫した。
 ふと思い出して、親友に話しかけた。

「村長がよ。」

「うん。」

「何でも良いから、保存食をいっぱい作るように言ったんだ。」

「そっか。」

「行商のおっちゃんいただろ? おぼえてっか?」

「ああ、あの声のでっかいおっちゃん。」

「あのおっちゃんから聞いた話って言ってな。隣の領もここら辺の町や村も、今年乗り切るのが精一杯だって言ってたって。盗人が増えるかもしれないから、用心しろって。」

「……そっか。」

「どこも通行料が値上がりしたから、物が減って下手すっと来れなくなるって。」

「うん。」

「今は貴族同士が喧嘩してるらしいんだってよ。いくさが終わったばっかりなのによ。」

「うん。」

 俺は一度手を止めて、うんと背伸びした。
 親友は黙々と山菜を採っている。

「夏前からさ、保存食ガンガン作っておいたんだ。だからさ、今日採ったやつ、全部持ってけ。」

「は?」

「俺の分も合わせりゃ、しばらく何とかなるだろ?」

「……。」

「んでさ、お前んとこの親父さんさ、狩りに出るのキツそうなんだ。嫁さんの親が良かったら、こっちに来いよ。」

 手を止めて、俯いている親友からは、返事は無い。

「狩りすんのもさ、俺達じゃ手が回らないんだ。お前がさ、復帰してくれたら俺も楽ができるなーっと。」

 黙ったままの親友を連れて家に戻り、ちょこっと甘い果実だけ取り分けて残りを親友に押し付けた。

「引っ越し考えとけよ。」

「トム……うん。ありがとう。」

 お互い泣きそうな顔になってるのがわかるから、そっぽを向きながら別れた。
 あとで、あいつの親父さんの所に行って話をしよう。
 きっと文句言いながら、空き家の手配するんだろうなぁ。
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