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02 代理の代理は未定で
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町長が役人に殴られて、町に連れて行かれた。
初秋の収穫が終わって、毎年収穫した物から税金の分を持っていく。
今年はいつも収める量でも税金の分に届かないからって、種もみや村の人間が食べる分も全部持っていこうとしたのを止めたらしい。
結局、村長と収穫分すべて持っていかれた。
なんだそれ。
まだ若い村長の息子アルバートが、代理で長になった。
村長が"戻って来なかったら"あとで正式に村長になるから、それまでは代理って理由だった。
いつまでだ、それ。
アルバートは、町の大きな商会に勤めていた経験があったらしい。
長い期間だと思ったが、ただの出稼ぎではなかったのか。
そこの伝手を頼って、出来れば連れて帰ってくるつもりだと。
「村のみんなに、今後の事を話しておきます。」
「恐らく、いえ、間違いなく冬に追加の税収が来ると思います。」
「父が、村長が捕まったのとは関係なく、他の所でも同じ様になるはずです。」
村長代理のアルバートが、村の広場で村民全てを集め話し出す。
町で情報集めながら、税金対策に家の物を換金してくるつもりだと。
もし、自分が戻らない時は代理の代理は未定で。
「村の事は、叔母に任せます」
「ただ、誰が代表か聞かれたら、代理人として私の名前を出して下さい。」
言い切った。
こいつも町に出て、下手したら捕まっちまう。
むしろ、その場に村に居ない人間の名前を言えばいいって、考えだろう。
村長代理が未定であれば、責任を取る人がいないから有耶無耶にしやすいって。
血縁者が女性の場合は、もっと緩くなるからって。
知恵者の叔母なら、上手くやってくれるって。
なんだそれ。
売れそうな物は、片っ端から持って行って換金してくるとは言うが。
夜逃げか。あ、逃げるのか?
いや、逃げてもいいか。
村長にはずーっと世話になった。
その恩人の息子ぐらいは、逃がしたって良いんじゃないか。
「アルバート、無理だけはしてくれるなよ。」
男勝りで、ずっと独り身を貫いた村長の妹のアンリは、涙ぐみながら一人っきりの甥っ子にそれだけ声をかけ肩を叩く。
「アンリ叔母さん、母さんをお願いします。」
「ああ、任せな。但し、兄さんに構わず、必ず帰ってくるんだ。」
「……。出来る限り、やってみます。」
アルバートと村人二人が馬車で村を出る。
最後になるかもしれない姿に、やるせない気持ちが胸に広がる。
「よし!残ったあたしらは、やることはまだまだある!冬がくる前に何とかしのぎ切れる様にするよっ!」
アンリは威勢よく声を出し、手を叩きながら冬越しの準備を割り振り始めた。
四十すぎの年齢の事さえ言わなければ、基本的にきっぷの良い男前だ。
あ、睨まれてる気がする。
やばいやばい。
村のみんなも、不安で押しつぶされそうな気持ちを、体を動かすことで紛らわせ始める。
俺も含めて、狩りのできる人間は総出で森に入る。
小さな子供達も、村外れに貯蔵穴を作る為の穴掘りを手伝う。
薪集めも、もうゆっくりとしか動けない年寄達が受け持った。
役人に見つからない様に、村外れの森の中に全て準備していく。
春まで生きたとして、その後は。
畑にまく種も何もない。
暗い気持ちに蓋をして、毎日淡々と自分の役割を只々こなす。
数日後、村長が戻って来た。
どうやら見せしめのために、散々嬲られ動かなくなったのを、広場に置き去りにされていたそうだ。
助け出すつもりだったが少し遅かったと、連れて帰って来たアルバート達は泣きながら村長の家の前で報告してきた。
運ばれる村長を見たが、やせ細り怪我もひどく、正直もう何日も持たないだろう。
馬車で帰って来れただけでも、運が良かった。
涙を流しながらも報告したアルバートが、換金したお金を皆で分けると言い出した。
元々村長の家にあった物がほとんどで、分ける必要はないだろう。
「なぁ、それは分けずに、お前さんが持っておくものだろう?」
たまらず俺は声をかけてしまった。
見た目が悪人な俺は、他所に行くたびに目を付けられる。
なるべく目立たない様に、大人しくしておくのが習慣になっていたのだが。
「いいえ、トムにいさん。必要になると思います。詳しくは中でお話しましょう。」
ぎゅうぎゅう詰めになりながらも、広めに作られた村長の家の中に皆でお邪魔する。
体中布で巻かれて横になっている村長がいた。
どうやら一緒に話を聞きたいからと、ベッドは拒否したそうだ。
まずは、町の様子を教えて貰った。
まだこっちほど危機感は無いらしいが、伝手の商会は隣国に逃げる予定だそうだ。
雪が降る前までには出るらしい。
そこで、村の人間を何人か一緒に連れて行って貰える様に頼んできたと。
少し猶予があるから、考えてみてくれって言われても。
逃走用のお金と、税金用のお金として皆で分配させてほしいだなんて。
ほんと、なんだそれ。
その日の夜、隣村の親友が家族を連れて逃げてきた。
保存用の食料もすべて取り上げられ、向こうの村長も捕まったそうだ。
とりあえず、狭くて申し訳ないが、一晩泊って貰う事になった。
夕食もまだだと聞き、嫁と子供達は、文句も言わず慌てて食事を用意しはじめた。
お客さん達の体の細さに、何か察した様子なのが嫁譲りの頭の良さだ。
顔が俺に似ちまって、三人とも目つきが悪いのが残念だ。
明日は村長の所で、親友の義父も一緒に詳しく話をする事にした。
隣村で何があったんだろう。
初秋の収穫が終わって、毎年収穫した物から税金の分を持っていく。
今年はいつも収める量でも税金の分に届かないからって、種もみや村の人間が食べる分も全部持っていこうとしたのを止めたらしい。
結局、村長と収穫分すべて持っていかれた。
なんだそれ。
まだ若い村長の息子アルバートが、代理で長になった。
村長が"戻って来なかったら"あとで正式に村長になるから、それまでは代理って理由だった。
いつまでだ、それ。
アルバートは、町の大きな商会に勤めていた経験があったらしい。
長い期間だと思ったが、ただの出稼ぎではなかったのか。
そこの伝手を頼って、出来れば連れて帰ってくるつもりだと。
「村のみんなに、今後の事を話しておきます。」
「恐らく、いえ、間違いなく冬に追加の税収が来ると思います。」
「父が、村長が捕まったのとは関係なく、他の所でも同じ様になるはずです。」
村長代理のアルバートが、村の広場で村民全てを集め話し出す。
町で情報集めながら、税金対策に家の物を換金してくるつもりだと。
もし、自分が戻らない時は代理の代理は未定で。
「村の事は、叔母に任せます」
「ただ、誰が代表か聞かれたら、代理人として私の名前を出して下さい。」
言い切った。
こいつも町に出て、下手したら捕まっちまう。
むしろ、その場に村に居ない人間の名前を言えばいいって、考えだろう。
村長代理が未定であれば、責任を取る人がいないから有耶無耶にしやすいって。
血縁者が女性の場合は、もっと緩くなるからって。
知恵者の叔母なら、上手くやってくれるって。
なんだそれ。
売れそうな物は、片っ端から持って行って換金してくるとは言うが。
夜逃げか。あ、逃げるのか?
いや、逃げてもいいか。
村長にはずーっと世話になった。
その恩人の息子ぐらいは、逃がしたって良いんじゃないか。
「アルバート、無理だけはしてくれるなよ。」
男勝りで、ずっと独り身を貫いた村長の妹のアンリは、涙ぐみながら一人っきりの甥っ子にそれだけ声をかけ肩を叩く。
「アンリ叔母さん、母さんをお願いします。」
「ああ、任せな。但し、兄さんに構わず、必ず帰ってくるんだ。」
「……。出来る限り、やってみます。」
アルバートと村人二人が馬車で村を出る。
最後になるかもしれない姿に、やるせない気持ちが胸に広がる。
「よし!残ったあたしらは、やることはまだまだある!冬がくる前に何とかしのぎ切れる様にするよっ!」
アンリは威勢よく声を出し、手を叩きながら冬越しの準備を割り振り始めた。
四十すぎの年齢の事さえ言わなければ、基本的にきっぷの良い男前だ。
あ、睨まれてる気がする。
やばいやばい。
村のみんなも、不安で押しつぶされそうな気持ちを、体を動かすことで紛らわせ始める。
俺も含めて、狩りのできる人間は総出で森に入る。
小さな子供達も、村外れに貯蔵穴を作る為の穴掘りを手伝う。
薪集めも、もうゆっくりとしか動けない年寄達が受け持った。
役人に見つからない様に、村外れの森の中に全て準備していく。
春まで生きたとして、その後は。
畑にまく種も何もない。
暗い気持ちに蓋をして、毎日淡々と自分の役割を只々こなす。
数日後、村長が戻って来た。
どうやら見せしめのために、散々嬲られ動かなくなったのを、広場に置き去りにされていたそうだ。
助け出すつもりだったが少し遅かったと、連れて帰って来たアルバート達は泣きながら村長の家の前で報告してきた。
運ばれる村長を見たが、やせ細り怪我もひどく、正直もう何日も持たないだろう。
馬車で帰って来れただけでも、運が良かった。
涙を流しながらも報告したアルバートが、換金したお金を皆で分けると言い出した。
元々村長の家にあった物がほとんどで、分ける必要はないだろう。
「なぁ、それは分けずに、お前さんが持っておくものだろう?」
たまらず俺は声をかけてしまった。
見た目が悪人な俺は、他所に行くたびに目を付けられる。
なるべく目立たない様に、大人しくしておくのが習慣になっていたのだが。
「いいえ、トムにいさん。必要になると思います。詳しくは中でお話しましょう。」
ぎゅうぎゅう詰めになりながらも、広めに作られた村長の家の中に皆でお邪魔する。
体中布で巻かれて横になっている村長がいた。
どうやら一緒に話を聞きたいからと、ベッドは拒否したそうだ。
まずは、町の様子を教えて貰った。
まだこっちほど危機感は無いらしいが、伝手の商会は隣国に逃げる予定だそうだ。
雪が降る前までには出るらしい。
そこで、村の人間を何人か一緒に連れて行って貰える様に頼んできたと。
少し猶予があるから、考えてみてくれって言われても。
逃走用のお金と、税金用のお金として皆で分配させてほしいだなんて。
ほんと、なんだそれ。
その日の夜、隣村の親友が家族を連れて逃げてきた。
保存用の食料もすべて取り上げられ、向こうの村長も捕まったそうだ。
とりあえず、狭くて申し訳ないが、一晩泊って貰う事になった。
夕食もまだだと聞き、嫁と子供達は、文句も言わず慌てて食事を用意しはじめた。
お客さん達の体の細さに、何か察した様子なのが嫁譲りの頭の良さだ。
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明日は村長の所で、親友の義父も一緒に詳しく話をする事にした。
隣村で何があったんだろう。
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