奴隷市場

北きつね

文字の大きさ
50 / 56
第九章 復讐

第五話 合屋

しおりを挟む

泰史やすふみ!」

「はっ」

泰章やすあきに、市花。新見。城井を呼びに行かせろ。泰史やすふみは、寒川を迎えにいけ。寒川の望みを聞き出してから戻ってこい」

「かしこまりました」

 夕花が会議室のロックを解除する。
 泰章やすあきは、頭を下げて部屋から出ていった。

「晴海さん。なんだから嬉しそうですね」

「そうか?」

「はい。僕、少しだけ嫉妬してしまいそうです」

 晴海は、夕花の頭をくしゃくしゃと撫で回した。

「夕花、もうすぐだ。俺の問題と夕花を狙っている奴らが繋がるかも知れない」

「え?晴海さん?」

「もうすぐはっきりとするから、はっきりしたら・・・。いや、今晩・・・。説明するよ。そして、二人で考えよう」

「はい。でも、晴海さん。忠義さんや礼登さんや泰史さんと話をしなくて、よろしいのですか?」

 夕花は、ひとまず納得した。
 はっきりしたらと言いながら、”今晩”説明すると言っているので、もうある程度は目処が付いているのだろう。

「大丈夫。彼らは、彼らの目的がある。夏菜と秋菜も同じだ。彼らの目的を実現するためには、僕が必要になる。だから、彼らは僕の為に動く」

「はい」

「僕のワガママだけど、夕花の問題は、僕と夕花で解決したい。解決方法が考えつかなかったり、難しくなったりしたら逃げてもいい。その時に、彼らを頼ってもいい」

「わかりました。僕の問題は、僕が死ねばいいと思っていたけど、違うのですね」

「うん。それも合わせて説明するよ。その辺りがまだ曖昧な状況だ」

「わかりました。晴海さん。二つだけ、知っていたら、判明していたら教えて下さい」

「なに?」

 夕花は、晴海の顔を覗き込むように見つめる。
 泣きそうな顔は、何かを知りたいけど、知るのが怖いという思いなのだ。
 現実となった時に、自分がどう反応して良いのか解らないのだ。感情が整理されていないが、今晩の説明を受ける前に知っておきたいのだ。

「一つは、母の旦那だった人と私の前に母から産まれた男は、死んだのですか?」

「死んだ。遺体は確認出来なかったが、確実な情報だ」

 死んでいると思ったが確認しておきたかった。

「そうですか・・・。もう一つは、私の母を殺したのは・・・。私の前に産まれた男ですか?」

「違う。組織の人間だ」

 心のどこかで想像をして、想像した度に打ち消していた。

「・・・。よかった・・・」

「夕花の母親を殺したのは、俺の家族を殺して、俺を殺そうとした。今も、別の人間を使って俺を殺そうとしている」

「え?それは、僕が居るから?」

「それは偶然で、先方も困惑しているようだ」

 晴海は、神妙な顔から、悪巧みが成功した子供のような顔になる。

「晴海さん?」

「ん?もう、今日のクライマックスが楽しみになってきた」

「そうですか?」

「夕花も、話を聞いて、驚いていいからね」

「不安な気持ちになりましたが、わかりました」

「うん。夏菜と秋菜が夕花を守るから安心して」

「はい?」

「彼女たちからの願いの一つだよ。これは、教えてもいいから、夕花に教えるね」

「はい」

「夏菜と秋菜は、特に、夏菜は、冬菜の死に責任を感じている。本来なら、あの日、あの夜の集まりには、夏菜が出るはずだった。でも、朝に倒れてしまった僕の病院に付き合ったのが、夏菜で、夏菜の代わりに集まりに出たのが冬菜だった。順番では、秋菜になるはずだったけど、秋菜は別口で用事があって集まりに出られなかった。そして、集まりで事件が起こった」

「・・・」

「夏菜と秋菜は、夕花に冬菜を重ねている。冬菜は、夕花と同い年で、夕花の髪の毛と同じ髪色だ」

「そうなのですか・・・。お姉ちゃんたちなのですね?」

「ハハハ。そうだな。夕花が”お姉ちゃん”と呼んだら喜ぶぞ?」

「僕も、男の親族は居たけど、お姉ちゃんが居なくて、欲しかったから、夏菜さんと秋菜さんが怒らなければ、”お姉ちゃん”と呼びたいです」

「会議とかでなければ、許してくれると思うぞ?」

「はい!」

 扉がノックされた。
 最初に、礼登が入って、忠義と夏菜と秋菜が続いた。

 泰章やすあきが扉を押さえて、市花、新見、城井と入ってきた。

 先程まで座っていた席に座った。
 夏菜と秋菜は、夕花の後ろに立つ。忠義は晴海の隣に座る。礼登は、クルーザーの状態を確認すると言って会議室から出た。

「お館様?」

 泰章やすあきは不安が混じった声で晴海に問いかける。

 晴海は手で泰章やすあきを制した。

「晴海さん?」

「そうだな。泰史やすふみから話を聞いた、理由もしっかりと聞いた、確かに六条の本邸の近くに居たと認めた。しかし、その後の行動と理由もしっかりと説明出来た。証拠も提示出来た。よって、合屋は無関係だと”私”が判断した。泰史やすふみの話は忘れる」

 晴海の言葉で喜びの表情を浮かべる二つの家。明らかに失望した表情を浮かべたのが二人。些細な表情の変化だったが、晴海も忠義も見逃さなかった。

「お館様。それでは、合屋家の次期当主はどこに居るのですか?」

直道なおみちは、私が無関係だと言った、泰史やすふみが気になるのか?」

「いえ、お館様のご判断を疑うわけではありません。しかし、この場に居ないのは・・・」

 ドアがノックされた。夏菜がドアを開けた。
 泰史やすふみ九法くのり幸田こうたが部屋に入ってきた。

泰史やすふみ

「はい。お館様。寒川家は、幸田こうた殿が次期当主となると決めたようです」

「そうか、わかった。幸田こうた。いや、文孝ふみたか泰史やすふみの言は間違いないか?」

「はい。義父の文武ふみたけより、文孝ふみたかの名前と寒川を頼むと言われました。お館様。お許しを頂けますか?」

「お前の望みは?」

「妻舞美まみと産まれてくる子供の安泰です」

「わかった。文孝ふみたかを寒川家の次期当主と認める。能見!」

「はっ」

「手続きを頼む。後見人は、泰史やすふみ。お前がやれ。私と夕花に手間を取らせた罰だ」

 異議など出るはずがない。六家では、六条家の当主が決めた事が絶対なのだ。

「お館様!それでは、合屋家が大きくなりすぎます!それに、寒川家なら、我が城井家か新見家の方がうまく処理することが出来ます」

直道なおみち!私が決めた事が不服か?」

「いえ、そうでは・・・。しかし、それでは・・・」

泰章やすあき直道なおみちは、不服らしいぞ?お前は、私に何を捧げる?」

 泰章やすあきに視線が集まる。
 晴海は、泰章やすあきの考えを忠義経由で聞いている。カードの切り時だ。晴海は、勝負に出ている。市花は、絶対にヤブを突かない。自分の家が守られればいいのだ。新見も基本は同じだ。権益を欲しては居ない。

「お館様。いえ、晴海様。私は、先代様と一緒に・・・。今は、晴海様のお考えになっている状況を良くする話をします」

「頼む」

泰史やすふみを合屋家の次期当主から外します。そして、私泰章やすあきが生きている間に、合屋家を解体したいと思います。合屋家の持っている物は、六条家にお返しいたします。本来なら、晴海様ではなく先代様にお返ししたかった・・・。です」

 皆が固まる。

「続けろ」

「はっ。晴海様。お願いがあります」

「なんだ、言ってみろ!」

「はい。私・・・。泰章やすあきが死んだ時に、先代様のお隣で眠る許可をください。それまで、先代様の墓守をさせてください」

 テーブルに頭を打ち付ける勢いで下げた。握られた手からは血が滴り落ちている。

「それが、お前の願いであり、けじめのとり方なのだな」

「はっ」

「私は、先代様と約束しました。先代様を守り通すと・・・。その為に、合屋の力を使いました。しかし・・・」

「わかった。泰章やすあきの好きにしろ。合屋家が預かっている権利や人は六条で預かる。泰史やすふみ!」

「はっ」

「寒川の整理が出来たら、お前も自由にしていい。今までの忠義。たしかに受け取った」

「ありがたきお言葉。できましたら、私の身体。命を、お館様に捧げます。お受取りください」

「わかった。まずは、寒川をしっかり立て直せ。話は、それからだ!」

「はっ!」

 泰史やすふみの言葉に隠れて、一人の男性がした舌打ちを晴海は聞き逃さなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

汚部屋女神に無茶振りされたアラサー清掃員、チートな浄化スキルで魔境ダンジョンを快適ソロライフ聖域に変えます!

虹湖🌈
ファンタジー
女神様、さては…汚部屋の住人ですね? もう足の踏み場がありませーん>< 面倒な人間関係はゼロ! 掃除で稼いで推し活に生きる! そんな快適ソロライフを夢見るオタク清掃員が、ダメ女神に振り回されながらも、世界一汚いダンジョンを自分だけの楽園に作り変えていく、異世界お掃除ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...