288 / 323
第二十八章 新婚
第二百八十八話
しおりを挟む湖の集落に行く前に、フラビアとリカルダから報告を受ける。
湖の集落は、ギュアンとフリーゼが仕切っていたのだが、人が増えた。フラビアとリカルダも運営の手伝いを行ったが、限界が近いようだ。
元々は、別荘地にする予定で整備を行っていた。
そのために、交通の便や、移動のしやすさや、生活を行う為の設備が少ない。
フラビアとリカルダは、馬車の本数を増やして対応を行っていた。
「そもそも、湖の集落は、別荘地だぞ?そこに、利便性を求めるような奴は、他に移動した方がいい」
俺の言葉に、フラビアが反応した。
どうやら、最初はそのつもりで受け入れを行っていたのだが、近くには自由区しかなく、商業区のような大量に購入できる場所がなかった。
そのために、商業区まで買いに行くと、今度は荷物の運搬に時間がかかるようになってしまう。
この循環が悪い方向に転がってしまった。
「そうか・・・。商店か・・・。ちなみに、”湖の集落”の戸数は?」
「把握できているのは、23です」
「ギュアンとフリーゼを入れてか?」
「はい」
23。増えるとしても30位だ。限界集落よりも少しだけ多いと考えると・・・。辻馬車の本数を増やすよりも、移動販売を行う馬車を作った方がいいかもしれない。
「フラビア。リカルダ。これから、言うような施策を行ったとして、十分に満たせられるか考えてくれ」
「??」
不思議そうな表情をする。二人に、移動販売を行う馬車を説明する。
行商と同じ仕組みだ。
それを、”湖の集落”と商業区を、往復させる。
「行商ですか?」
行商と同じだが、同じ場所を繰り返し移動するのだから、移動販売がしっくりくる。
途中の自由区に寄ってもいいけど、決められた時間に、決められた場所に行くように調整すれば、それは商店と同じような物だろう。
代理購入に近いけど、比較的、購入頻度が高い物や消耗品は、常に仕入れておけばいい。
これは、行商と同じだ。フラビアとリカルダもイメージがしやすいだろう。
「そうだ。行商は、荷馬車を使うけど、こっちは馬車を使う。人も一緒に運べるようにする。馬車を連結させる」
「連結ですか?」
人を運ぶようにしておけば、”購入が出来なかった”と文句を言われた時に、商業区まで連れて行けばいい。そのための足として利用ができる。
「そうだ。しっかりとした道を作れば、馬の負担も少なくなるだろう」
道の作成が大前提だけど、できるだけ直線にしておけば、負担も減るし、レールを引くことも可能になる。
最終的には、電車とは言わないけど、レールの上を走らせたい。
「大規模な行商だと考えれば・・・」
イメージが難しいのだろう。
大規模な行商だと思ってくれれば十分だ。
「そうだな。商隊だと思えばいいだろう。”湖の集落”に商店を作るよりはいいだろう。移動販売に無いものなら、そのまま馬車に乗って商業区に買出しにいけばいいだろう?」
「人選が難しいです」
「そうだな。商品は、スキルカードでのやり取りではなく、各商店と”客”とのやり取りを考えている」
「??」
通貨の導入だ。
二人に説明を行う。
元の世界にあったような、通貨制度の導入は難しいと、考えている。
状況に合わせて、やってみればいいと考えている。まずは、スキルカードの代わりに行政区が発行する札を使うようにする。
”湖の集落”に住んでいる者たちは、行政区で”割符”を購入する。
この購入時に、移動販売を行う者の報酬が加算される。その後、購入する時に、割符で移動販売馬車から商品を購入する。商店は、貰った割符を行政区でスキルカードと交換する。
割符なので、切った枚数は把握が可能だ。不正はできるだろうけど、メリットが少ない。
割符が扱える商店を行政区で選別すればいい。この仕組みを、広げていけば、いずれは通貨と同じように取引ができるようになる・・・。と、いいな。
「どうだ?」
「解ったような・・・」
シロは、話を聞いていたが途中で諦めた様だ。
ギュアンとフリーゼに話を聞きに行くと言っていた。
フラビアとリカルダも、どちらかがシロに着いていこうとしたが、二人で話を聞くようにつたえた。
「ひとまず、理解したことをまとめてくれ、あと、移動販売馬車の責任者は二人にするからな」
「「??」」
ここまで話をしたのだから、わかるだろう?
それに、シロの従者なら、どちらかが居ればいい。常に二人で居る必要はない。
「それで、神殿区に居る子供たちを使って欲しい。いわゆる、手伝いだな」
神殿区の子供たちは、一時は数が減っていると報告があったが、昨今、他の大陸・・・。主に、中央大陸から流れてきた集団の中に、子供が多くいる場合があり、神殿区で子供たちを保護しなければならない状況になっている。
「え?」
フラビアは、状況をなんとなく感じたのだろう。
納得した表情をしている。
「リカルダ。子供に移動販売を教え込んで欲しい」
「あっ!はい!」
理解ができたのだろう。
神殿区では、子供たちに文字の読み書きだけではなく、簡単な計算も教えている。
最終的に、どんな職業を目指すにしても必要な知識だ。
それらを実践で試す機会を与えようとしている。
テストケースとなれば、行政区から委託される形で、洞窟区やヒルマウンテン、ブルーフォレストとのやり取りを行ってもいいと考えている。それぞれには、行商が居るのだが、行政区が仕切るのは、行商よりも値段は高くなるが、行政区からの割符での商売が可能だという部分に、メリットを感じてくれたら嬉しい。
失敗してもいい施策なので、気楽に考えていられる。
失敗したら、貨幣の導入を遅らせればいいだけだ。
「わかりました。子供たちの為・・・」
「そうだな。それと、”湖の集落”に商店を作る必要がなくなるメリットが大きい」
「え?」
商店は作りたくない。
せっかく、商業区という場所を決めたのに、それを無視して商店が作られるのなら、いろいろな場所に出来てしまう。
それは避けたい。商人が嫌いではないが、目の届く範囲に留めておきたい。
「移動販売が商店だろう?毎日は無理でも、隔日くらいには、小さな市が開かれることと同じだぞ?常設の商店が欲しければ、それこそ、”湖の集落”に住むな・・・。と、いいたい」
小さな市になる位の馬車が必要だな。
2連結では足りない可能性があるけど、多くなっても30戸だろう?気にしなくていいかもしれない。
3連結くらいまで考えておけばいいだろう。
「・・・」
フラビアもリカルダも内容は理解ができるのだろうけど、何か釈然としない雰囲気がある。
「なにか?考えや疑問があるのなら、聞くぞ?」
二人から、切実な訴えとして、『”シロの従者”を辞めたくない』と言うのをいろいろな言い方で、告げられた。
「ん?辞めなくていいぞ?むしろ続けて欲しい」
「え?」「??」
「最初の事は、交代で移動販売に着いて行く必要があると思うけど、しばらくしたら、冒険者たちを雇ってもいいし、それこそ神殿から巣立った者たちの仕事としてもいいと思うぞ?」
二人は、お互いの顔を見て、納得できたのか、計画実施に当たっての考えられる疑問をぶつけてきた。
すぐに答えられる質問は、答えを告げた。答えられそうにない質問は、時間を置いて検討すると約束した。これは、ルートガーに投げないほうがいいだろう。そろそろ苦情の嵐が吹き荒れそうだ。
ひとまず、”湖の集落”商店問題は、方向性が決まった。
責任者の二人は、お互いでまだ何か確認を行っているが、疑問点が出たらまとめておくように伝えて、ギュアンとフリーゼの所に向かった、シロを探すことにした。
本来の目的である。ギュアンとフリーゼとの話し合いは、すんなりと終わるといいな。
0
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上悠は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏も、寿命から静かに息を引き取ろうとする。
「助けたいなら異世界に来てくれない」と少し残念な神様と出会う。
転移先では半ば強引に、死にかけていた犬を助けたことで、能力を失いそのひっそりとスローライフを送ることになってしまうが
迷い込んだ、訪問者次々とやってきて異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる