スキルイータ

北きつね

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第二十九章 鉱山

第二百九十五話

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 よくわからない状況になった。

 中央大陸に向っている。もう、港に辿り着いた。
 船の手配も終了している。

 竜族に乗っていくという話も有ったが、中央大陸に行くのには向かないと判断された。
 一人、強固に反対した者が居たので、今回は船で移動する。

 船も、通常なら数日から待つ時には2-3週間は待機の日数が必要になるのだが・・・。俺たちの予約は、すんなりと通って、今は船の上だ。
 あと数時間で出港する。

 横に居る人物に声を掛ける。

「ルート。本当に大丈夫なのだな?」

 本来なら俺の代わりに、チアル大陸を統治する。ルートガーが俺の横に居る。
 そして、ルートガーの居る場所は、本来なら”シロ”が居るはずだ。

「もう、何度も言っているが大丈夫だ。今まで、お前がやってきたことを信じろ」

 自分がやってきたことだから信じられない。
 検証をしていないことが多すぎる。それに、俺を信じられないから、ルートガーや長老衆という諮問機関を作った。俺が暴走しても、大丈夫なようにした。一番のストッパーが居なくなるのでは意味がない。正直な話をすれば、中央大陸やゼーウ街が滅びても俺は構わない。チアル大陸が安全で過ごしやすいようになっていればいい。内需だけで、やっていける状況にはなっている。外交をしなければならないのは、俺たちではない。

「だから、不安だ」

 ルートガーの表情が強張る。
 俺が言っていることが解るのだろう。解っても、既に遅い。

 俺たちは船の上だ。
 今回は、さっさと攻略して、ダンジョンコアを眷属にする。眷属に出来なければ、新しいコアに管理させる。

 そのために、カイとウミとライが一緒に来ている。
 エリンは、まだ竜族の里から戻ってきていないから、今回も不参加だ。それに、エリンはダンジョン攻略には向かない。ダンジョンを破壊するのなら、エリンと竜族を連れて行けば簡単にできるのだが、鉱山として残さなければならない。

「はぁ・・・。大丈夫だ。長老衆は残っている。クリスと従者たちも半分は残っている」

 ルートガーから言われたことも解っている。
 別に、誰かがクーデターで現在の体勢をひっくり返そうとしているとは思っていない。可能だと思っているのならやってみればいい。そして、俺を背後から刺殺して、全てを手に入れようと思うのなら実行してみればいい。失敗した時に、どんな報いを被るのか想像してから実行することをお勧めしたい。そして、成功した時に、何が発生するのか少しだけ想像してみればいい。

「それは、理解しているが・・・。ルート。人選は、任せた。確かに、任せたが・・・」

 周りを見て、ルートガーの人選に文句はない。任せたのだから、文句をいうのは筋違いだ。
 クリスの従者になっていた。イェレラとイェルンとロッホスとイェドーアを連れてきている。

 それから、ノービスからピムが参加している。最近は、ロックハンドの拠点での活動よりも、ルートガーから依頼を受けて、各地を巡っているようだ。斥候の力を落さないために、今回のダンジョン攻略に参加したようだ。

 途中までは、リヒャルトが一緒だった。
 船には乗っていない。欲しい素材が書かれた書類をルートガーに渡していた。にこやかに手を振って、帰っていった。

「何か不服か?」

「いや、しょうがない部分は認める。それに、メリットも解っている」

 メリットは大きい。
 出発前になって、シロが体調の不良を訴えた。
 強行軍ではなかったが、エルフ大陸ではかなりの距離を移動した、疲れていても不思議ではない。それに、エルフ大陸では自分の身の回りのことは、自分で行うことが多かった。慣れない野営も行った。疲れが溜まっていたのだろう。
 シロは、中央大陸に一緒に行くと言っていたが、フラビアとリカルダが強固に反対した。二人の説得を受けて、シロはチアル大陸に残ることになった。当然の様に、フラビアとリカルダも残る。ステファナとレイニーも残ることに決まった。同時に、シロの眷属であるエーファやレッチェも残る。

 戦力ダウンは仕方がない。
 そこで、ルートガーに人選を任せた。

 その結果。
 俺が行くのは、決定事項だ。攻略には、俺とカイとウミとライが必要だ。
 戦力は、大丈夫だと思うが、野営やダンジョン内での交渉で、得意な奴が必要だった。そのために、ルートガーに人選を任せたら、本人が行くことに決まっていた。他に行けそうな者が居なかったことも理由だが、行政を俺とルートガー抜きで回せるようにするためだと押し切られた。
 クリスティーネは、長旅ができない。それでなくても、ダンジョンに入るのは無理だと判断された。

 野営とダンジョン内での抑止力の為に、クリスの従者である者たちが付いてくることに決まった。
 ピムは、ダンジョンに行きたかったらしい。斥候の技術を錆びつかせない為だと言っている。

「そうだ。俺もだけど、イェレラやイェルンやロッホスやイェドーアに戦闘訓練を積ませられるのが大きい。それも、かなりの安全マージンを作っての実戦形式だ。それは感謝する。クリスの従者としてだけでなく、護衛としての役割にも繋がる」

「今は大丈夫なのか?シロには、フラビアとリカルダが居る。そのうえ、リーリアとオリヴィエが護衛になる。そのうえ、崖の家に居るからエントたちが守っている」

「大丈夫だ。ライマンたちから、護衛ができる者たちを回してもらっている」

「そうか、ライマン奴隷商には、ヴィーラントが居れば大丈夫だな」

「あぁそれに、クリスが居る場所を特定できるような者はほぼ居ないだろう?」

 ルートガーが、ニヤリと笑う。
 確かに、クリスティーネが住んでいる場所を特定できる奴は、皆無だろう。
 いくつかの転移の魔法陣を繋いだ場所に住んでいる。それだけではなく、獣人族の中心地に屋敷を構えている。表には門がない。ダンジョンからの入口しか作られていない。過保護なルートガーが作った屋敷だ。
 外に出ようとしても、警戒心が強い獣人族が守っている状況だ。俺たちの家を除けば最強の屋敷だ。

「それで、最初の”大丈夫か?”に戻るけど、攻略は、俺たちが行う。チアル大陸も大丈夫だろう。俺がしてきた事ではなく、ルートが作り上げた物を信頼している。ゼーウ街への対応は大丈夫だよな?」

 得心がいった表情で、ルートガーは俺を見返してきた。
 俺の”大丈夫”には、複数の意味が含まれていた。チアル大陸も心配だが、心配をしてもしょうがない。最悪の場合でも、”シロ”の安全が確保されるのが大事で、他は問題ではない。ルートガーの大切な者も大丈夫だと言っている。
 それなら、最後の一つだけだ。

「それは、話を聞いてみないと解らないが、お前の話を聞いた限りでは、大きな問題はドワーフ族への対応だが、それは、俺たちが考えることではない」

「そうだな。ルートの予想だと、俺が交渉のテーブルに出るのは、カードとしては切らないのだろう?」

「あぁお前が出てしまうと、交渉ではなくなってしまう」

「そうか?」

「そうだ。いい加減に理解しろ。お前は、支配者だ。一つの大陸をまとめた者だ。残念なことに、チアル大陸のトップだ。竜族を従える。現在の中央大陸には敵対できる組織や街はない。お前が交渉だと言ってテーブルに着いた時点で、交渉ではなく、命令になる」

「おぉ・・・。わかった」

「”わかった”のなら、おとなしく・・・。ダンジョンの攻略をして、コアを支配しろ。それ以上は、何もするな」

「ん?ルート。お前が、コアを眷属にしていいぞ?」

「ダメだ」

「なぜ?」

「俺が力を持つのは、ダメだ」

「・・・。そうか?」

「そうだ。良からぬ事を考える者が出て来る。いいか、お前の代わりができる者は居ない。そう思わせなければダメだ。俺やクリスができるのは、代官だ。お前の代わりではなく、お前から委譲された権力を使うだけだ。いい加減に、認めろ!」

 船が出港の合図を受け取って、離岸した。
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