チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

文字の大きさ
152 / 161
第八章 王都と契約

第十四話 そのころ・・・2

しおりを挟む

 神殿が表舞台に出る準備を行っていた時に、神殿に行くことを拒絶した者たちも、自らのスキルを使って動き出していた。

 最初に動いたのは、教会に伝手があるフレットコンラート松田だ。

「おじい様!」

「なんだ?」

 コンラート家は、王家よりの人間で穏健派の筆頭と考えられる。教会の中では、穏健派をまとめている立場の家だ。

 フレットが、父親や母親ではなく、祖父を頼ったのにも理由がある。

「おじい様。教会の武器や防具や服飾関係は、どなたが仕切っていらっしゃるのですか?」

 フレットが行おうとしているのは、カルーネ清水結衣が作る武器や防具を教会騎士に持たせることだ。ギルド周りには、武器の供給は出来そうにない。そのために、供給先として教会関係を考えたのだ。
 それと、アルマール千葉美久が作る教会の法衣を祖父に着て欲しいと考えている。
 自分は、教会への伝手があり、それを使って、カルーネとアルマールと共闘する。自分は、教会の中で地位を得て、影響力を得ようと考えている。

「ん?法衣は、我が家が一括で購入をしている。武器や防具は、教会騎士団か・・・。我らの派閥が管理をしている」

「紹介したい者たちが居るのですが?」

 祖父であるコンラート卿は、孫娘であるフレットを見つめながら考える。
 もちろん、孫娘は可愛いと考えている。しかし、教会の枢機卿まで登り、次の教皇に近い位置に居る。現状では、ボルダボ派閥と競い合っている。今の教会筋の派閥の状況は、45対50対5になっていて、まだ先のことだが、派閥の強化が絶対的に必要な状況だ。

「フレット。会うだけだ。その時に、その者たちができる最高の作品を持ってこさせろ。話はそれからだ」

 フレットは、祖父の迫力に押されながらも、しっかりと頷いた。
 一歩目が肝心だと解っていた。

 そして、無事に祖父から”会う”という言葉を引き出した。

 教会の穏健派は、武器と防具の仕入れ先を変更した。
 通常なら、下級騎士の装備から変更されるが、今回の変更は上位の騎士から変更された。納品された武器や防具の質が高いのが理由だ。オーダーメイドで作られた武器よりも品質がよかった事から、上級騎士が希望した結果だ。上級騎士に武器が行きわたってから、今度は武器のオーダーメイド品が切り替わった。上級騎士が得ていた質のよい武器は、そのまま同派閥の下級騎士に渡されることに決まった。
 防具は、体格のこともあり最初からオーダーメイドに近い状況だった。
 それが、一人のパシリカを終えたばかりの少女が作り出したとは誰も考えていなかった。

 法衣は、素材の変更やフレットも知らなかった仕来りに沿った変更が行われて、派閥の者たちに配られることに決まった。
 元々は、法衣は敵対派閥が抱えていた服飾工房が作っていたのだが、フレットの活躍で同派閥内に服飾工房を招き入れることが出来た。装備関連の工房と同じように、派閥内で囲むことが決定した。

 二つの工房をまとめるのは、新しく最年少司祭となったフレットが取り仕切ることに決まった。
 工房の場所や従業員は、コンラート家の領地に置かれた。マガラ渓谷とは反対側にあり、北方連合国ノーザン・コンドミニアムの近くだ。北方連合国ノーザン・コンドミニアムからの交易品を取り扱う都市であり、発展が期待される場所だ。
 フレットは、領都内に作られた教会を拠点にして、カルーネとアルマールと一緒に生活を始めた。王都では、二人を自分と同じように扱う事が出来なかったためだ。二人とも、身柄の安全と今後の生活基盤が出来たことを喜んだ。
 領都では、二人は教会騎士に降ろす武器や防具よりも、弱い物や失敗作を売りに出した。
 これが行商人に売れに売れた。提携している店に出せば、即完売の状況になってしまっている。

「ねぇ昴」

「なに?」

「この世界は、魔物が居るよね?」

「うん。美久もレベルアップのために、狩ったでしょ?」

「うん。でも、服はしょうがないとしても、武器や防具まで、なんであんなに脆いの?」

「あぁ・・・。服飾は、教会でも今までは、貧民街とか、働き手を亡くした人たちが行っていて・・・」

「え?それじゃ!」

「あっ!大丈夫。ほら、この前、美久に聞いて、型紙とか、既製品の話を聞いたでしょ?」

「うん」

「あの情報を、今まで服飾の生産を担っていた人たちに流して、教会が一括して買い取って、施しで出すことに決まったから、仕事は奪っていないよ?それよりも、美久の・・・。アルマール方式で出す計画だけど・・・。ダメ?」

「え?私の名前?」

「そう。まだ名前は変えられるけど・・・」

「ううん。違うよ。私の名前が出てしまうと、私の功績になるよね?殆ど、昴がやったことなのに?」

「あっ。白い部屋?」

「うん」

「結衣とも話をしたけど、私たちの3人では、トップは無理だと思う」

「・・・。うん」

「どちらにも敵対しないで、影響力を出せるようにした方がいい」

「そうだね。そういえば、結衣は?」

「あっ王都に向かった」

「王都?」

「うん。王都の奴隷商から、目的の人員が見つかったと連絡が入ったから、結衣が自分で見に行くことにしたみたい」

「護衛は・・・。必要ないか?」

「うん。でも、教会騎士を3人つけた。教会騎士だと解れば、盗賊も貴族も襲ってこないからね」

「そうだね。昴から聞いていたけど、びっくりしたよ。本当に、野盗が教会関係者だと解ったら、攻撃を止めたよね」

「うん。多分、日本と違って”神”の存在が近いから、教会騎士が守っている人を攻撃して、”神”に見放されるのが怖いのだと思う。まぁ半分以上は教会のプロパガンダだとは思うけど・・・」

「そうね。あのアドラが天罰とか・・・。やらないだろうね」

「そうだよね。でも、使える権力は、使ったほうがいいよね」

「ははは。そうだね。教会なら、権力もだけど・・・。他にもいろいろ使える力があるよね」

 二人は、お互いに報告を行った。
 些細な事でも、情報の共有は行っておかなくては、信頼が築けないと思っている。
 この場所に居ない。カルーネも同じ考えだ。

 カルーネがフレットにだけ伝えて王都に向かったのは、助手を務められる人材を求めていたからだ。奴隷制度は3人とも好きには慣れないが、自分たちのステータスや能力が知られるのは、もっと都合が悪い。その為に、自分たちの身元を隠すために必要になる。身代わりを奴隷に求めたのだ。
 助手として働きつつ、表舞台に立ってもらう人材だ。
 3人と背丈が似ている女性の奴隷を3人と従者候補を3人。あとは、教会騎士の身分を与えても問題がない位に教育を行い。護衛として使える6人が見つかったという連絡が入った。
 3人の中で、人物鑑定の能力が高いカルーネが王都に向かうのは必然だった。

 奴隷商も、コンラート家からの要望なので、他の奴隷商にも声をかけて、問題がない奴隷を集めた。

---

「どういう事だ!」

「すみません。王都だけではなく、近隣の奴隷商に問い合わせをしましたが・・・」

「奴隷が手に入らない?」

「スラムや金のない奴らは居るだろう?攫ってこい!女も連れてこい!この前の奴らは、壊れて殺した」

「ひっ・・・」

「どうした?」

「いえ、王家やミヤナック家の締め付けがあり、スラムも既に・・・」

「難しいというのか?」

「・・・。はい」

「っち。使えない。西沢!なんとかならないのか?」

「無理だね。君たちはやりすぎた」

「何!?」

「それに、ここでは、自慢のパパの権力は使えませんよ?そんなにブクブク太って醜くなってしまって」

「西沢!貴様!俺様に逆らうのか!?」

「違うよ。僕は、君に現実を教えてあげたいだけ」

「西沢!!」

「あっ間違えた。君たちに、現実を教えてあげようと思っただけだよ。立花君。山崎君。橋本君。森中君。川島君」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...