チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

文字の大きさ
160 / 161
第八章 王都と契約

第二十二話 共闘(1/2)

しおりを挟む

 ローザスから話を聞いて考えがまとまった。

 神殿でもパシリカを行う。教会が行っているパシリカとは違う方法で・・・。ロルフが言っている本当のパシリカを公開する。
 あと可能であれば、ミヤナック家や王家に近い貴族家でも同じように、本当のパシリカを行わせたいが、時期尚早だろうか?

 教会と敵対するのは確実だ。そして、貴族の一部からも反感を持たれるだろう。

 そのためにも準備は必要だ。
 すぐに公開しても意味がない。

「ハーコムレイ。神殿でパシリカを行うとして、例えば、ミヤナック家でも現在のパシリカと同じようなことができる道具が用意できたとして、使うか?」

「どういうことだ?」

 ハーコムレイの疑問は当然だ。

「今、教会がおこなっている”パシリカ”という行事は、本当のパシリカではない」

「え?」「は?」

「そうなるよな。俺も、神殿で事実を知った時には驚いた」

「リン=フリークス!」「リン君?」

「説明するから落ち着けよ」

 二人に、ロルフから聞いた話と、実際に神殿で行った”パシリカ”を説明した。

「・・・」

「リン=フリークス。貴様の言っていることは、”理”にかなっている。しかし・・・。教会と王家が本当に隠したかった事は・・・」

「パシリカで、スキルが”芽生える”という話は間違っている。本当のパシリカは、”新しいスキルを覚えさせる”が正しい」

「何が違うのだ?」

「ローザス。あぁハーレイにも聞きたい。魔物と言われる生物もスキルを使うよな?」

「あぁ」

 ハーコムレイは、俺の話を聞いて何かを考えていたようだが、呼びかけに肯首でこたえてくれた。話はしっかりと聞いているようだ。

「亜人と呼ばれる人たちも、固有スキルだけど使うよな?」

「・・・。そうだな」

 ハーコムレイは、何かに気が付いたようだ。
 ローザスも、俺の話を肯定してくれているが、何かにきがついたようだ。

「不思議に思わないのか?」

 二人に視線を向けてから聞いてみた。

「・・・」「リン=フリークス。魔物がスキルを使うのは、そういう種族だからではないのか?エルフやドワーフも同じだ。獣人族と呼ばれる者たちも、固有スキルを持っていると言われている。だが、人は固有スキルを持っていない。だからこそ、パシリカでスキルを得るのではないのか?」

 ハーコムレイの疑問は当然だと思うが、自分が答えをいってるのには気が付いていない。

「ハーレイ。人は種族的な固有スキルを持っていない。そうだな」

「あぁ。人族には、”ジョブ”が存在する」

 ロルフに指摘されるまで俺も勘違いをしていた。
 人族は、固有スキルがない代わりにジョブを持っていて、ジョブに関連したスキルが芽生える。

 ”白い部屋”でのやりとりを思い出しても、ジョブに関連したスキルが固有スキルだと考えてしまっていた。

「ハーレイ。それは違う。獣人族にも、それこそ魔物にも、ジョブは存在している」

「それは・・・。”名持ち”だからではないのか?」

 そう考えるのも当然だ。
 しかし、それでは説明ができない事象が多い。特に、魔物と呼ばれている者たちは、ジョブを持っていないと思われていた。しかし、俺の鑑定では、ジョブは存在している。空白になっている者も多いが、種族が明記されている者もいる。種族とは別の種族名が明記されている者もいる。進化している者や、”名”を持ったことで、種族名ではなく”ジョブ”として認識したのだろう。
 魔物は、種族=ジョブだと考えても大丈夫だ。

「それだとしても、”ジョブ”が存在しているのは間違いない」

「・・・。リン君。ジョブとスキルは違うよね?」

 ローザスが、ジョブとスキルが違うと言い出している。
 意味合いは違うが、ジョブもスキルに関係している。しかし、ジョブとスキルは違う物だ。ジョブは、指標でしかない。特性と言い換えてもいいのかもしれない。しかし、スキルは明確に力に直結している。

「そうだな。ハーレイ。人族と獣人族と亜人に何か違いはあるのか?まぁ魔物は少しだけ違うけど、そうだな”名持ち”の魔物を入れてもいいかもしれない」

 実際には、魔物と呼ばれる者たちにも違いは存在する。
 意識がある者たちと、意識がない者たちだ。その違いに関しても、ロルフは何かを知っているようだが、まだ教えてもらえていない。今のところは、明確な違いは”意識”だけなのだが、その意識が”スキル”や”ジョブ”に関係している。

「・・・。違い?」

 ローザスも何かを考えている。

「そうだな。スキルを持っていて、ジョブを持っていて、言葉によるコミュニケーションができる。それぞれの文化を持っている。なぁローザス。ハーレイ。何が違うか説明してくれないか?」

 二人は黙ってしまった。
 姿かたち以外の相違をあげることはできない。知識に関しても同じだ。教育を受けているかどうかを二人は上げなかった。上げられても困らない。そうしたら、教育を受ける環境の違いをいえばいい。そうしたら、”種族”としての違いではない。環境の違いだけになる。
 ようするに、産まれてからの”環境”が違うだけだ。

「すまん。今は、意味のない質問だ」

 二人が考えてしまったことで、話を元に戻す必要を感じた。
 質問を取り下げるだけで、二人にはしっかりと考えてほしい。種族の違いとそれが産まれた意味と、現状の歪な状況を・・・。

「話を戻すけど、本来のパシリカは教会が行っている”スキルの確認”ではない。新しいスキルを芽生えさせることだ。そのうえで、あらためて確認したい。ミヤナック家に”本来のパシリカ”ができる道具や施設があったら使うか?」

「リン=フリークス。答える前に、聞きたいことがある」

「なんだ?」

「実際にそんな道具や施設があるのか?」

「ある」

「・・・。そうか・・・。”本来のパシリカ”で得られるスキルには制限はあるのか?」

「存在しない。しかし、パシリカで芽生えるのはスキルの種だと言ってもいい。そして、人にはスキルの枠組みのような物が存在する」

「え?」

「枠組みの話は、今は忘れてくれ、あとで説明する」

「わかった。スキルの種とは?」

 レベルの話ができれば簡単だけど・・・。

「そうだな。テイマー系の、魔物を使役できるスキルがあるとしよう」

「あぁ」

「そのスキルを得たからといって、すぐに”ドラゴン”の使役はできない」

「当然だな」

「スキルの種は、”スキルを得る”きっかけを与えるだけだ。そこから、スキルを芽生えさせる訓練を行う」

「訓練?」

「あぁ今、神殿で試している。特性に合っていなくてもスキルの種は植え付けられる。芽生えまでは行えるだろうけど、そのあとでスキルとして使うことができるのかは、努力次第だ」

「ん?」「そうか・・・・」

「ローザス?どうした」

「リン君。神殿の・・・。”本当のパシリカ”が廃れた理由がわかったよ」

「”努力が必要”なことだろう?皆にも、指摘された」

「・・・」「リン=フリークス。あとひとつだけ教えてほしい」

「なんだ?」

「スキルの種は、どんなスキルでも可能なのか?鑑定を持っていない者に鑑定を覚えさせることはできるのか?」

「できる。条件はある」

「条件?」

「スキルの種と呼んでいることから想像ができるとおもうが、種を植えるのには畑が必要だ。その畑は、大きさが決まっている。訓練で畑を広げることはできるが、スキルを芽生えさせる努力よりも大変かもしれない」

「ねぇリン君。その方法を、公開するつもりなの?」

「そのつもりだ。あぁまだ条件というか、お願いに近いのだが・・・。ルアリーナは、短弓と長弓のスキルを持っている」

 ハーコムレイが頷いていることから、聞いているのだろう。

「例えばだが、ミヤナック家では、”弓”と”赤”のスキルの大家を目指さないか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

溺愛兄様との死亡ルート回避録

初昔 茶ノ介
ファンタジー
 魔術と独自の技術を組み合わせることで各国が発展する中、純粋な魔法技術で国を繁栄させてきた魔術大国『アリスティア王国』。魔術の実力で貴族位が与えられるこの国で五つの公爵家のうちの一つ、ヴァルモンド公爵家の長女ウィスティリアは世界でも稀有な治癒魔法適正を持っていた。  そのため、国からは特別扱いを受け、学園のクラスメイトも、唯一の兄妹である兄も、ウィステリアに近づくことはなかった。  そして、二十歳の冬。アリスティア王国をエウラノス帝国が襲撃。  大量の怪我人が出たが、ウィステリアの治癒の魔法のおかげで被害は抑えられていた。  戦争が始まり、連日治療院で人々を救うウィステリアの元に連れてこられたのは、話すことも少なくなった兄ユーリであった。  血に染まるユーリを治療している時、久しぶりに会話を交わす兄妹の元に帝国の魔術が被弾し、二人は命の危機に陥った。 「ウィス……俺の最愛の……妹。どうか……来世は幸せに……」  命を落とす直前、ユーリの本心を知ったウィステリアはたくさんの人と、そして小さな頃に仲が良かったはずの兄と交流をして、楽しい日々を送りたかったと後悔した。  体が冷たくなり、目をゆっくり閉じたウィステリアが次に目を開けた時、見覚えのある部屋の中で体が幼くなっていた。  ウィステリアは幼い過去に時間が戻ってしまったと気がつき、できなかったことを思いっきりやり、あの最悪の未来を回避するために奮闘するのだった。  

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...