災難の騎士: アエヴィテルヌスの系譜

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第3話

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ヴェントゥム=テラを横切る川は、フルジェール川の支流であり、人工的なまでに真っ直ぐな流れから、”直線”を意味する古い言葉でフィルム川と呼ばれている。
その川のほとりの広大な平野一帯が「商王」と号されるメルカン家の所有地であり、緑豊かな広大な敷地の北端に豪奢ごうしゃな館を構えている。
ソリス歴 2021年、秋が深まる季節。
メルカン家ではメイドや執事をはじめ、多くの使用人が早朝から働いていた。
一家の長女アメリアもまた、彼らと同様、早朝から活動する。
亜麻色の長い髪を絹のようにしなやかに風に遊ばせ、暁の女神に例えられる美しい母親と同じ蜜色の瞳を輝かせる16歳の娘である。
彼女は夜明け前に起き、裏庭に整備された彼女専用の演習場でトレーニングすることが日課となっていた。
アメリアは間もなく王立騎士団士官育成アカデミーの入学試験を控えている。
ヴェントゥムでは16歳からを成人とし、その年から入隊資格を得ることができた。
アカデミーへの入学は名誉であるが、試験は非常に厳しく、毎年優秀な人材だけが狭き門をくぐることを許される。
アメリアは、幼いころより親しんだ輝かしい騎士物語に憧れ、騎士団の1人となることを夢みて、若干10歳のころより戦士としての訓練を受けてきた。

この世界の人々は生まれながらに、火、水、風、土、雷、蒸気、氷、マグマ、砂塵、この9種の超自然エネルギーのいずれかを操ることができる。
しかしその操作能力には個人差があり、それによるヒエラルキーが存在しているのだった。
騎士となるためには、より感覚を研ぎ澄まし、より上位の能力者となる必要があった。
アメリアの持って生まれた力は風。
幼い頃より彼女には国内でも最も有能なトレーナーが付けられ、その力をより強力に、自在に操れるよう、トレーニングメニューが組まれていた。
この日の朝も、彼女は1人、自主訓練をおこなっていた。

30メートル先の小さな的に、風の刃を命中させることは容易なことではない。
精神を集中させ、エネルギーの流れを手のひらに集める。
肘から指先にかけてサーキットと呼ばれる回路のような模様が浮かびあがり、拳に閃光がほとばしる。
大気中に漂う目に見えないエレメントがそれに呼応し集約され、風の刃として手のひらから放たれる。
一陣の風は地を這うように、地面の草を巻き上げながら一直線に的へ向かう。
瞬く間に的は粉々の木片となり散った。
「すごいね、お姉ちゃん!今の最高にかっこよかったよ!」
ひたいの汗をぬぐうアメリアのそばに駆け寄って来たのは、弟のシロである。
世界を知り始めたばかりの、悪く言えば世間知らずの“お坊ちゃま”。
2人姉弟の弟、将来のメルカン家の当主である彼は、それゆえに両親からの大きな期待もあつく、大切に育てられてきた。
姉アメリアにとっては最愛の弟であり、過度なまでに甘やかしている。
姉とは違い父親似であるシロは、赤い髪に緑の大きな目が印象的な愛らしい少年である。
その瞳を輝かせながら姉の周りを飛び跳ねた。
「シロ、どうしたの?まだ朝早いし、外は寒いわ。
風邪をひいたら大変よ。さあ、家に戻りなさい。」
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