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第三章−輝視点
(16)嫌な予感
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翌日、たいして酔ってもいないのに、ほろ酔い加減で起きた輝は、冷たいシャワーをあびて目を覚ました。
気を抜くと頬がゆるみそうになるのを、頭をふって現実に戻す。
まだ起きてこない深のために、書き置きを残すと、マネージャーが待つ駐車場にむかった。
普段は携帯でメッセージを送り合うのに、わざわざ仕舞われていたノートとペンを探してまで、アナログにしたのはわけがあった。
輝は、昨夜から携帯をほとんど見ることができずにいたのだ。
もしも深からメッセージが来ていたとして、そこに何と書かれているのか。
勢いでしてしまった行為を咎められるのではないか、もう顔を見るのも嫌だとか言われたら?
一緒に果ててドロドロになり、現実的なオスの匂いが充満する中で、輝はさっさと先にシャワーを浴びて逃げるように自室にこもった。
その後、深がシャワーを浴びる音を確認すると、全てのメッセージを通知オフにしてしまった。
メモ書きには昨日先に寝た言い訳と今日の予定、それから連絡不要の旨までつけた。
深のためを思ってではない。
輝自身の平穏を保つためだった。
「昨夜、大変だったでしょ? 眠れなかったんじゃないですか?」
車に乗ると、開口1番マネージャーが言った。
輝は、思わず全身が硬直し、冷や汗が噴き出るのがわかった。
一どういうことだ?
咄嗟に頭をフル回転させるが、脳裏に浮かぶのは深との甘い情事だけである。
「え?ああ、まあ…」
とりあえず適当に話しを合わせようとする。
「私のとこにも問い合わせが殺到して。やっぱそりゃメンバーの家に居候してるなんて衝撃ですよね」
そこまで言われて、輝はやっと気づく。
先日収録したバラエティ番組が、昨夜放送だったのだ。
そこで輝の家で深を預かっていると話したくだりが使われていたのだろう。
輝はほっと胸を撫で下ろしながらも、そっと携帯を開く。
そこには、通知70件…。ぱっとみるからに、大先輩たちの名前も並ぶ。
「いやー、全然まだメール返信できてなくて…取材の合間に返します…」
そうマネージャーに伝え、輝はため息をついた。
****************
その日はただ取材をこなすだけの日だった。
輝は特にその場を動かない。
メディアが入れ替わり立ち替わり、インタビューをして写真や映像をとっていくだけである。
同じような質問に同じようなポーズの要求。
だけれどひとつとして気が抜けない。
もはや職業柄、ほぼ無意識でこなすことができないわけではないが、意外にファンはするどい。
手を抜いてしまえば、すぐに気づかれるものだ。
そんな取材の合間に、昨夜の放送を見て連絡をくれた人たちのメールを見て、丁寧に返信をしていく。
やはり目上の人から先が良いだろうと、いくつか開いた中にそれはあった。
『深元気そう?輝の家に会いに言ってもよい?』
同じアイドルの大先輩、大島からのメールである。
確かにずっと良くしてもらっているのだが、深と個人的に仲良くしている印象がなかった。
しかしかなりの大物で、絶対に無碍にはできない人物だ。
その時、マネージャーが輝に耳打ちをした。
「大島さんが、今から輝さん宅にいかれるそうです。深くんから連絡がきてて、もう近くまで来ているから入れて良いかって」
輝の返信がないゆえ、深に直接連絡をしたのだろう。
断る術はなかった。
けれど取材が終わるまでの間、輝は嫌な予感が身体に張り詰めていた。
第三章:完
気を抜くと頬がゆるみそうになるのを、頭をふって現実に戻す。
まだ起きてこない深のために、書き置きを残すと、マネージャーが待つ駐車場にむかった。
普段は携帯でメッセージを送り合うのに、わざわざ仕舞われていたノートとペンを探してまで、アナログにしたのはわけがあった。
輝は、昨夜から携帯をほとんど見ることができずにいたのだ。
もしも深からメッセージが来ていたとして、そこに何と書かれているのか。
勢いでしてしまった行為を咎められるのではないか、もう顔を見るのも嫌だとか言われたら?
一緒に果ててドロドロになり、現実的なオスの匂いが充満する中で、輝はさっさと先にシャワーを浴びて逃げるように自室にこもった。
その後、深がシャワーを浴びる音を確認すると、全てのメッセージを通知オフにしてしまった。
メモ書きには昨日先に寝た言い訳と今日の予定、それから連絡不要の旨までつけた。
深のためを思ってではない。
輝自身の平穏を保つためだった。
「昨夜、大変だったでしょ? 眠れなかったんじゃないですか?」
車に乗ると、開口1番マネージャーが言った。
輝は、思わず全身が硬直し、冷や汗が噴き出るのがわかった。
一どういうことだ?
咄嗟に頭をフル回転させるが、脳裏に浮かぶのは深との甘い情事だけである。
「え?ああ、まあ…」
とりあえず適当に話しを合わせようとする。
「私のとこにも問い合わせが殺到して。やっぱそりゃメンバーの家に居候してるなんて衝撃ですよね」
そこまで言われて、輝はやっと気づく。
先日収録したバラエティ番組が、昨夜放送だったのだ。
そこで輝の家で深を預かっていると話したくだりが使われていたのだろう。
輝はほっと胸を撫で下ろしながらも、そっと携帯を開く。
そこには、通知70件…。ぱっとみるからに、大先輩たちの名前も並ぶ。
「いやー、全然まだメール返信できてなくて…取材の合間に返します…」
そうマネージャーに伝え、輝はため息をついた。
****************
その日はただ取材をこなすだけの日だった。
輝は特にその場を動かない。
メディアが入れ替わり立ち替わり、インタビューをして写真や映像をとっていくだけである。
同じような質問に同じようなポーズの要求。
だけれどひとつとして気が抜けない。
もはや職業柄、ほぼ無意識でこなすことができないわけではないが、意外にファンはするどい。
手を抜いてしまえば、すぐに気づかれるものだ。
そんな取材の合間に、昨夜の放送を見て連絡をくれた人たちのメールを見て、丁寧に返信をしていく。
やはり目上の人から先が良いだろうと、いくつか開いた中にそれはあった。
『深元気そう?輝の家に会いに言ってもよい?』
同じアイドルの大先輩、大島からのメールである。
確かにずっと良くしてもらっているのだが、深と個人的に仲良くしている印象がなかった。
しかしかなりの大物で、絶対に無碍にはできない人物だ。
その時、マネージャーが輝に耳打ちをした。
「大島さんが、今から輝さん宅にいかれるそうです。深くんから連絡がきてて、もう近くまで来ているから入れて良いかって」
輝の返信がないゆえ、深に直接連絡をしたのだろう。
断る術はなかった。
けれど取材が終わるまでの間、輝は嫌な予感が身体に張り詰めていた。
第三章:完
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