おちゆく先に

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31話

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 訓練場には兵士を始め組合員も素振りから始まり木人形を木剣で叩いたりしていた。
 この中で模擬戦をしているものはいなかったが、模擬戦のスペースにモルドが歩いていくと、
 「おや?モルドさんが模擬戦ですか?可哀想な相手はどなたですか?」
 立派な鎧を着た兵士がモルドに話しかけた。

 「後ろにいるだろ?てことで少しスペース空けてくれよ」
 訓練場にいた人はみな驚いたことだろう、あのモルドとの模擬戦なのだ。誰しもが屈強な戦士を想像していたが、後ろにいたのは少し癖のある黒髪で鮮やかな緑色の瞳をしたまだ十代と思える男であったのだ。

 周りが何に驚いているのかがわかっているジグレイドは舌打ちをしつつ、模擬戦のスペースに進み出た。


 「さて、一応ルール説明必要だよな?殺しなし、刃引きされてなかったら寸止めだが今回は木製だから気にしないでいい、あと卑怯な行為は禁止、あとは・・・そうそう決着方法は審判の裁量によるものとするだったかな?今回の審判はこいつにしてもらう。こう見えて部隊長だから強いぞ。何か聞きたいことはあるか?」
 『うろ覚えなのかよ!』とか思ったがどうでもいいかと思い直し、質問はないと答えた。

 「よし、じゃあ適当な距離をとってから模擬戦の開始だ!ジグレイド、本気で来いよ!じゃあ合図は任せたぞ、部隊長殿」
 そう言って距離を取るモルドを見送って自分も適当な距離を取った。


 「では、模擬戦・・・はじめっ!」
 部隊長の合図とともにモルドは詠唱を開始した。

 「“火よ 火よ 偉大なる火よ その姿を炎に変じて 我が身 我が武器に宿れ バーンフォース”!」

 炎に包まれたモルドを周りの野次馬が驚きの声を上げる(もちろん魔法を使ったことに対して)が、ジグレイドはモルドの詠唱を止めようともせずに眺めていた。

 「随分と余裕じゃねーか!それとも魔法を止める必要もないとでもいうのか?」
 まだ戦闘が始まったばかりだというのにもうテンション上がっているのか、ジグレイドを挑発するがなぜか自分も苛ついているモルド

 「いや、単純にどんな魔法か知らなかっただけですよ。それにモルドさんが魔法使えるなんて知りませんでしたし、ね!」
 話し終わると同時に身体強化魔法を使いモルドとの距離を一気に詰めて槍で薙ぎ払おうとするが、
 「甘いぞ!おっらあっ!」
 直線距離で詰めたせいなのか簡単にカウンター気味に木大剣を振り下ろしてきた。
 「ふん!」
 盾を使いうまく受け流すが、すぐさま炎を纏った足で回し蹴りを放ってきた。さすがに避けきれずに盾で受け止める。
 “ガンッ”と音がして身体が僅かな浮遊感を感じた後に腕が少し痺れだすが、腕よりもどちらかと言えばモルドが発している熱の方がどうにかしないといけない。
 『熱すぎるだろあれ!本人は熱くないってずるいぞ!』と愚痴りたくなるが吸い込む空気も熱せられ熱いため、やむなく距離を取った。
 「おいおい、逃げるのか?」
 距離を取ったジグレイドを挑発してくるが、気にも留めず集中する。少し息を吐き、魔素の吸収を強める。

 「いきます・・・」

 ジグレイドは静かに動いた。静かではあるもののその速度は観客(野次馬の人々)が視認できない速度であり瞬きの間にモルドに接近した。
 今度はフェイントを織り交ぜており本命は左側面から盾の強打、右斜め下から左上に目掛けての薙ぎ払いであった。
 さすがのモルドも瞬きの瞬間に移動されては見失ってしまう。慌てて後方から襲い掛かる突きを防御するもそれはフェイントであり、力の入っていない突きであった。
 フェイントに引っかかったモルドは防御姿勢による力みのせいで身体が一瞬硬直した。

 その隙を見逃さずに左側面から、
 「しっ!・・・はあああああ!」予定通り渾身の二連撃が決まる。
 「ぐっ、がはああ!」堪えきれずにモルドは吹き飛ばされた。

 追撃のために足に力を入れた瞬間、

 「それまで!勝者は・・・えーっと・・・。・・・こちら!」
 審判役の部隊長が模擬戦を終わらせて止めに入り、勝者としてジグレイドの名前を言おうとするが、名前を知らなかったのか悩みに悩んだ末にジグレイドに手を向けて「こちら!」と叫んで終わった。
 何とも締まらない終わり方である。観客もみな部隊長にジト目を送っていた。
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