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40話
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ドワーフのおっさんに連れられて地下へと降りていくと、そこには広い地下室があり所狭しと武器や防具といったものが飾られていた。
「これ全て手造りなんですか?ものすごい量ですね」呆気に取られているジグレイドに
「ガハハハ、どうだ?ビックリしただろう?長年ここで造り続けてきたからな、お前さんの御眼鏡に適うもんもあると思うぞ。」
「どれだけ地下に篭っていたんですか?もうこの部屋に入りきらなくなりそうですよ」
ひたすら鍛冶を続けてきたのであろうが、流石にこの量は阿保の所業であると呆れてしまう。
「そうなんじゃ!そろそろ入りきらなくなってきておるんじゃ!めんどくさいのう」
「入りきらなくなったらどうするんです?」ふと気になり聞いてみる。
「決まっておるだろう?増築するだけだ!この地下室も儂が造ったもんだしな!」
「まじか・・・この地下空間もおっさんの手造りかよ。なんていうか・・・さすがドワーフ族だな」
「ガハハハハ、誉め言葉として受け取っておくぜ!」
「純粋な賛辞ですよ。でもこんなに造っていたら何処に何があるのか分からなくなりそうですね」
「そこは抜かりはないぞ!どれ、案内してやろう。お前さんは何を求めてきたんじゃ?」
「俺は短槍と丸盾、あと防具ですね。少し前に壊されてしまって・・・」
「丸盾はたまにおるが、短槍とはまたマニアックなもん使っておるの。たしか短槍は・・・こっちじゃったかな?」
案内されたのは広い地下室の奥の方だった。
「ここら辺に並べてあるはずだがな・・・お、あったぞ!」
案内された場所には他の武器よりも品数は明らかに少ないが軽く見積もっても50本は並べられていた。
「すごいですね!短槍でこの品揃えは初めて見ました!」
興奮を抑えられずにウズウズしながらおっさんに手に取っていいか尋ねる。
「おうよ、手に取ってみないと物の良さも判らんからな!自分に合うと思うもん何本か選べ、そしたら儂がお前さんに合わせて手直ししてやる」
そう言われ『さすがドワーフ族最後にまた手直しを武器にもするのか』と感心しつつ自分に合う武器を選んでいった。
結局ジグレイドは3本の短槍を選んだ。
「お、選んだか?なら次は盾だな、こっちだ」
今度は中央付近に並べられた盾のエリアに案内された。
「盾の種類多いですね・・・こんな形初めて見ましたよ」
ジグレイドが見つけたのは地面に固定できるタイプの盾であった。
「盾ってのはな各々求める形が違うからな思いつく限りの盾を造っておるんじゃ。需要に応えられんような職人はまだまだ三流だからな」
そういうもんかと納得しつつ大量に並べられた様々な盾から自分に合いそうな盾を手に取りながら選んでいった。
やはりジグレイドが選んだものはラウンドシールド、つまり丸盾であった。
「選んだのなら次はこっちだ」
続いて案内されたのは商品が並べられた部屋からは入れる小部屋であった。小部屋と言ったがそれは先ほどまでの部屋が広すぎたためであり、この部屋も十分広いのだ。
「ここはな選んだもんを試す場所だ。ほれお前さんも試してみろ」
そう言って1本の短槍を渡してきた。
最初に試す短槍は、魔銀製であり長さ40ほどの剣刃状の穂先と鋼鉄製の長さ140ほどの柄でできたものであった。
「うーん、これは少し使いにくいかもですね」と一言いって次の短槍を試す。
次に試した短槍は、同じ素材でできたもので穂先が30ほどで柄が130ほどのものであった。
「これもなんだか違いますね、今まで使ってきた鋼鉄製の短槍と似た形なんですけど・・・」
最後に試した短槍も長さが変わるだけのものであり、ジグレイドにはしっくりきていなかった。
「うーん、なんか違うんだよなー・・・もう一回選んできてもいいですか?」
試し振りをしているジグレイドを静かに見ていたおっさんに尋ねるが、
「お前さんは短槍と丸盾をどんな風に扱っておるんだ?ちと見せてみろ」
逆にそう尋ねられたので渋々一通りやってみることにした。
シールドバッシュから繋げる突きや薙ぎ払い、更にそこへ蹴撃を加えたパターンを見せてみた。もちろん別のパターンもあるが最も多用しているものを見せた。
「なるほどな・・・ちとそこで待ってろ」
そう言い残しおっさんは何処かへと行ってしまった。
暫く待っているとおっさんが戻ってきた。
「待たせたな!ちとこの装備一式を持ってくんのに手間取っちまったぜ。とりあえずこの短槍を試しに振ってみろ」
そう言って渡してきたものは穂先だけでも長さ80ほどもあり横幅が25ほど厚みも中心で8ほどもある。それに対して柄は長さ60ほどしかない武骨な剣に見えなくもない黒い短槍であった。
「これは・・・短槍なんですよね?」当然の疑問である。
「もちろんだ!こいつは紛れもなく短槍だぜ!ほれ、騙されたと思って振ってみろ」
渋々部屋の中央に歩いていき、一連の動きを試してみる。
「これは・・・薙ぐこともできますけどどちらかというと斧みたいに叩き斬る感じですか?」
試してみて思ったことを尋ねてみると、
「お、わかるか?そうだ!そいつは槍なのに至近距離にも対応できるように考えたものだ。元々儂らドワーフ用に試行錯誤して造ったんだが・・・ドワーフ族は基本槌とか斧を使いたがるんだ。おかげでずっと埃を被っておったんだが、お前さんなら十分使いこなせるんじゃないか?」
「確かに槍系統は至近距離は苦手で斬ることよりも突くことがメインですしね。これならば至近距離にも対応できて剣の様に斬ることもできるでしょうけど、それなら剣でよくないですか?」
「確かにその通りなのだが・・・お前さんは分かっとらん!分かっとらんぞ!この短槍の中近距離対応できるロマンのような武器の良さが分らんのか?お前さんなら分かってくれると思ったんじゃがな・・・」
なぜかチラチラとこちらを窺いながら言ってくるおっさんに辟易するが、確かにこの短槍は使いやすかった。ただ重さを無視すればだが・・・。
「確かに近寄られても対応できるのは嬉しい事ですけどね。この重さはどうにかならないんですか?」
「お前さんならば余裕で扱えるだろう、なんせあの試しの床を開けれたんだからの」ニヤニヤしながら嬉しそうに笑いながら言うおっさんにため息を吐きたくなる。
「もちろん扱えなくはないですけど、重いものは重いんです。そもそもあの床は純粋な腕力だけで開けたわけじゃありませんよ!」
「うん?そうなのか?確かにお前さんの体格であれを開けるのは不可能に近いと思っておったのだが、魔法でも使ったのか?まあ開けたのには変わりない。それでじゃ、そいつを買うのか?」ニヤリと笑い尋ねてくる。
「はあ・・・わかりましたよ。重いと言っても持てない程ではないですし、そもそも意外とこの短槍気に入ってますからね」
なんか負けた感じがしてもの凄く嫌だったが買うことにした。
「ガハハハハ!そいつは何よりだ!やっとこさそいつが日の目を見ることになって儂は嬉しいぜ!」
おっさんは先程の挑戦的な笑みではなく心の底から喜んで笑っていた。
「ところでその装備はなんです?」
この短槍と一緒に持ってきた装備なのだからこちらもなんかあるのだろうと身構えてしまうジグレイド。
「おっと忘れるところだった。お前さんの動きを見てな防具の方はこれがいいんじゃないかと思ってな。ちと試しに着てみてくれ」
言われるがまま銀灰色の装備を足から順に装着していく。
「ふむ、普通に着れたのか・・・。」なんか意味深な言葉が聞こえたのだが、
「思ったよりも軽いですね、これ何で造られているんですか?」
とりあえず聞こえなかったふりをして見たこともない銀灰色の金属の素材を聞いてみたのだが、目の前にはその言葉を待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべているおっさんがいた。
「ふふふ、これはだな儂の独自の製法で合成された、この世界で一つしかない金属なんだぜ!それにこいつは更に特別なんだぜ!なんせヒュドラの素材とウーツ鋼を掛け合わせた金属だからな!」
この世界に存在する金属は価値の低い順に銅、青銅、鉄、銀、鋼鉄、魔銀、ウーツ鋼、オリハルコン、アダマントとなっている。
アダマントは神の金属と言われており今のところ神具にしか使われているものはなく出土されたこともない。
オリハルコンはアダマントを除けば最硬の金属であるが魔力を殆ど通さない金属である。魔銀は魔力を非常によく通すが鋼鉄と同じくらいの硬さの金属である。
今回使われているウーツ鋼はオリハルコンまでは硬くはなく魔銀ほどは魔力も通さないと言われている金属である。しかもウーツ鋼はオリハルコンの加工よりも困難であり未だに人族で加工を成功させたもは皆無とされている。
「ヒュドラの素材にウーツ鋼ですか!?いや、ちょっと待ってください!いろいろ聞きたい事があり過ぎて混乱してきました。とりあえずヒュドラってあの体長50メル近くもある多頭で猛毒、再生能力まである災厄の魔物のことじゃないですよね?」
「ガハハハ、儂のすごさに驚き混乱しちまったか?ヒュドラといえばそのヒュドラしかおらんだろう」
「いやいやいやいや、そのヒュドラは国と組合が結託して討伐を試みても勝てるか分からないほどの魔物なんですよ!?なんでそんな魔物の素材を持ってるんですか!?」
「言いたいことは分かった・・・とりあえず落ち着いてくれ、苦しいぞ」
混乱しすぎてドワーフのおっさんの肩を持ってガクガク揺らしてしまっていたようだ。
「すいません、少し取り乱しました。大丈夫ですか?」とりあえず平に謝るジグレイド。
「この程度大丈夫だ、気にするでない」
「はあ・・・もう混乱して迷惑かけたくないのでヒュドラのことはなにも聞きませんよ。それにしてもウーツ鋼の加工もすごいですけど魔物の素材と金属の合成って聞いたことないんですけどドワーフ族はそんなこともできるんですか?」
「ガハハハハ、できるわけないだろう!儂だからこそできるのだ!」
満面のドヤ顔で言われても今回だけはイラっとせずにただ称賛しか思わなかった。
「もう何て言ったらいいのかわかりませんよ」
「ガハハハ、この技術は儂が長年試行錯誤して編み出した秘術だからな!この技術と素材を惜しみなく使ってできたのがこの鎧なんじゃが・・・問題が起きての」
急に気落ちしだしたおっさんを不思議に思い聞いてみる。
「どんな問題なんですか?」不意に先ほどの言葉がよぎった。
「最高の鎧が出来上がったのだが・・・扱えるもんがおらんかったのだ」
「え?鎧に扱うとかってあるんですか?普通に着ればいいじゃないですか」
「普通の鎧はただ着こなせばいい、だがのその鎧はそいつ自身が着るものを選びよるんじゃ。まるで意思をもってるかのようにな」
「ちょ、ちょっと待ってください!これ呪われてるんですか!?なんてもの着させるんですか!?」
急いで脱ごうとするが、
「大丈夫じゃ!呪われてはおらん!ただ鎧自身が持ち主を選ぶだけじゃ。散々調べて呪いなどの効果はないと判断しておる。不気味でどうしても着ていられないのなら別の鎧を持ってくるぞ?」
ジグレイドは少し悩んだのだが、復讐のためにはより強い鎧や武器が必要だと思い至った。
「いえ、俺はこの鎧を買いますよ。俺の目的のためにも少しでも強くなりたいですからね!あ、でもこれとっても高価ですよね?・・・俺、金貨300枚程度しか持ってません」
買うと決意した後にお金が足りないことに気づいた。それも少しどころではなく桁違いで足りないのだ。
「ガハハハ、そう残念がるな。もうこの装備もお前さんを持ち主と認めておる様だしの。金貨300枚で一式全部売ってやるぞ」
「え?いいんですか?この装備買うなら白金貨何十枚もするんじゃないんですか?」
「おうよ、本来ならそんなところだな。だがな儂はもうこいつをお前さんに託すと決めたのじゃ。そもそも儂は金には困っとらん!若者は年寄りに甘えておけばいいのだ!そうと決まれば採寸するぞ、脱げ!」
「わかりました、若者らしく甘えさせていただきます!ありがとうございます!」深々と礼を言ったジグレイドは鎧を脱いで採寸をしてもらった。
「そうじゃ、言い忘れとったが、お前さんの装備を全て合金にするからの一週間後くらいにまた来い!」
「いいんですか!?ありがとうございます!」再び深く礼を言っておっさんの鍛冶屋を後にした。
「これ全て手造りなんですか?ものすごい量ですね」呆気に取られているジグレイドに
「ガハハハ、どうだ?ビックリしただろう?長年ここで造り続けてきたからな、お前さんの御眼鏡に適うもんもあると思うぞ。」
「どれだけ地下に篭っていたんですか?もうこの部屋に入りきらなくなりそうですよ」
ひたすら鍛冶を続けてきたのであろうが、流石にこの量は阿保の所業であると呆れてしまう。
「そうなんじゃ!そろそろ入りきらなくなってきておるんじゃ!めんどくさいのう」
「入りきらなくなったらどうするんです?」ふと気になり聞いてみる。
「決まっておるだろう?増築するだけだ!この地下室も儂が造ったもんだしな!」
「まじか・・・この地下空間もおっさんの手造りかよ。なんていうか・・・さすがドワーフ族だな」
「ガハハハハ、誉め言葉として受け取っておくぜ!」
「純粋な賛辞ですよ。でもこんなに造っていたら何処に何があるのか分からなくなりそうですね」
「そこは抜かりはないぞ!どれ、案内してやろう。お前さんは何を求めてきたんじゃ?」
「俺は短槍と丸盾、あと防具ですね。少し前に壊されてしまって・・・」
「丸盾はたまにおるが、短槍とはまたマニアックなもん使っておるの。たしか短槍は・・・こっちじゃったかな?」
案内されたのは広い地下室の奥の方だった。
「ここら辺に並べてあるはずだがな・・・お、あったぞ!」
案内された場所には他の武器よりも品数は明らかに少ないが軽く見積もっても50本は並べられていた。
「すごいですね!短槍でこの品揃えは初めて見ました!」
興奮を抑えられずにウズウズしながらおっさんに手に取っていいか尋ねる。
「おうよ、手に取ってみないと物の良さも判らんからな!自分に合うと思うもん何本か選べ、そしたら儂がお前さんに合わせて手直ししてやる」
そう言われ『さすがドワーフ族最後にまた手直しを武器にもするのか』と感心しつつ自分に合う武器を選んでいった。
結局ジグレイドは3本の短槍を選んだ。
「お、選んだか?なら次は盾だな、こっちだ」
今度は中央付近に並べられた盾のエリアに案内された。
「盾の種類多いですね・・・こんな形初めて見ましたよ」
ジグレイドが見つけたのは地面に固定できるタイプの盾であった。
「盾ってのはな各々求める形が違うからな思いつく限りの盾を造っておるんじゃ。需要に応えられんような職人はまだまだ三流だからな」
そういうもんかと納得しつつ大量に並べられた様々な盾から自分に合いそうな盾を手に取りながら選んでいった。
やはりジグレイドが選んだものはラウンドシールド、つまり丸盾であった。
「選んだのなら次はこっちだ」
続いて案内されたのは商品が並べられた部屋からは入れる小部屋であった。小部屋と言ったがそれは先ほどまでの部屋が広すぎたためであり、この部屋も十分広いのだ。
「ここはな選んだもんを試す場所だ。ほれお前さんも試してみろ」
そう言って1本の短槍を渡してきた。
最初に試す短槍は、魔銀製であり長さ40ほどの剣刃状の穂先と鋼鉄製の長さ140ほどの柄でできたものであった。
「うーん、これは少し使いにくいかもですね」と一言いって次の短槍を試す。
次に試した短槍は、同じ素材でできたもので穂先が30ほどで柄が130ほどのものであった。
「これもなんだか違いますね、今まで使ってきた鋼鉄製の短槍と似た形なんですけど・・・」
最後に試した短槍も長さが変わるだけのものであり、ジグレイドにはしっくりきていなかった。
「うーん、なんか違うんだよなー・・・もう一回選んできてもいいですか?」
試し振りをしているジグレイドを静かに見ていたおっさんに尋ねるが、
「お前さんは短槍と丸盾をどんな風に扱っておるんだ?ちと見せてみろ」
逆にそう尋ねられたので渋々一通りやってみることにした。
シールドバッシュから繋げる突きや薙ぎ払い、更にそこへ蹴撃を加えたパターンを見せてみた。もちろん別のパターンもあるが最も多用しているものを見せた。
「なるほどな・・・ちとそこで待ってろ」
そう言い残しおっさんは何処かへと行ってしまった。
暫く待っているとおっさんが戻ってきた。
「待たせたな!ちとこの装備一式を持ってくんのに手間取っちまったぜ。とりあえずこの短槍を試しに振ってみろ」
そう言って渡してきたものは穂先だけでも長さ80ほどもあり横幅が25ほど厚みも中心で8ほどもある。それに対して柄は長さ60ほどしかない武骨な剣に見えなくもない黒い短槍であった。
「これは・・・短槍なんですよね?」当然の疑問である。
「もちろんだ!こいつは紛れもなく短槍だぜ!ほれ、騙されたと思って振ってみろ」
渋々部屋の中央に歩いていき、一連の動きを試してみる。
「これは・・・薙ぐこともできますけどどちらかというと斧みたいに叩き斬る感じですか?」
試してみて思ったことを尋ねてみると、
「お、わかるか?そうだ!そいつは槍なのに至近距離にも対応できるように考えたものだ。元々儂らドワーフ用に試行錯誤して造ったんだが・・・ドワーフ族は基本槌とか斧を使いたがるんだ。おかげでずっと埃を被っておったんだが、お前さんなら十分使いこなせるんじゃないか?」
「確かに槍系統は至近距離は苦手で斬ることよりも突くことがメインですしね。これならば至近距離にも対応できて剣の様に斬ることもできるでしょうけど、それなら剣でよくないですか?」
「確かにその通りなのだが・・・お前さんは分かっとらん!分かっとらんぞ!この短槍の中近距離対応できるロマンのような武器の良さが分らんのか?お前さんなら分かってくれると思ったんじゃがな・・・」
なぜかチラチラとこちらを窺いながら言ってくるおっさんに辟易するが、確かにこの短槍は使いやすかった。ただ重さを無視すればだが・・・。
「確かに近寄られても対応できるのは嬉しい事ですけどね。この重さはどうにかならないんですか?」
「お前さんならば余裕で扱えるだろう、なんせあの試しの床を開けれたんだからの」ニヤニヤしながら嬉しそうに笑いながら言うおっさんにため息を吐きたくなる。
「もちろん扱えなくはないですけど、重いものは重いんです。そもそもあの床は純粋な腕力だけで開けたわけじゃありませんよ!」
「うん?そうなのか?確かにお前さんの体格であれを開けるのは不可能に近いと思っておったのだが、魔法でも使ったのか?まあ開けたのには変わりない。それでじゃ、そいつを買うのか?」ニヤリと笑い尋ねてくる。
「はあ・・・わかりましたよ。重いと言っても持てない程ではないですし、そもそも意外とこの短槍気に入ってますからね」
なんか負けた感じがしてもの凄く嫌だったが買うことにした。
「ガハハハハ!そいつは何よりだ!やっとこさそいつが日の目を見ることになって儂は嬉しいぜ!」
おっさんは先程の挑戦的な笑みではなく心の底から喜んで笑っていた。
「ところでその装備はなんです?」
この短槍と一緒に持ってきた装備なのだからこちらもなんかあるのだろうと身構えてしまうジグレイド。
「おっと忘れるところだった。お前さんの動きを見てな防具の方はこれがいいんじゃないかと思ってな。ちと試しに着てみてくれ」
言われるがまま銀灰色の装備を足から順に装着していく。
「ふむ、普通に着れたのか・・・。」なんか意味深な言葉が聞こえたのだが、
「思ったよりも軽いですね、これ何で造られているんですか?」
とりあえず聞こえなかったふりをして見たこともない銀灰色の金属の素材を聞いてみたのだが、目の前にはその言葉を待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべているおっさんがいた。
「ふふふ、これはだな儂の独自の製法で合成された、この世界で一つしかない金属なんだぜ!それにこいつは更に特別なんだぜ!なんせヒュドラの素材とウーツ鋼を掛け合わせた金属だからな!」
この世界に存在する金属は価値の低い順に銅、青銅、鉄、銀、鋼鉄、魔銀、ウーツ鋼、オリハルコン、アダマントとなっている。
アダマントは神の金属と言われており今のところ神具にしか使われているものはなく出土されたこともない。
オリハルコンはアダマントを除けば最硬の金属であるが魔力を殆ど通さない金属である。魔銀は魔力を非常によく通すが鋼鉄と同じくらいの硬さの金属である。
今回使われているウーツ鋼はオリハルコンまでは硬くはなく魔銀ほどは魔力も通さないと言われている金属である。しかもウーツ鋼はオリハルコンの加工よりも困難であり未だに人族で加工を成功させたもは皆無とされている。
「ヒュドラの素材にウーツ鋼ですか!?いや、ちょっと待ってください!いろいろ聞きたい事があり過ぎて混乱してきました。とりあえずヒュドラってあの体長50メル近くもある多頭で猛毒、再生能力まである災厄の魔物のことじゃないですよね?」
「ガハハハ、儂のすごさに驚き混乱しちまったか?ヒュドラといえばそのヒュドラしかおらんだろう」
「いやいやいやいや、そのヒュドラは国と組合が結託して討伐を試みても勝てるか分からないほどの魔物なんですよ!?なんでそんな魔物の素材を持ってるんですか!?」
「言いたいことは分かった・・・とりあえず落ち着いてくれ、苦しいぞ」
混乱しすぎてドワーフのおっさんの肩を持ってガクガク揺らしてしまっていたようだ。
「すいません、少し取り乱しました。大丈夫ですか?」とりあえず平に謝るジグレイド。
「この程度大丈夫だ、気にするでない」
「はあ・・・もう混乱して迷惑かけたくないのでヒュドラのことはなにも聞きませんよ。それにしてもウーツ鋼の加工もすごいですけど魔物の素材と金属の合成って聞いたことないんですけどドワーフ族はそんなこともできるんですか?」
「ガハハハハ、できるわけないだろう!儂だからこそできるのだ!」
満面のドヤ顔で言われても今回だけはイラっとせずにただ称賛しか思わなかった。
「もう何て言ったらいいのかわかりませんよ」
「ガハハハ、この技術は儂が長年試行錯誤して編み出した秘術だからな!この技術と素材を惜しみなく使ってできたのがこの鎧なんじゃが・・・問題が起きての」
急に気落ちしだしたおっさんを不思議に思い聞いてみる。
「どんな問題なんですか?」不意に先ほどの言葉がよぎった。
「最高の鎧が出来上がったのだが・・・扱えるもんがおらんかったのだ」
「え?鎧に扱うとかってあるんですか?普通に着ればいいじゃないですか」
「普通の鎧はただ着こなせばいい、だがのその鎧はそいつ自身が着るものを選びよるんじゃ。まるで意思をもってるかのようにな」
「ちょ、ちょっと待ってください!これ呪われてるんですか!?なんてもの着させるんですか!?」
急いで脱ごうとするが、
「大丈夫じゃ!呪われてはおらん!ただ鎧自身が持ち主を選ぶだけじゃ。散々調べて呪いなどの効果はないと判断しておる。不気味でどうしても着ていられないのなら別の鎧を持ってくるぞ?」
ジグレイドは少し悩んだのだが、復讐のためにはより強い鎧や武器が必要だと思い至った。
「いえ、俺はこの鎧を買いますよ。俺の目的のためにも少しでも強くなりたいですからね!あ、でもこれとっても高価ですよね?・・・俺、金貨300枚程度しか持ってません」
買うと決意した後にお金が足りないことに気づいた。それも少しどころではなく桁違いで足りないのだ。
「ガハハハ、そう残念がるな。もうこの装備もお前さんを持ち主と認めておる様だしの。金貨300枚で一式全部売ってやるぞ」
「え?いいんですか?この装備買うなら白金貨何十枚もするんじゃないんですか?」
「おうよ、本来ならそんなところだな。だがな儂はもうこいつをお前さんに託すと決めたのじゃ。そもそも儂は金には困っとらん!若者は年寄りに甘えておけばいいのだ!そうと決まれば採寸するぞ、脱げ!」
「わかりました、若者らしく甘えさせていただきます!ありがとうございます!」深々と礼を言ったジグレイドは鎧を脱いで採寸をしてもらった。
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