おちゆく先に

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44話

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 この日は浅層から中層に近付いているせいなのかアリとの戦闘から暫く歩いたところで再び魔物の気配がした。

「昨日と違って魔物の縄張りにでも入っているのか?丁度いいしさっきのあれを試してみるか」
 そう考え丸盾を構えて魔物が飛び出してくるのを待った。

 “ブーン”と羽音が段々と大きく聞こえてきて、赤色の魔物が飛び出してきた。赤色の魔物は森の中を低空飛行で素早く接近してきてその両手にある凶悪な大鎌で斬りつけるつもりなのか器用にも振り上げながら飛び掛かってきた。

 「今度は蟷螂の魔物かよ!?ていうかあの鎌デカすぎるだろ!?」
 赤色の蟷螂は体長2メル程度でありその両手は刃渡り1メルもある大鎌となっているのだ。

 “キシャアアア!”そんな鳴き声と共に大鎌を振り下ろしてくる蟷螂。
 “ガギン!ギギギ”大鎌を丸盾で受け流そうとするが思っていた以上の力を蟷螂が持っていたのでうまく受け流せない。しかも先ほどとは違ってアリのように痙攣などに陥る様子はまるで見えなかった。

 「ぐっ・・・仕方ない、なっ!」
 身体強化魔法をして右手に持っている短槍を下から左上に斬り上げた。

 斬り上げた短槍は蟷螂を両断できると思ったが、蟷螂はすぐさま後ろに飛びのいて避けられてしまった。
 だがジグレイドの攻撃は蟷螂を両断はできなかったのだがお腹を僅かに切り裂いていた。

 「ちっ!意外と勘がいい魔物だな・・・いや、昆虫型の魔物は目が良い種類が多いんだったか?」
 愚痴りながらトドメを刺しに接近しようと足に力を入れたが、蟷螂が“キシシキシシ”と鳴きながら痙攣して倒れてしまった。

 「は?まさかの時間差か?いや、普通に考えれば斬りつけたからとも思えるな。まだよく分からないな」
 ブツブツと呟きながら暫く考え込んでいたが、また次の魔物で試せばいいと決め再び深層へと向かって歩き出した。もちろん蟷螂の死体は放置している。


 その後は魔物に出会うこともなく野営に適している場所を見つけることができた。
 「うーん、予想よりも食べられそうな魔物いないな・・・そもそも魔物自体が少ないし。携帯食料もあと8日分くらいしか買ってきてないぞ」


 深緑の森は強者ほど魔素が豊富な深層に住み着いている。そのため深緑の森で食べられそうな魔物は中層を過ぎてからしかいないのだ。浅層から中層は比較的弱い部類の昆虫型魔物が多く生息している。もちろんこれらのことをジグレイドは知るはずもない。



 深緑の森に入って3日目の朝がきた。

 「昨日の夜も魔物は襲ってこなかったな・・・夜行性の魔物がいないことはないと思うんだがな。まー夜襲はないにこしたことはないか」
 知らず知らずのうちにジグレイドは独り言が多くなっていた。やはり少し寂しいのかもしれない。
 朝食を携帯食料で簡単に済ませジグレイドは今日も深層へ向かって歩き出した。


 暫く歩いていると魔物の足跡を見つけた。それもかなりの数である。
 『なんの足跡だ?近くに集落でもあるのか?殲滅するかしないか・・・しないという選択肢はないか。ならどうやって殲滅するかな・・・』

 少なく見積もっても数十の集落であろう場所に向かってコソコソと忍び寄りながら集落を形成している魔物の殲滅方法を考えていた。


 歩くこと十数分、漸く魔物の集落を発見した。

 『ふーん、かなり文化的な魔物だな・・・。生意気にも柵やら堀やらを造っていいやがる』
 なんとこの集落を形成している魔物は魔物にしてはかなり知性的なようだ。殲滅することには変わりはないが。
 『うーん・・・こうなると忍び込んで殲滅っていうのもできそうにないな』
 見たところ警備兵らしき魔物が歩き回っているのだ。しかも一切サボることなく真面目に警備しているようである。


 この集落を形成している魔物は二足歩行も可能な犬の魔物のコボルトである。
 コボルトは基本自前の牙や爪を使って集団で襲ってくる。だがジグレイドが見つけた集落のコボルトは武装しておりきちんと隊列を組めていた。普通のコボルトは頭が良くなく欲望のまま生きていることが普通であるが偶に上位種とも呼ばれる個体が生まれたときは格段と強く賢い集落になる。といっても賢いのは上位種だけなのだが、強くなっているのには変わらない。
 コボルトの集落はたとえ上位種が生まれたとしても精々20匹くらいの集落にしかならない。だが今回の集落は武装しているコボルトだけでも150匹を超えている。集落に住むコボルトを全て含むと500匹に届きそうなくらいである。
 実はこの集落にはコボルトの上位種が8匹と上位種の更に上の変異種が1匹いて、そのコボルトキングとも呼べる魔物がこの集落のボスである。この絶対的なボスのもとに集まった集落であるため統制がとれており大抵のことは対処できるだけの備えはできていた。

 だが今その集落を殲滅せんと一人の死神が忍び寄ってきていた。

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