おちゆく先に

目日

文字の大きさ
57 / 126

56話

しおりを挟む
 深緑の森での初戦闘を終えた後(戦ったのはジグレイドだけだが)、前回殲滅したコボルトの集落があった場所に案内してきていた。

 「えーっと・・・ここにあったはずなんだけど・・・跡形もないな」
 確かに集落の後の様なものは残っているが、そこには何もなかった。コボルトの骨や家の残骸、集落を囲っていた塀も全て無くなっていた。唯一端の方に建てられていただろう櫓の様なものの残骸が残っているが、それしか残っていなかった。

 「本当にここに集落があったのか?確かに何者かの手が加えられた場所だがよ。綺麗に全部なくなってるじゃねーか」
 「ここに住んでいたコボルトはなかなか頭がよかったのだろう。きちんと整地までしておる」
 フルクトスが地面を踏みしめて確認している。
 「でも腐臭とかしなくてよかったですよね?団長、ここで休憩にしますよね?」
 カリーナに詰め寄って休憩をせがんでいるのはメマである。別に疲れたわけではなくただお腹が空いているだけの様だ。
 休憩できそうな場所に着いたからかメマのお腹から“ぐぅうう”とそんな音が聴こえてきていた。
 「メマ相変わらず見た目と違って食い意地が張っているな。少しは自重しろよ」
 そんなメマを団員全員が笑ってからかっていた。

 楽しそうに笑いあっている団員と違ってジグレイドは難しい顔をしていた。
 「どうやったらこんなことになるんだ?さすがに数ヵ月で朽ちて無くなることはないだろうし・・・」
 「深層の魔物?」
 しかめ面でぶつぶつ言っているジグレイドにカリーナが話し掛けた。
 「やっぱりそれしかないよな・・・。もし深層の魔物が中層に来ているなら深層で何かが起きたはずだ。じゃないと深層の魔物が中層に降りてくるはずがない」
 「食事は?」
 「流石にないと思うぞ。食事のためだとしたら深層からは離れすぎているしな」

 二人で話し込んでいるとイクシムが近寄ってきた。
 「団長、ジグレイドさん、ここで食事休憩にしませんか?」
 「そうだな・・・少し懸念事項はあるがこれから探すのもだよな」
 「では準備してきますね。メマが腹空かせて死にそうって喚いているので」
 そう言うとイクシムは走り去って行ってしまった。



 食事の準備が整いこれから食べようという時に巨大な球体が空から降ってきた。

 「た、退避!」
 流石精鋭であるジグレイドが叫ぶと同時に飛び退いていた。
 その直後に“ビチャーン!”という轟音とともに激しい地面の揺れがジグレイド達に襲い掛かった。

 「あ、あぶねえ・・・あんなのに押しつぶされたら即死するぞ」
 「ジグレイド君ありがとう。少し油断していて私は気が付けなかった」
 「そんなことより私の食事がぁああ・・・」
 「命より食事かよ・・・さすがメマだな」
 「くる。アイリーン防御」
 「はい!“すべてを防ぐ 聖なる盾よ 今ここに 顕現せよ ホーリーシールド”」
 カリーナがすぐに指示を飛ばし、アイリーンもすぐに魔法を発動させる。
 巨大な球体はうねうねと蠢き巨大な拳を作り上げた。そしてその拳を振り下ろした。だが間一髪アイリーンの防御魔法が間に合い魔法の盾と巨大な拳が衝突した。

 “ビダーン!”まるで粘性の水がぶつかったような音がした。
 「ぐっ・・・すいません!もう無理です!」
 たった一撃で防御魔法の盾にひびが入りアイリーンが叫ぶ。
 「各自散開・・・適宜攻撃開始」

 魔法の盾を維持していたアイリーンは自分では退避できなかったのでジグレイドが肩に担いで退避させた。
 「あの・・・もう少し良い持ち方というものはなかったのですか?」
 「戦闘中に何を言っている!?ふざけるなら後にしろ!」
 ジグレイドはそう一喝すると担いでいたアイリーンを地面に捨てて魔物へと走り出した。後ろからうめき声と共に非難する声が聞こえるがもちろん無視した。


 「ここなら火魔法を存分に使っていいよな?フルクトスさん!合わせようぜ!」
 「あまりふざけるでない!カウントは3だ!合わせろよ!」
 「って・・・やるのかよ!?」
 詠唱の後、放つ前に3カウント数えてから二人は魔法を放った。詠唱の時間を稼ぐために魔物を引きつけていたジグレイドにカリーナが警告する。
 「ジグ危ない!」
 「っ!?・・・ふう、それにしても魔法って合わせられるんだな」
 すぐさま飛び退きカリーナの近くに着地する。
 「できる。でも難しい」

 全員に見守られる中でファマルは火の竜巻の中級魔法、フルクトスは風の竜巻の中級魔法を発動した。
 そして二つの魔法が合わさり巨大な火の竜巻、火災旋風になった。
 「ついでにこれでも入れとくか」
 イクシムが発動したのは土の杭を連続で飛ばす中級魔法だ。次々に土の杭は炎の竜巻に飲み込まれていった。

 巨大な魔物は炎の竜巻で常時焼かれ地面に伏せていることもできず今にも空中に投げ飛ばされそうになっている。そして追い打ちの土の杭だ。土の杭は炎で熱せられて超高温の杭となっていた。魔物の身体に次々と突き刺さっていく。なかなかえげつないことをするものである。この攻撃をたった3人で行っているのだから魔法師というのはやはり貴重な戦力である。


 魔物が炎の竜巻に焼かれている光景を眺めていた時、ふとジグレイドはカリーナがぶつぶつと詠唱していることに気が付いた。

 「“─────ダウンバースト”」
 振り上げた杖をすぐさま振り下ろし魔法を発動させる。
 すると炎の竜巻の上から途轍もない突風が吹き降りてきて、炎の竜巻ごと魔物を圧し潰した。

 「ちょ、団長やるなら先に言ってください!“土よ 土よ 我が意のまま 踊れ マニピュレーション!”」
 炎の竜巻を圧し潰した突風は地面に衝突した後周囲に拡散した。だがフルクトスの土魔法の塀がギリギリ間に合ってジグレイド達は無傷で済んでいた。


 カリーナの魔法の突風が止んだ後、魔法が吹き荒れた中心に残っていたものは何もなかった。地面は焼けて一部金属状になっているし、さすがの深層の魔物でも死んでいるはずだと誰もが思っていた。

 ジグレイドでさえもである。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。 だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。 互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。 ハッピーエンド 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/03/02……完結 2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位 2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位 2023/12/19……連載開始

東京ダンジョン物語

さきがけ
ファンタジー
10年前、世界中に突如として出現したダンジョン。 大学3年生の平山悠真は、幼馴染の綾瀬美琴と共に、新宿中央公園ダンジョンで探索者として活動していた。 ある日、ダンジョン10階層の隠し部屋で発見した七色に輝く特殊なスキルストーン。 絶体絶命の危機の中で発動したそれは、前代未聞のスキル『無限複製』だった。 あらゆる物を完全に複製できるこの力は、悠真たちの運命を大きく変えていく。 やがて妹の病を治すために孤独な戦いを続ける剣士・朝霧紗夜が仲間に加わり、3人は『無限複製』の真の可能性に気づき始める。 スキルを駆使して想像を超える強化を実現した彼らは、誰も到達できなかった未踏の階層へと挑んでいく。 無限の可能性を秘めた最強スキルを手に、若き探索者たちが紡ぐ現代ダンジョンファンタジー、ここに開幕!

チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます―― 金さえあれば人生はどうにでもなる―― そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。 交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。 だがその力は、本来存在してはいけないものだった。 知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。 その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在―― 「世界を束ねる管理者」 神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。 巻き込まれたくない。 戦いたくもない。 知里が望むのはただ一つ。 金を稼いで楽して生きること。 しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。 守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。 金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる 巻き込まれ系異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ダークファンタジー成り上がり譚。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処理中です...