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64話
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時は少し遡り 671年 晩冬 フェイシル王国のカザフ要塞都市にて
「おらおら!急いで運べ!もたもたしてっと間に合わんぞ!」
そんな怒声が都市外では飛び交っていた。
そしてその中に意外な人物がいた。
「だあー!運び終わったぞ!次はなんだ?」
「モルドさん終わったならこっち手伝ってください!弓が使えなくなってしまう」
モルドに助けを求めたのは弓の天才でイケメンのアブエルだった。
「仕方ねーな・・・ほら、これくらいなら問題ないだろ?」
モルドが持ち上げたのはアブエルが運んでいた木材の大半だった。
「さすがモルドさん男前!」
なぜ戦場の狼の2人が木材運搬をしているのかというと、単に食事や酒の飲み過ぎによる金欠のせいだった。冬を越すための資金はもちろん貯めていたのだが2人がこっそり使ってしまっていたのがリーリャに見つかり、稼いで来い!と叩き出されたのである。
戦争前という事もあり組合には様々な依頼があったがモルド達は2人という事もあり体力作りも兼ねて木材運搬の依頼を受けたのであった。
「そういえば今回の戦争にはジグレイドのやつ来ないんですかね?」
「あー・・・どうだろうな。ジグの性格だと来ると思うんだが、あれから何してるか噂も聞かねえしな」
「ですよねー・・・」
そんな会話をしつつ受けた依頼を終えたモルド達は組合へと入っていった。
「ん?なんだ?」
「どうしたんです?」
急に立ち止まったモルドを訝しんだアブエルが尋ねる。
「いや、この騒ぎはなんだと思ってな」
「騒ぎですか?俺にはなんか何かを見て見ぬふりをしているように思えますけど・・・これは受付の方ですね」
戦争前ということもあり組合には多くの人で賑わっており余程背の高い人でない限りこの騒ぎの元を見ることができないようだった。
「なあ、この騒ぎはなんなんだ?」
気になったモルドは近くにいた組合員に尋ねてみた。
「ん?あんたは!?・・・この騒ぎだったな。なんでも黒騎士が帰ってきたみたいなんだ」
「「黒騎士?」」
2人揃って知らない様子に驚きつつ説明してくれた。
「かの有名なギルドのおふたりさんにはまだ知られてないようだが、このカザフ要塞では有名だぜ?実際は騎士様じゃないらしいんだが、頭から足先まで禍々しいくすんだ銀色の鎧を身に纏っていることが黒銀の鎧の騎士様っぽいって誰かが言いだしてな、たぶんそれからだな。今は略して黒騎士とか言われるようになってるがな」
「へー・・・その感じだと強そうに聞こえないんだが、そこらへんはどうなんだ?」
「これは噂なんだがよ、やつは深緑の森を主な狩場にしてるって話だ。俺は信じちゃいねえが、結構信じてるやつ多いぜ」
「なるほど深緑の森か・・・」
そんな会話をしているうちに列はどんどん進み受付までもうすぐになっていった。そして受付に近付くにつれて騒ぎの原因が顕になってきた。
「だからそんな依頼受けないって言っているだろ!何度言えばいいんだ!」
「ですから!これは上級貴族様からの指名依頼ですので断るとそちらにもいろいろ問題がありますと説明したはずです!」
モルドの視線の先には黒騎士と組合の受付嬢が言い争っていた。どうやら指名依頼の件で揉めているらしいが、聞いていると黒騎士の方に正当性があるように思える。面倒ごとは嫌なので黙って見守っていることにした。
「なぜ俺がそんな貴族なんかの使いっぱしりをしなくてはいけない!ふざけるな!」
「しかし上級貴族様の指名依頼ですので仕方ないのでは!?観念して受けてください!」
「・・・」
「どうしました?早くここにサインしてください」
「・・・もういい」
「はい?どうしました?早くサ「もういいと言ったんだ!」・・・ヒィっ!」
我慢の限界に達したのか黒騎士は受付カウンターを依頼用紙ごと叩き潰した。そして組合の登録証を取り出し、そのまま握りつぶして壊れたカウンターへ叩きつけた。
「もう組合なんか知ったことか!昔世話になったから態々素材を卸していたが、こんなくだらない依頼を寄越すようになるとは組合も落ちたものだな!もう俺は組合員じゃない!俺の預けていた金を全て今すぐに用意しろ!これは頼んでいるのではない!命令だ!」
「そ、そんな!あなたが受けてくれないと私の家族が!」
「知るか!勝手に仲良く殺されてしまえ!」
みるみる青ざめていく受付嬢だが、すげなくあしらわれてしまう。
「ちょっと待ってくれないかい?」
口論していた2人に待ったをかけた人物がいた。
「なんだ?見ての通り忙しいんだが」
「私はこのカザフ要塞都市の組合を任されているユニオンマスターだよ」
「で?そのユニオンマスターさんなら俺の金を全て出してくれるわけ?」
「それは無理だね」
「なら引っ込んでいてくれるか?この無能とまだお話しないといけないからな」
「それでもいいのだけど、その受付嬢ではいつまでたってもあんたの貯金を引き出せないよ」
「まあユニオンマスターですら出せないならこれ程度では無理なのは道理だな。で?何の用だ?」
「場所を変えようかね、ここだと騒がしすぎる」
「ダメだ、話ならここで聞く」
応接室へと案内しようとしたが、すぐに却下した。
「どうしてだい?」
「そんなもん決まっているだろ?お前が誤魔化さないようにさ。これだけ見物人がいれば何かと有利だしな」
「不利になるとは思わないのかい?」
「ならないな、今回の件に関して俺は一切不利になる要素がない。あるとしてもそこのカウンターを壊したことくらいか?」
「はぁ・・・ならここで話そう。そもそも今すぐにあんたの貯金を全て用意するだけの枚数がここにはない。それに今あんたに組合を抜けられては困る。あんたは貴重な薬草を唯一採取できる存在だからね。どこかの受付嬢が勝手に予約紛いなことをしてくれたおかげで私にも予約の伝言が来ている始末だ!まったく今すぐ首を刎ねたいくらいだよ!・・・これは提案なんだがね。もし1つ依頼をこなしてくれればその間に全額用意しておくことを約束しよう。それとできれば組合を抜けないでくれると助かる。もちろんこのような不祥事は起きないよう徹底させるつもりだよ。どうだい?」
様子を窺いつつ提案してくるが、もちろん答えは決まっていた。
「は?そんな提案受けるわけないだろ?そもそも俺は組合に情けで素材を卸していたんだ。組合の世話なんてこの一年で何一つ受けてないからな、依頼も態々余計な手間をかけて組合を通していただけだしな。所属するだけ無駄なんだよ。金だって別のとこに預ければいいしな。これが最後の情けだ!戦争が始まる前までに全額用意しておけ!」
そう言って黒騎士は踵を返し立ち去って行った。
その後の組合では
「はぁ・・・」
「あのマスター?彼の貯金ってそんな額なんですか?」
受付嬢の1人が尋ねてくるが、もちろんそんな情報を簡単に漏らすはずもなく
「最近弛んでいないかい?そんな情報言うわけないでしょ!このことは連帯責任にさせてもらうよ!もちろんこの件の当事者は奴隷落ちにする!あんたら買いたかったら割高で売るよ!」
突然そんなことを言いだしたユニオンマスターに一同驚きつつ、「そこは割安じゃないのかよ!?」と組合員の男たちがつっこんだ。
そんな中モルドとアブエルは「あれが黒騎士か・・・」と立ち去っていった先を見ながら呟いていた。黒騎士の正体がジグレイドだと一切気づいた様子もなく。
「おらおら!急いで運べ!もたもたしてっと間に合わんぞ!」
そんな怒声が都市外では飛び交っていた。
そしてその中に意外な人物がいた。
「だあー!運び終わったぞ!次はなんだ?」
「モルドさん終わったならこっち手伝ってください!弓が使えなくなってしまう」
モルドに助けを求めたのは弓の天才でイケメンのアブエルだった。
「仕方ねーな・・・ほら、これくらいなら問題ないだろ?」
モルドが持ち上げたのはアブエルが運んでいた木材の大半だった。
「さすがモルドさん男前!」
なぜ戦場の狼の2人が木材運搬をしているのかというと、単に食事や酒の飲み過ぎによる金欠のせいだった。冬を越すための資金はもちろん貯めていたのだが2人がこっそり使ってしまっていたのがリーリャに見つかり、稼いで来い!と叩き出されたのである。
戦争前という事もあり組合には様々な依頼があったがモルド達は2人という事もあり体力作りも兼ねて木材運搬の依頼を受けたのであった。
「そういえば今回の戦争にはジグレイドのやつ来ないんですかね?」
「あー・・・どうだろうな。ジグの性格だと来ると思うんだが、あれから何してるか噂も聞かねえしな」
「ですよねー・・・」
そんな会話をしつつ受けた依頼を終えたモルド達は組合へと入っていった。
「ん?なんだ?」
「どうしたんです?」
急に立ち止まったモルドを訝しんだアブエルが尋ねる。
「いや、この騒ぎはなんだと思ってな」
「騒ぎですか?俺にはなんか何かを見て見ぬふりをしているように思えますけど・・・これは受付の方ですね」
戦争前ということもあり組合には多くの人で賑わっており余程背の高い人でない限りこの騒ぎの元を見ることができないようだった。
「なあ、この騒ぎはなんなんだ?」
気になったモルドは近くにいた組合員に尋ねてみた。
「ん?あんたは!?・・・この騒ぎだったな。なんでも黒騎士が帰ってきたみたいなんだ」
「「黒騎士?」」
2人揃って知らない様子に驚きつつ説明してくれた。
「かの有名なギルドのおふたりさんにはまだ知られてないようだが、このカザフ要塞では有名だぜ?実際は騎士様じゃないらしいんだが、頭から足先まで禍々しいくすんだ銀色の鎧を身に纏っていることが黒銀の鎧の騎士様っぽいって誰かが言いだしてな、たぶんそれからだな。今は略して黒騎士とか言われるようになってるがな」
「へー・・・その感じだと強そうに聞こえないんだが、そこらへんはどうなんだ?」
「これは噂なんだがよ、やつは深緑の森を主な狩場にしてるって話だ。俺は信じちゃいねえが、結構信じてるやつ多いぜ」
「なるほど深緑の森か・・・」
そんな会話をしているうちに列はどんどん進み受付までもうすぐになっていった。そして受付に近付くにつれて騒ぎの原因が顕になってきた。
「だからそんな依頼受けないって言っているだろ!何度言えばいいんだ!」
「ですから!これは上級貴族様からの指名依頼ですので断るとそちらにもいろいろ問題がありますと説明したはずです!」
モルドの視線の先には黒騎士と組合の受付嬢が言い争っていた。どうやら指名依頼の件で揉めているらしいが、聞いていると黒騎士の方に正当性があるように思える。面倒ごとは嫌なので黙って見守っていることにした。
「なぜ俺がそんな貴族なんかの使いっぱしりをしなくてはいけない!ふざけるな!」
「しかし上級貴族様の指名依頼ですので仕方ないのでは!?観念して受けてください!」
「・・・」
「どうしました?早くここにサインしてください」
「・・・もういい」
「はい?どうしました?早くサ「もういいと言ったんだ!」・・・ヒィっ!」
我慢の限界に達したのか黒騎士は受付カウンターを依頼用紙ごと叩き潰した。そして組合の登録証を取り出し、そのまま握りつぶして壊れたカウンターへ叩きつけた。
「もう組合なんか知ったことか!昔世話になったから態々素材を卸していたが、こんなくだらない依頼を寄越すようになるとは組合も落ちたものだな!もう俺は組合員じゃない!俺の預けていた金を全て今すぐに用意しろ!これは頼んでいるのではない!命令だ!」
「そ、そんな!あなたが受けてくれないと私の家族が!」
「知るか!勝手に仲良く殺されてしまえ!」
みるみる青ざめていく受付嬢だが、すげなくあしらわれてしまう。
「ちょっと待ってくれないかい?」
口論していた2人に待ったをかけた人物がいた。
「なんだ?見ての通り忙しいんだが」
「私はこのカザフ要塞都市の組合を任されているユニオンマスターだよ」
「で?そのユニオンマスターさんなら俺の金を全て出してくれるわけ?」
「それは無理だね」
「なら引っ込んでいてくれるか?この無能とまだお話しないといけないからな」
「それでもいいのだけど、その受付嬢ではいつまでたってもあんたの貯金を引き出せないよ」
「まあユニオンマスターですら出せないならこれ程度では無理なのは道理だな。で?何の用だ?」
「場所を変えようかね、ここだと騒がしすぎる」
「ダメだ、話ならここで聞く」
応接室へと案内しようとしたが、すぐに却下した。
「どうしてだい?」
「そんなもん決まっているだろ?お前が誤魔化さないようにさ。これだけ見物人がいれば何かと有利だしな」
「不利になるとは思わないのかい?」
「ならないな、今回の件に関して俺は一切不利になる要素がない。あるとしてもそこのカウンターを壊したことくらいか?」
「はぁ・・・ならここで話そう。そもそも今すぐにあんたの貯金を全て用意するだけの枚数がここにはない。それに今あんたに組合を抜けられては困る。あんたは貴重な薬草を唯一採取できる存在だからね。どこかの受付嬢が勝手に予約紛いなことをしてくれたおかげで私にも予約の伝言が来ている始末だ!まったく今すぐ首を刎ねたいくらいだよ!・・・これは提案なんだがね。もし1つ依頼をこなしてくれればその間に全額用意しておくことを約束しよう。それとできれば組合を抜けないでくれると助かる。もちろんこのような不祥事は起きないよう徹底させるつもりだよ。どうだい?」
様子を窺いつつ提案してくるが、もちろん答えは決まっていた。
「は?そんな提案受けるわけないだろ?そもそも俺は組合に情けで素材を卸していたんだ。組合の世話なんてこの一年で何一つ受けてないからな、依頼も態々余計な手間をかけて組合を通していただけだしな。所属するだけ無駄なんだよ。金だって別のとこに預ければいいしな。これが最後の情けだ!戦争が始まる前までに全額用意しておけ!」
そう言って黒騎士は踵を返し立ち去って行った。
その後の組合では
「はぁ・・・」
「あのマスター?彼の貯金ってそんな額なんですか?」
受付嬢の1人が尋ねてくるが、もちろんそんな情報を簡単に漏らすはずもなく
「最近弛んでいないかい?そんな情報言うわけないでしょ!このことは連帯責任にさせてもらうよ!もちろんこの件の当事者は奴隷落ちにする!あんたら買いたかったら割高で売るよ!」
突然そんなことを言いだしたユニオンマスターに一同驚きつつ、「そこは割安じゃないのかよ!?」と組合員の男たちがつっこんだ。
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