84 / 126
83話
しおりを挟む
674年 秋 フェイシル王国 王都ムルスにて
ジグレイドがローレンに弟子入りしてから2年が経過していた。
この2年バルクド帝国は戦争を仕掛けてはこずに自国の建て直しに力を注いでいるようだった。おかげでジグレイドはローレンと共に各地を回るといった訓練の妨げになるようなことをしなくて済んでいた。尤も訓練がキツすぎて各地を回っていた方が楽だったかもしれないが、強くなるためだと言い聞かせてローレンの鬼のような訓練に必死でしがみついていっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「どうした?もうへばったのか?そんな事では私に一撃をいれることはまだまだ先になるな」
「なんでその歳でそんなに動けるんだよ!魔法使ってるだろ!」
「何を言っている。魔法を使っていないことはジグにも分かっているだろう。いつまでもへばってないで次の訓練をするぞ!」
今日も朝から軽い走り込みから始まり筋力トレーニング、そして昼まで永遠と素振りを行う。昼休憩の後は模擬戦を夜になるまで行う。
これが1日の訓練メニューだ。意外と楽そうだと思うが考え直してほしい。この訓練の相手は全て人外のローレンなのだ。訓練の途中で食事以外の休憩を挟むわけがないのである。
いつもであれば騎士や兵士が一緒に訓練をしているのでまだ楽なのだが、今日はローレンと二人っきりでの訓練なのである。
なぜかというと、普通に訓練が休みなのだ。だが弟子のジグレイドに休みなどない。ローレンが訓練すると言えばそれについていくしかないのである。
「よし!そろそろ昼食を食べに行くぞ」
漸く素振り地獄から解放されたジグレイドはいつものように声にもならない声を出しながら地面に倒れこんだ。
「なんだ?またへばったのか?いい加減魔法無しでついてこられるようになれ。魔法に頼りきっている証拠だ。魔力が尽きたら何もできなくなるぞ」
「ぐっ…わかっているさ」
本当は魔力が尽きることがないジグレイドだが、ローレンにはまだそのことを伝えていなかった。
「ローレン様!」
疲れ果てていたジグレイドがなんとか立ち上がろうとしているとき兵士が走り寄ってきた。
「どうした?」
「陛下がお呼びです。すぐに会議室へ来るようにと」
「そうか、すぐにいこう。おそらく会議はすぐには終わらんだろう。今日の訓練はここまでだ。ではまた後でな」
そう言うとローレンは呼びにきた兵士と共に王城へと走っていった。
フェイシル王国 王城にて
今日の会議は四人ではなく多くの上級貴族の当主が出席していた。いつもは自分の領地にいてなかなか会議に参加できないのだが今回は珍しく多くの貴族が参加していた。
「では将軍も来たことだ。会議を開始しよう。まずバルクド帝国へと放っていた密偵からなにやら兵や武器を集める動きがあると報告がきた。次の春にはまた戦争を仕掛けてくるやもしれん」
この国王の発言にすでに知っていた大臣のウォルマを除いた一同がまたかとでも言いたげにため息を吐いた。
「また戦争ですか…漸く落ち着いてきたというのに」
「大臣、そうは言っても相手が仕掛けてくるのだ。仕方なかろう」
「そうはいいますが戦争の度に膨大な資金を使わねばならないのです。予算をかき集めるこちらとしては勘弁してほしいのですよ。それにその予算をもっと国民の為に使えばより良い国へと出来るというのに…バルクドの阿呆共め!いい加減勝てぬとなぜ気づかぬのだ!」
「大臣、落ち着くのだ。予算であれば国庫から出せばよかろう。それに問題はバルクド帝国よりも他にあるだろう」
「亜人…ですね」
「そうだ。亜人族に好き勝手にさせるわけにはいかん。今年こそこちらの被害なく対処せねばならぬ。もしこれ以上被害が出るのであれば組合から何を言われるか分かったものではないからな」
「もうすでに苦情はきてる。私の方にも何件かきてた」
「魔法師団にもきていたのか…苦情なら亜人族に言えばいいものを」
「そう言うでない、全ての亜人族が加担している訳ではあるまい。して亜人族の拠点探しはどうなっておるのだ?」
「進展はなし、誰かがジグを独り占めしてるせい」
「ジグはまだ私の弟子だ。仕方ないだろう」
「そこまでだ。今は戦争の話をしよう!」
なんとかウォルマが仲裁して会議を再開するのだった。
ジグレイドがローレンに弟子入りしてから2年が経過していた。
この2年バルクド帝国は戦争を仕掛けてはこずに自国の建て直しに力を注いでいるようだった。おかげでジグレイドはローレンと共に各地を回るといった訓練の妨げになるようなことをしなくて済んでいた。尤も訓練がキツすぎて各地を回っていた方が楽だったかもしれないが、強くなるためだと言い聞かせてローレンの鬼のような訓練に必死でしがみついていっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「どうした?もうへばったのか?そんな事では私に一撃をいれることはまだまだ先になるな」
「なんでその歳でそんなに動けるんだよ!魔法使ってるだろ!」
「何を言っている。魔法を使っていないことはジグにも分かっているだろう。いつまでもへばってないで次の訓練をするぞ!」
今日も朝から軽い走り込みから始まり筋力トレーニング、そして昼まで永遠と素振りを行う。昼休憩の後は模擬戦を夜になるまで行う。
これが1日の訓練メニューだ。意外と楽そうだと思うが考え直してほしい。この訓練の相手は全て人外のローレンなのだ。訓練の途中で食事以外の休憩を挟むわけがないのである。
いつもであれば騎士や兵士が一緒に訓練をしているのでまだ楽なのだが、今日はローレンと二人っきりでの訓練なのである。
なぜかというと、普通に訓練が休みなのだ。だが弟子のジグレイドに休みなどない。ローレンが訓練すると言えばそれについていくしかないのである。
「よし!そろそろ昼食を食べに行くぞ」
漸く素振り地獄から解放されたジグレイドはいつものように声にもならない声を出しながら地面に倒れこんだ。
「なんだ?またへばったのか?いい加減魔法無しでついてこられるようになれ。魔法に頼りきっている証拠だ。魔力が尽きたら何もできなくなるぞ」
「ぐっ…わかっているさ」
本当は魔力が尽きることがないジグレイドだが、ローレンにはまだそのことを伝えていなかった。
「ローレン様!」
疲れ果てていたジグレイドがなんとか立ち上がろうとしているとき兵士が走り寄ってきた。
「どうした?」
「陛下がお呼びです。すぐに会議室へ来るようにと」
「そうか、すぐにいこう。おそらく会議はすぐには終わらんだろう。今日の訓練はここまでだ。ではまた後でな」
そう言うとローレンは呼びにきた兵士と共に王城へと走っていった。
フェイシル王国 王城にて
今日の会議は四人ではなく多くの上級貴族の当主が出席していた。いつもは自分の領地にいてなかなか会議に参加できないのだが今回は珍しく多くの貴族が参加していた。
「では将軍も来たことだ。会議を開始しよう。まずバルクド帝国へと放っていた密偵からなにやら兵や武器を集める動きがあると報告がきた。次の春にはまた戦争を仕掛けてくるやもしれん」
この国王の発言にすでに知っていた大臣のウォルマを除いた一同がまたかとでも言いたげにため息を吐いた。
「また戦争ですか…漸く落ち着いてきたというのに」
「大臣、そうは言っても相手が仕掛けてくるのだ。仕方なかろう」
「そうはいいますが戦争の度に膨大な資金を使わねばならないのです。予算をかき集めるこちらとしては勘弁してほしいのですよ。それにその予算をもっと国民の為に使えばより良い国へと出来るというのに…バルクドの阿呆共め!いい加減勝てぬとなぜ気づかぬのだ!」
「大臣、落ち着くのだ。予算であれば国庫から出せばよかろう。それに問題はバルクド帝国よりも他にあるだろう」
「亜人…ですね」
「そうだ。亜人族に好き勝手にさせるわけにはいかん。今年こそこちらの被害なく対処せねばならぬ。もしこれ以上被害が出るのであれば組合から何を言われるか分かったものではないからな」
「もうすでに苦情はきてる。私の方にも何件かきてた」
「魔法師団にもきていたのか…苦情なら亜人族に言えばいいものを」
「そう言うでない、全ての亜人族が加担している訳ではあるまい。して亜人族の拠点探しはどうなっておるのだ?」
「進展はなし、誰かがジグを独り占めしてるせい」
「ジグはまだ私の弟子だ。仕方ないだろう」
「そこまでだ。今は戦争の話をしよう!」
なんとかウォルマが仲裁して会議を再開するのだった。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。
だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。
互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。
ハッピーエンド
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/03/02……完結
2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位
2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位
2023/12/19……連載開始
東京ダンジョン物語
さきがけ
ファンタジー
10年前、世界中に突如として出現したダンジョン。
大学3年生の平山悠真は、幼馴染の綾瀬美琴と共に、新宿中央公園ダンジョンで探索者として活動していた。
ある日、ダンジョン10階層の隠し部屋で発見した七色に輝く特殊なスキルストーン。
絶体絶命の危機の中で発動したそれは、前代未聞のスキル『無限複製』だった。
あらゆる物を完全に複製できるこの力は、悠真たちの運命を大きく変えていく。
やがて妹の病を治すために孤独な戦いを続ける剣士・朝霧紗夜が仲間に加わり、3人は『無限複製』の真の可能性に気づき始める。
スキルを駆使して想像を超える強化を実現した彼らは、誰も到達できなかった未踏の階層へと挑んでいく。
無限の可能性を秘めた最強スキルを手に、若き探索者たちが紡ぐ現代ダンジョンファンタジー、ここに開幕!
チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます――
金さえあれば人生はどうにでもなる――
そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。
交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。
しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。
だがその力は、本来存在してはいけないものだった。
知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。
その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在――
「世界を束ねる管理者」
神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。
巻き込まれたくない。
戦いたくもない。
知里が望むのはただ一つ。
金を稼いで楽して生きること。
しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。
守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。
金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる
巻き込まれ系異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。
リョウ
ファンタジー
何者かになりたかった。
だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。
そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。
導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。
冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。
目指すのは、ただ生き延びることではない。
一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。
渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ダークファンタジー成り上がり譚。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる