96 / 126
95話
しおりを挟む
「追撃はなしだ!我らも撤退するぞ!怪我人に手を貸してやれ!」
総指揮官ではなくローレンの指示に従いフェイシル王国軍は速やかに撤退を開始した。
だがこの撤退行動に納得いかないものがいた。
もちろん此度の総指揮官であるボダホン侯爵だ。
「どういうつもりだ!なぜ撤退してきた!魔法を放った後に追撃せよ、と命令しただろうが!」
撤退が完了したあとの軍議でボダホン侯爵は真っ先にローレンに怒声を浴びせていた。
「確かにそう言われていましたが、それはこちらの被害が皆無、もしくは軽微であった場合の話です。切り札の魔法師団は亜人族による奇襲でほぼ全滅し、中央に配置していた兵士もそのほとんどが亜人族にやられていました。あの状況で追撃していれば全滅するのが見えていました」
「ぐぐぐ…そんなことやってみなければわからんではないか!」
「やってからでは遅いのです!もし追撃して全滅してしまえば侯爵様の在わすここにも敵が攻め込んで来ていたかもしれないのですよ!?戦場では常に最悪の状況を想定して指揮をとっていただきたい!人は駒ではないのですよ!?」
「き、貴様ー!総指揮官である吾にそのような口をきいてただで済むと思っておるのではないな!?例え将軍であっても吾の気分一つでクビにすることも出来るのだぞ!?」
「…。」
あまりの的外れで埒外な物言いにローレンは驚きを通り越して呆れ果ててしまっており開いた口が塞がらない状態になってしまっていた。
だがそんなローレンにボダホン侯爵は何を勘違いしたのか、ローレンが反論もできずに黙ってしまっていると思ったのかさらに埒外な事を言い出した。
「くはははは!流石のローレン将軍もクビにされては敵わんらしいな!どうやら将軍という地位にしがみついていたいようだな!今ならば地べたに這い蹲りこの吾に許しを「くだらんな」こ、えば…?なんだと?」
「くだらん、と言ったんだ。正直将軍の地位などどうでもいい。だが貴殿のような無能が指揮する軍など兵士たちにとって災難が過ぎる。故に私はまだ将軍として戦場に身を置いておるのだ。それと貴殿の発言は全て国王陛下へと報告させてもらう。貴重な人員を無駄死にさせようとしたことから始まり、有りもしない権力を振りかざした事などをな」
ローレンの反撃にボダホン侯爵は顔を真っ赤にして口をパクパクさせながら更に埒外な事を言い出した。
「な、な、なっ!貴様っ!貴様は吾の部下であろう!その生殺与奪は上である吾が持っているのは当然の事だ!」
「この身は国王陛下にのみ捧げております。そもそも私は貴殿の部下では有りません。私は陛下より独立部隊長の権限が与えられておりますので、そもそも貴殿に命令される謂れはないのです。もし私が貴殿の部下であったとしても、私は貴殿の命令を諌めたでしょう。部下とは上の命令に従順なだけではいけないのですから」
ローレンは以前から国王陛下より独立部隊長という権限を与えられていた。
独立部隊とは戦さ場において例え総指揮官の命令を受けていたとしても自らの判断で行動を起こすことができる部隊の事だ。
ここまでは公表されているが、実は独立部隊にはもう一つの顔があった。
それは監査部隊というものだ。
監査というのだから目的は言わずもがなである。
「独立部隊だと……そんな話、吾はきいておらぬぞ!」
ボダホン侯爵はローレンが独立部隊長を拝命していると知らなかったが、独立部隊がたとえ総指揮官であろうと命令できない部隊だということは知っていたようで、悔しさのあまり俯くことしか出来ていないようだった。
「さて、ボダホン侯爵も落ち着いたようですので本来の軍議を始めよう。先ずは被害の把握はどの程度まで終わっている?」
大人しくなったボダホン侯爵を放置してローレンは軍議を再開させる。
なにせ時間がないのだ。戦争は刻一刻と状況が変化していく。なるべく早く敵よりも状態を整え、なるべく早く行動に移さないと勝てないのだ。
「はっ、本日の衝突で約5000の内、把握できているだけでも600名近くが名誉ある戦死を遂げております。その殆どが中央に布陣していた部隊の者ですので、大半が亜人族の奇襲によるものと断定できます」
「そうか…魔法師団の生き残りは何名だ?」
「全員の生死はまだ把握できておりませんが、生き残りは3名です。その内の1人は魔法師団団長ですが…現在も治療中でいつ亡くなってもおかしくない状態だそうです。残りの2人の傷は軽微で明日の戦線にも復帰は可能だと聞いております」
「カリーナが……報告ご苦労。部隊の再編成の前に皆に聞いておきたいことがある。──明日も亜人族は出てくると思うか?」
総指揮官ではなくローレンの指示に従いフェイシル王国軍は速やかに撤退を開始した。
だがこの撤退行動に納得いかないものがいた。
もちろん此度の総指揮官であるボダホン侯爵だ。
「どういうつもりだ!なぜ撤退してきた!魔法を放った後に追撃せよ、と命令しただろうが!」
撤退が完了したあとの軍議でボダホン侯爵は真っ先にローレンに怒声を浴びせていた。
「確かにそう言われていましたが、それはこちらの被害が皆無、もしくは軽微であった場合の話です。切り札の魔法師団は亜人族による奇襲でほぼ全滅し、中央に配置していた兵士もそのほとんどが亜人族にやられていました。あの状況で追撃していれば全滅するのが見えていました」
「ぐぐぐ…そんなことやってみなければわからんではないか!」
「やってからでは遅いのです!もし追撃して全滅してしまえば侯爵様の在わすここにも敵が攻め込んで来ていたかもしれないのですよ!?戦場では常に最悪の状況を想定して指揮をとっていただきたい!人は駒ではないのですよ!?」
「き、貴様ー!総指揮官である吾にそのような口をきいてただで済むと思っておるのではないな!?例え将軍であっても吾の気分一つでクビにすることも出来るのだぞ!?」
「…。」
あまりの的外れで埒外な物言いにローレンは驚きを通り越して呆れ果ててしまっており開いた口が塞がらない状態になってしまっていた。
だがそんなローレンにボダホン侯爵は何を勘違いしたのか、ローレンが反論もできずに黙ってしまっていると思ったのかさらに埒外な事を言い出した。
「くはははは!流石のローレン将軍もクビにされては敵わんらしいな!どうやら将軍という地位にしがみついていたいようだな!今ならば地べたに這い蹲りこの吾に許しを「くだらんな」こ、えば…?なんだと?」
「くだらん、と言ったんだ。正直将軍の地位などどうでもいい。だが貴殿のような無能が指揮する軍など兵士たちにとって災難が過ぎる。故に私はまだ将軍として戦場に身を置いておるのだ。それと貴殿の発言は全て国王陛下へと報告させてもらう。貴重な人員を無駄死にさせようとしたことから始まり、有りもしない権力を振りかざした事などをな」
ローレンの反撃にボダホン侯爵は顔を真っ赤にして口をパクパクさせながら更に埒外な事を言い出した。
「な、な、なっ!貴様っ!貴様は吾の部下であろう!その生殺与奪は上である吾が持っているのは当然の事だ!」
「この身は国王陛下にのみ捧げております。そもそも私は貴殿の部下では有りません。私は陛下より独立部隊長の権限が与えられておりますので、そもそも貴殿に命令される謂れはないのです。もし私が貴殿の部下であったとしても、私は貴殿の命令を諌めたでしょう。部下とは上の命令に従順なだけではいけないのですから」
ローレンは以前から国王陛下より独立部隊長という権限を与えられていた。
独立部隊とは戦さ場において例え総指揮官の命令を受けていたとしても自らの判断で行動を起こすことができる部隊の事だ。
ここまでは公表されているが、実は独立部隊にはもう一つの顔があった。
それは監査部隊というものだ。
監査というのだから目的は言わずもがなである。
「独立部隊だと……そんな話、吾はきいておらぬぞ!」
ボダホン侯爵はローレンが独立部隊長を拝命していると知らなかったが、独立部隊がたとえ総指揮官であろうと命令できない部隊だということは知っていたようで、悔しさのあまり俯くことしか出来ていないようだった。
「さて、ボダホン侯爵も落ち着いたようですので本来の軍議を始めよう。先ずは被害の把握はどの程度まで終わっている?」
大人しくなったボダホン侯爵を放置してローレンは軍議を再開させる。
なにせ時間がないのだ。戦争は刻一刻と状況が変化していく。なるべく早く敵よりも状態を整え、なるべく早く行動に移さないと勝てないのだ。
「はっ、本日の衝突で約5000の内、把握できているだけでも600名近くが名誉ある戦死を遂げております。その殆どが中央に布陣していた部隊の者ですので、大半が亜人族の奇襲によるものと断定できます」
「そうか…魔法師団の生き残りは何名だ?」
「全員の生死はまだ把握できておりませんが、生き残りは3名です。その内の1人は魔法師団団長ですが…現在も治療中でいつ亡くなってもおかしくない状態だそうです。残りの2人の傷は軽微で明日の戦線にも復帰は可能だと聞いております」
「カリーナが……報告ご苦労。部隊の再編成の前に皆に聞いておきたいことがある。──明日も亜人族は出てくると思うか?」
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。
だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。
互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。
ハッピーエンド
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/03/02……完結
2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位
2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位
2023/12/19……連載開始
東京ダンジョン物語
さきがけ
ファンタジー
10年前、世界中に突如として出現したダンジョン。
大学3年生の平山悠真は、幼馴染の綾瀬美琴と共に、新宿中央公園ダンジョンで探索者として活動していた。
ある日、ダンジョン10階層の隠し部屋で発見した七色に輝く特殊なスキルストーン。
絶体絶命の危機の中で発動したそれは、前代未聞のスキル『無限複製』だった。
あらゆる物を完全に複製できるこの力は、悠真たちの運命を大きく変えていく。
やがて妹の病を治すために孤独な戦いを続ける剣士・朝霧紗夜が仲間に加わり、3人は『無限複製』の真の可能性に気づき始める。
スキルを駆使して想像を超える強化を実現した彼らは、誰も到達できなかった未踏の階層へと挑んでいく。
無限の可能性を秘めた最強スキルを手に、若き探索者たちが紡ぐ現代ダンジョンファンタジー、ここに開幕!
チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます――
金さえあれば人生はどうにでもなる――
そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。
交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。
しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。
だがその力は、本来存在してはいけないものだった。
知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。
その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在――
「世界を束ねる管理者」
神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。
巻き込まれたくない。
戦いたくもない。
知里が望むのはただ一つ。
金を稼いで楽して生きること。
しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。
守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。
金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる
巻き込まれ系異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。
リョウ
ファンタジー
何者かになりたかった。
だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。
そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。
導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。
冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。
目指すのは、ただ生き延びることではない。
一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。
渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ダークファンタジー成り上がり譚。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる