おちゆく先に

目日

文字の大きさ
97 / 126

96話

しおりを挟む
翌日、幸いにもフェイシル王国とバルクド帝国の戦端は開かれなかった。
これ幸いとローレンは部隊の再編を行い。バルクド帝国側へと偵察を送り込んだ。

結局再び戦端が開かれたのは、更に翌々日のことだった。




「思っていたよりも立て直しが早かったな。予想ではもう少しかかると思っていたのだが…」

「ローレンさん一応義理でここまで付き合っていますが、亜人が現れたら俺は戦線を離脱しますからね。またノコノコと現れたらあのトカゲ共を根絶やしにしてやる」

禍々しい鎧を身に纏ったジグレイドからはあたかも黒いオーラが滲み出てきているかと錯覚してしまうほどの怒気を発していた。

「出来れば剛鬼との戦いに参加して欲しいがな。こればっかりは強要できないからな。だが元師匠としてこれだけは言っておくぞ。絶対に師匠より先に死ぬな。先に死ぬ弟子ほど師不幸者は居らぬからな」

「なんですか師不幸者って…でもまぁ、ローレンさんよりは先に死ぬ予定は有りませんよ」

「なら安心できるというものだ。なんにせよ、この戦が終わるまで亜人族が出てこないことを祈るしかないな。ジグには悪いがな」

そして数刻後に両軍が衝突した。




始めは相も変わらず突撃してくるバルクド帝国軍を相手にフェイシル王国軍は常策である誘い込みや機動力を生かした奇策などで被害を極力出さずに敵の数を減らせるだけ減らしていっていた。
だがもちろんバルクド帝国側もそう簡単にはいかない。
剛鬼ことログ・ハイローが大軍を伴い突撃してきたのだ。
もちろんこれを予想というよりも当然してくるだろうと剛鬼対策として用意していた策を次々に繰り出すが、やはり剛鬼の突撃を止められる筈もなく、ついに両軍がまともに衝突したのだった。



「三日振りか?またこうして相見える事が出来て嬉しいぞ。ローレン将軍」

「貴殿はまだ若いから良いが、こちらはもう歳だ。貴殿とのじゃれ合いはもうこれで最後になるだろう。これまでは互いにトドメは刺さずにここまできたが…今回ばかりは見逃さぬ。覚悟は出来ておるか?」

「ふっ、確かにな。これまで随分長い間戦い己が武をぶつけ合ってきた…これで最後となると感慨深いものがある。──ところで横にいるのが弟子か?足手まといであっさり終わらぬことを期待したいものだ」

ローレンの横に立っていたジグレイドをログは一瞥してすぐさまローレンへと視線を戻した。

「ログ将軍よ、あまり弟子を甘く見ない方がいいぞ?──そろそろ……やるとしようかの!」

その言葉と同時にローレンが仕掛けた。
一気に間合いを詰め剣で鋭い突きを放った。

だが予想していたのか、ログは冷静に横に移動しつつ大剣を横薙ぎで振り抜いた。

薙ぎ払われる大剣は風を巻き込みながらローレンへと迫るが、ローレンは勢いのまま前転して地面に転がり薙ぎ払いを避ける。
そしてすぐさまログへと追撃を仕掛けようとするが、振り返った時にはすでにログは横に薙ぎ払った筈の大剣を上段に構えており、振り下ろしている最中だった。

すぐさま横に跳びのき難を逃れる。
そして今度こそ追撃を仕掛ける。
老いを感じさせない程の連続斬りを繰り出す。
しかしいつのまにか手元に引き寄せていた大剣で全てを弾かれるが、そんなこと気にもとめず流れるような剣撃を繰り出し続ける。
観る人によっては剣舞を舞っているかのような剣撃だが、生憎ローレンの剣撃が目に見えない程の速さで行われているため周囲には金属同士のぶつかり合う音でしか様子を窺い知ることはできなかった。

だが何十と繰り出した剣撃もログに全て弾かれてしまっていた。

そして一息つくためか両者は同じタイミングで距離を取った。
ちなみに両者が切り結んでいたのは僅か十数秒のことである。
本人同士の間隔は間違いなくその何十倍もの長い間戦っていたと錯覚しているはずだが。



「ふう、流石に疲れる。毎度の事だがあれだけ斬りつけたというのに簡単に全てを弾くとはな…敵ながら天晴れだぞ」

「ふっ、何を言う。此方も必死に防いでいるだけだ。ところでそろそろ参戦してくるのだろう?貴公の弟子となれば強いのだろう?楽しませてもらうとしよう」

「ローレンさん、少しの間この赤鎧さんと一対一でやらせてくれないか?もちろん危なかったら助太刀してくれて構わない」

「ジグレイド!?いきなり何を言うのだ!此奴は確実にやらねばフェイシル王国に勝ちはないぞ!」

「トカゲ共を殺す為にも少しでも強くならないといけないからな…。弟子としての最後の頼みだ、聞き入れてくれ」

「……仕方ない。だが無理だと判断したらすぐさま参戦する。それまで私は休憩していよう」

「流石に噂に名高い剛鬼さんの相手となると俺も出し惜しみはできないな…悪いが初めから全力でやらせてもらう。───ローレンさん、あと数メルだけ離れていてくれ」

少しだけ距離を取っていたローレンにまだ下がるように言った。
ローレンが立っていた場所は全力を出した時の領域内だったためだ。

「ふっ、出し惜しみなぞしていたならすぐに真っ二つにしていたところだ。少しは楽しませてくれるのだろうな?」

そう問われたジグレイドはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「もちろんだ。になるくらい楽しませてやるよ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。 だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。 互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。 ハッピーエンド 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/03/02……完結 2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位 2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位 2023/12/19……連載開始

東京ダンジョン物語

さきがけ
ファンタジー
10年前、世界中に突如として出現したダンジョン。 大学3年生の平山悠真は、幼馴染の綾瀬美琴と共に、新宿中央公園ダンジョンで探索者として活動していた。 ある日、ダンジョン10階層の隠し部屋で発見した七色に輝く特殊なスキルストーン。 絶体絶命の危機の中で発動したそれは、前代未聞のスキル『無限複製』だった。 あらゆる物を完全に複製できるこの力は、悠真たちの運命を大きく変えていく。 やがて妹の病を治すために孤独な戦いを続ける剣士・朝霧紗夜が仲間に加わり、3人は『無限複製』の真の可能性に気づき始める。 スキルを駆使して想像を超える強化を実現した彼らは、誰も到達できなかった未踏の階層へと挑んでいく。 無限の可能性を秘めた最強スキルを手に、若き探索者たちが紡ぐ現代ダンジョンファンタジー、ここに開幕!

チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます―― 金さえあれば人生はどうにでもなる―― そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。 交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。 だがその力は、本来存在してはいけないものだった。 知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。 その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在―― 「世界を束ねる管理者」 神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。 巻き込まれたくない。 戦いたくもない。 知里が望むのはただ一つ。 金を稼いで楽して生きること。 しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。 守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。 金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる 巻き込まれ系異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ダークファンタジー成り上がり譚。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処理中です...