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97話
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ジグレイドはひとつ深呼吸をして対峙しているログの正面へと歩みを進めた。
「ここは年長者として先手は譲るべきかな?だが手加減などは一切せん。死にたくなければ……初めから全力でこい!」
先ほどまでの雰囲気とは違い荒々しい威圧感を放ち出したログにジグレイドは嫌な汗が噴き出していた。
「流石に死ぬのは嫌なので、助言にしたがいますよ」
そう言ってジグレイドは全力で大気中の魔素を吸収し、身体強化魔法を全力で行使した。
その際、魔法の行使と連動して領域が展開される。
もちろん一番近くにいるローレンは領域外である。
「ほう、中々の威圧感じゃないか。だが……む!?なんだ?」
ジグレイドの領域は無色で無臭だがログの直感はそれすらも看破したが、この直感は何か身の危険があるとしか分からないため、どんな危険が迫っているかは目視で確認しないといけないという欠点があった。
ジグレイドの強さ的にはログに勝てる見込みは万にひとつもないだろう。
だが猛毒で弱らせ続ければハヌマエンの時のようにいつかはログも倒れるかもしれない。
しかしジグレイドはそんな事は許容できなかった。
いくら猛毒があるといっても相手が強者であればあるほどその効き目は悪く、効果を現すまでの時間が長くなるのだ。
憎っくき龍人族を倒すためには領域内に敵を留めながら敵の攻撃を防ぎ続けなけらばならない。
そのための練習として剛鬼はうってつけだった。
今のジグレイドでは恐らく防戦一方になることは自身も分かっているが、剛鬼の猛攻を防ぎ続けれるならば、あの龍人族の攻撃も防げるのではないかと考えたのである。
「はぁあああああ!」
ジグレイドは大剣にも見える短槍を肩に担ぎ、丸盾を正面に構えて突進した。
普通であれば横に避けたりするのだろう、だが剛鬼は普通の兵士ではなかった。
その常人離れした怪力を活かして大剣を丸盾に振るったのだ。
両軍の戦いが数秒だけだが止まった。
別に一騎討ちを観戦し始めたわけではない。
だが両雄の衝突によるあまりの轟音に手を止めざるを得なかったのである。
突進したにもかかわらずジグレイドは後退させられていた。
ログの振るった横薙ぎのあまりの威力にジグレイドは軽く浮かされ後ろに飛ばされたのである。
「ぐっ…流石剛鬼と言った方がいいのか?まさか突っ込んだ俺が弾き返されるとは思わなかった」
「ふっ、そう言う貴公も中々やるじゃないか。まさか俺の全力の攻撃をその程度の被害で済ませているのだからな。素直に賞賛に値する。もし貴公があと十数年早く生まれていたのならば、良きライバルになっていただろう。それ故に実に惜しい…」
「なんだ?もう既に勝った気か?戦いはまだまだこれからだろう?」
「貴公ほどであれば実力の差は先ほどの衝突で分かると思ったのだがな…俺の思い込みだったかな?」
ログは敢えてジグレイドを挑発していた。
今もなお自分に訴えかけてきている直感がジグレイドの何に危険を感じ取っているのかが未だに分からなかったからだ。
「そうだな…言われなくても分かっているさ。だがな!それでもこっちには引けない理由があるんだよ!だから…俺の踏み台となれ!剛鬼!」
目にも止まらぬ速度で接近し、斬りつけるがログには通じず、普通に防がれ反撃を受ける。
そして容赦のない追撃を仕掛けてくるログにジグレイドは丸盾と短槍を駆使して必死の防御を繰り広げる。
ジグレイドは防戦一方で攻撃をする暇すらない。
そして遂にログの攻撃をモロに受けてしまった。
幸い受けたものは大剣ではなく太い足での蹴りだったのだが、それでもジグレイドは数十メル程蹴り飛ばされてしまった。
「───ぐぁっ!」
蹴り飛ばされ地面をゴロゴロと転がった。
そしてジグレイドはやってしまった!と焦った。
なにせ今もなお領域は発動しているのである。
むしろ全力で身体強化魔法を行使していなかったらジグレイドは先ほどの蹴りで内臓が破裂して動けなくなっていただろう。
それほどまでの蹴りだった。
「手を出すな!此奴は俺の相手だ!」
そう言って剛鬼は大剣を振り下ろしてきた。
そしてその言葉にジグレイドは飛ばされたのがフェイシル王国軍側ではなく、バルグド帝国軍側だということに気づき安堵した。
だが直ぐに自身に大剣が迫ってきていることを思い出し、なんとか回避しようと地面を更に転がった。
大剣を振り下ろしたログは違和感に気がついた。
普段であれば目の前の相手から気をそらす事はなくひたすら敵を攻撃し続けるのだが、この時ばかりは直感が周りを見ろと訴えかけてきていたのだ。
そして未だに地面を転がっているジグレイドから視線を逸らし一瞬だけ周りを見てみると、思いもよらない光景が広がっていた。
周囲十数メルにいる味方は軒並み血を吐いて倒れ伏しており、範囲内に無事に立っている味方はいなかった。
「一体何が起きた……」
目の前に敵がまだいることも忘れログは味方に歩み寄ろうとした。
そしてそれが致命的な隙となった。
「ここは年長者として先手は譲るべきかな?だが手加減などは一切せん。死にたくなければ……初めから全力でこい!」
先ほどまでの雰囲気とは違い荒々しい威圧感を放ち出したログにジグレイドは嫌な汗が噴き出していた。
「流石に死ぬのは嫌なので、助言にしたがいますよ」
そう言ってジグレイドは全力で大気中の魔素を吸収し、身体強化魔法を全力で行使した。
その際、魔法の行使と連動して領域が展開される。
もちろん一番近くにいるローレンは領域外である。
「ほう、中々の威圧感じゃないか。だが……む!?なんだ?」
ジグレイドの領域は無色で無臭だがログの直感はそれすらも看破したが、この直感は何か身の危険があるとしか分からないため、どんな危険が迫っているかは目視で確認しないといけないという欠点があった。
ジグレイドの強さ的にはログに勝てる見込みは万にひとつもないだろう。
だが猛毒で弱らせ続ければハヌマエンの時のようにいつかはログも倒れるかもしれない。
しかしジグレイドはそんな事は許容できなかった。
いくら猛毒があるといっても相手が強者であればあるほどその効き目は悪く、効果を現すまでの時間が長くなるのだ。
憎っくき龍人族を倒すためには領域内に敵を留めながら敵の攻撃を防ぎ続けなけらばならない。
そのための練習として剛鬼はうってつけだった。
今のジグレイドでは恐らく防戦一方になることは自身も分かっているが、剛鬼の猛攻を防ぎ続けれるならば、あの龍人族の攻撃も防げるのではないかと考えたのである。
「はぁあああああ!」
ジグレイドは大剣にも見える短槍を肩に担ぎ、丸盾を正面に構えて突進した。
普通であれば横に避けたりするのだろう、だが剛鬼は普通の兵士ではなかった。
その常人離れした怪力を活かして大剣を丸盾に振るったのだ。
両軍の戦いが数秒だけだが止まった。
別に一騎討ちを観戦し始めたわけではない。
だが両雄の衝突によるあまりの轟音に手を止めざるを得なかったのである。
突進したにもかかわらずジグレイドは後退させられていた。
ログの振るった横薙ぎのあまりの威力にジグレイドは軽く浮かされ後ろに飛ばされたのである。
「ぐっ…流石剛鬼と言った方がいいのか?まさか突っ込んだ俺が弾き返されるとは思わなかった」
「ふっ、そう言う貴公も中々やるじゃないか。まさか俺の全力の攻撃をその程度の被害で済ませているのだからな。素直に賞賛に値する。もし貴公があと十数年早く生まれていたのならば、良きライバルになっていただろう。それ故に実に惜しい…」
「なんだ?もう既に勝った気か?戦いはまだまだこれからだろう?」
「貴公ほどであれば実力の差は先ほどの衝突で分かると思ったのだがな…俺の思い込みだったかな?」
ログは敢えてジグレイドを挑発していた。
今もなお自分に訴えかけてきている直感がジグレイドの何に危険を感じ取っているのかが未だに分からなかったからだ。
「そうだな…言われなくても分かっているさ。だがな!それでもこっちには引けない理由があるんだよ!だから…俺の踏み台となれ!剛鬼!」
目にも止まらぬ速度で接近し、斬りつけるがログには通じず、普通に防がれ反撃を受ける。
そして容赦のない追撃を仕掛けてくるログにジグレイドは丸盾と短槍を駆使して必死の防御を繰り広げる。
ジグレイドは防戦一方で攻撃をする暇すらない。
そして遂にログの攻撃をモロに受けてしまった。
幸い受けたものは大剣ではなく太い足での蹴りだったのだが、それでもジグレイドは数十メル程蹴り飛ばされてしまった。
「───ぐぁっ!」
蹴り飛ばされ地面をゴロゴロと転がった。
そしてジグレイドはやってしまった!と焦った。
なにせ今もなお領域は発動しているのである。
むしろ全力で身体強化魔法を行使していなかったらジグレイドは先ほどの蹴りで内臓が破裂して動けなくなっていただろう。
それほどまでの蹴りだった。
「手を出すな!此奴は俺の相手だ!」
そう言って剛鬼は大剣を振り下ろしてきた。
そしてその言葉にジグレイドは飛ばされたのがフェイシル王国軍側ではなく、バルグド帝国軍側だということに気づき安堵した。
だが直ぐに自身に大剣が迫ってきていることを思い出し、なんとか回避しようと地面を更に転がった。
大剣を振り下ろしたログは違和感に気がついた。
普段であれば目の前の相手から気をそらす事はなくひたすら敵を攻撃し続けるのだが、この時ばかりは直感が周りを見ろと訴えかけてきていたのだ。
そして未だに地面を転がっているジグレイドから視線を逸らし一瞬だけ周りを見てみると、思いもよらない光景が広がっていた。
周囲十数メルにいる味方は軒並み血を吐いて倒れ伏しており、範囲内に無事に立っている味方はいなかった。
「一体何が起きた……」
目の前に敵がまだいることも忘れログは味方に歩み寄ろうとした。
そしてそれが致命的な隙となった。
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