108 / 126
107話
しおりを挟む
フェイシル王国軍 後陣
「くそっ!まだ決着はつかないのか!?例年であればすでに終わっているだろう!」
例年よりも長引く戦争にボダホン侯爵は自分の責任だというのに周囲に当たり散らしていた。
実際にはボダホン侯爵だけのせいではない。
バルクド帝国側の総指揮官が皇帝アルザーンだという事もあり互いが退かない泥沼の戦と成り果てているのである。
「あのローレンの弟子とかいうのは何をやっているのだ!吾の命令を無視して逃げたのではあるまいな!くそっ!くそっ!くそっ!」
自分は後陣で戦場とは思えない程の贅沢な食事を食べお気に入りの女を侍らせて過ごしているというのに碌な作戦も考えず兵士や組合員には突撃の命令と絶対に退くなと命令するだけ、まさに暗愚といえた。
総指揮官がこんななのにバルクド帝国に対して優勢でいられるのは敵も似たような暗愚であること、そして兵士の練度の差でしかなかった。
バルクド帝国軍はただ槍を構えて突撃してくるだけに対してフェイシル王国軍は生き残る為に命令を受けずとも強襲、挟撃、夜襲、罠とありとあらゆる手を尽くして戦っている。
そのお陰もあってかギリギリ優勢を保てていたのである。
逆にそこまでしないと三倍という数の暴力に耐えられないということでもあった。
すでにバルクド帝国軍は約15000もいた兵が5000を少し超える程度まで減っていた。
しかしフェイシル王国軍の被害もかなりの数となっていた。
約5000が1500程度にまでなっていたのだ。
むしろこの程度の被害で済んでいることが奇跡に等しかった。
それもあと数日の辛抱なのだが、この事を知っているのはただ一人しかいなかった。
バルクド帝国軍 中陣
「なに!?皇帝陛下との連絡が途絶えただと!?まさか勝手に帰ったとかではあるまいな!」
「い、いえ…アルザーン陛下だけではなく後陣自体からの連絡が途絶えております」
「ちっ!余計な手間を増やしやがって!おい、そこのお前!後陣へ行き何が起きたのか確かめてこい!」
「は、はい!」
中陣で指揮を取っている貴族はイライラしながら先日届いた食料にかぶりついた。
それが命取りになるとは思いもせずに…。
後陣の様子見を命じられた兵士は馬を走らせていた。
時はすでに夕刻でありもう間も無く真っ暗な夜となる為、急ぎ後陣へと向かう必要があったのである。
そんな道中で前方から歩いてくる人影が見えた。
この道は一直線で先にはバルクド帝国軍が使用している後陣しかない。
歩いてきている人物は何かしらの情報を持っているだろうと、馬を近くに寄せて話を聞くことにした。
「いくつか尋ねたい事がある。よろしいか?」
「おや?どうしました?俺は今、後陣から
中陣へと向かっている最中なんですが」
「そうか、あんたは後陣から来たんだな?では尋ねたい事がある。後陣の様子はどんな感じだ?」
「あー、なるほど。連絡が途絶えたのが気掛かりなんでしょう?」
「そうだ、何か知っているのか!?」
「そうですね、簡単に説明すると皇帝陛下が飽きて兵士を連れて帰っちゃったんですよ。それで混乱回避のため傭兵の俺が中陣へとこの情報を伝えようと向かってたとこなんですよ。貴方に伝えたので俺の役目は終わったとみてもいいですかね?」
「そ、そんなバカな…。戦を途中で投げ出しただと…?陛下は何を考えていらっしゃるのだ」
「何も考えていないのでは?」
「うぐっ…そう言われても仕方ないようだな。情報感謝する。急ぎこの情報を伝えなくてはならないので私は先に失礼する!」
そう言うと兵士は馬に跨り中陣へと走り去っていった。
残された傭兵であるジグレイドはあまりの無警戒さに呆れ果てていた。
「もう少し疑うとかないのか?あんな情報普通信じないだろ…。むしろ信じてしまうほどあいつは無能だったってことか?まぁどうでもいいか。あと数日もすれば全員死ぬんだから」
ジグレイドはほくそ笑みながら中陣へと向かうのだった。
「くそっ!まだ決着はつかないのか!?例年であればすでに終わっているだろう!」
例年よりも長引く戦争にボダホン侯爵は自分の責任だというのに周囲に当たり散らしていた。
実際にはボダホン侯爵だけのせいではない。
バルクド帝国側の総指揮官が皇帝アルザーンだという事もあり互いが退かない泥沼の戦と成り果てているのである。
「あのローレンの弟子とかいうのは何をやっているのだ!吾の命令を無視して逃げたのではあるまいな!くそっ!くそっ!くそっ!」
自分は後陣で戦場とは思えない程の贅沢な食事を食べお気に入りの女を侍らせて過ごしているというのに碌な作戦も考えず兵士や組合員には突撃の命令と絶対に退くなと命令するだけ、まさに暗愚といえた。
総指揮官がこんななのにバルクド帝国に対して優勢でいられるのは敵も似たような暗愚であること、そして兵士の練度の差でしかなかった。
バルクド帝国軍はただ槍を構えて突撃してくるだけに対してフェイシル王国軍は生き残る為に命令を受けずとも強襲、挟撃、夜襲、罠とありとあらゆる手を尽くして戦っている。
そのお陰もあってかギリギリ優勢を保てていたのである。
逆にそこまでしないと三倍という数の暴力に耐えられないということでもあった。
すでにバルクド帝国軍は約15000もいた兵が5000を少し超える程度まで減っていた。
しかしフェイシル王国軍の被害もかなりの数となっていた。
約5000が1500程度にまでなっていたのだ。
むしろこの程度の被害で済んでいることが奇跡に等しかった。
それもあと数日の辛抱なのだが、この事を知っているのはただ一人しかいなかった。
バルクド帝国軍 中陣
「なに!?皇帝陛下との連絡が途絶えただと!?まさか勝手に帰ったとかではあるまいな!」
「い、いえ…アルザーン陛下だけではなく後陣自体からの連絡が途絶えております」
「ちっ!余計な手間を増やしやがって!おい、そこのお前!後陣へ行き何が起きたのか確かめてこい!」
「は、はい!」
中陣で指揮を取っている貴族はイライラしながら先日届いた食料にかぶりついた。
それが命取りになるとは思いもせずに…。
後陣の様子見を命じられた兵士は馬を走らせていた。
時はすでに夕刻でありもう間も無く真っ暗な夜となる為、急ぎ後陣へと向かう必要があったのである。
そんな道中で前方から歩いてくる人影が見えた。
この道は一直線で先にはバルクド帝国軍が使用している後陣しかない。
歩いてきている人物は何かしらの情報を持っているだろうと、馬を近くに寄せて話を聞くことにした。
「いくつか尋ねたい事がある。よろしいか?」
「おや?どうしました?俺は今、後陣から
中陣へと向かっている最中なんですが」
「そうか、あんたは後陣から来たんだな?では尋ねたい事がある。後陣の様子はどんな感じだ?」
「あー、なるほど。連絡が途絶えたのが気掛かりなんでしょう?」
「そうだ、何か知っているのか!?」
「そうですね、簡単に説明すると皇帝陛下が飽きて兵士を連れて帰っちゃったんですよ。それで混乱回避のため傭兵の俺が中陣へとこの情報を伝えようと向かってたとこなんですよ。貴方に伝えたので俺の役目は終わったとみてもいいですかね?」
「そ、そんなバカな…。戦を途中で投げ出しただと…?陛下は何を考えていらっしゃるのだ」
「何も考えていないのでは?」
「うぐっ…そう言われても仕方ないようだな。情報感謝する。急ぎこの情報を伝えなくてはならないので私は先に失礼する!」
そう言うと兵士は馬に跨り中陣へと走り去っていった。
残された傭兵であるジグレイドはあまりの無警戒さに呆れ果てていた。
「もう少し疑うとかないのか?あんな情報普通信じないだろ…。むしろ信じてしまうほどあいつは無能だったってことか?まぁどうでもいいか。あと数日もすれば全員死ぬんだから」
ジグレイドはほくそ笑みながら中陣へと向かうのだった。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。
だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。
互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。
ハッピーエンド
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/03/02……完結
2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位
2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位
2023/12/19……連載開始
東京ダンジョン物語
さきがけ
ファンタジー
10年前、世界中に突如として出現したダンジョン。
大学3年生の平山悠真は、幼馴染の綾瀬美琴と共に、新宿中央公園ダンジョンで探索者として活動していた。
ある日、ダンジョン10階層の隠し部屋で発見した七色に輝く特殊なスキルストーン。
絶体絶命の危機の中で発動したそれは、前代未聞のスキル『無限複製』だった。
あらゆる物を完全に複製できるこの力は、悠真たちの運命を大きく変えていく。
やがて妹の病を治すために孤独な戦いを続ける剣士・朝霧紗夜が仲間に加わり、3人は『無限複製』の真の可能性に気づき始める。
スキルを駆使して想像を超える強化を実現した彼らは、誰も到達できなかった未踏の階層へと挑んでいく。
無限の可能性を秘めた最強スキルを手に、若き探索者たちが紡ぐ現代ダンジョンファンタジー、ここに開幕!
チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます――
金さえあれば人生はどうにでもなる――
そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。
交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。
しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。
だがその力は、本来存在してはいけないものだった。
知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。
その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在――
「世界を束ねる管理者」
神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。
巻き込まれたくない。
戦いたくもない。
知里が望むのはただ一つ。
金を稼いで楽して生きること。
しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。
守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。
金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる
巻き込まれ系異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。
リョウ
ファンタジー
何者かになりたかった。
だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。
そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。
導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。
冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。
目指すのは、ただ生き延びることではない。
一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。
渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ダークファンタジー成り上がり譚。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる