一日一回シないと死んじゃう妖精の私が、人質になってしまいました。~救命はエッチ? いじわるな准将様に見張られて~

夢沢とな

文字の大きさ
7 / 116

6話 妖精の羽の秘密

しおりを挟む
 

「つ、妻は、黒魔女なのです」

仮面で表情のわからないエリアス様。だけどその様子は、怯えているようにもみえる。

「妻の名はキェーマ、旧姓をウィッチランドといいます。四年前、子供ができたと言われて婚姻関係を結びましたが、実は大嘘でした」
ほえぇ。一国の王様にそんなことがあっていいのだろうかと思って、私はききかえした。
「……もしかして、魔術でだまされてしまったとかですか?」
フェアリーアイランドにもそういういたずらな魔法薬があるから。お姉様が使っ……こほん、なんでもないです。
「いえ、口頭でいわれて信じてしまいました」
ずこー。
「しかも当時、彼女には恋人がいたのに……」
「可哀想ですね、その恋人の方」
「…………」
 エリアス様が黙る。ゼイツ准将が咳払いした。

……?

「……まあ、つまり、僕は愛されていないのです。妻はパレスで愛人たちに囲まれて暮らしています」
なんだか可哀想だなぁ、エリアス様。

ゼイツ准将が背もたれに寄りかかる。彼のお皿は全て空になっていた。食べるのはや。

イークアル公国の王であるエリアス様と、チュウリッツー連邦の准将であるゼイツ様。顔を殴ったくらいではびくともしない間柄みたい。私は二人をちらりと見た。それに答えるようにエリアス様が教えてくれる。

「彼とは中等部から付き合いがありましてね。僕の黒歴史もよく知ってると思います。大きな借りもありますし、頭があがらないですね。……まあ、殴っておいてなんですけど」
「ふふふっ」
私は口に手をそえて笑った。
「なんて美しい笑い声だ」
エリアス様が耳を傾けた。
「ところでフェルリナ姫、うしろをふりむいてみてはくださいませんか? 僕からささやかな贈り物がございます」

入口ドアがあいて、私はふりむいた。えっ、いつからいたの? という人たちが大型トランクや布生地を抱えてどやどやと入ってきて、階段へ向かう。

「ドレス、シューズ、ジュエリー、その他新調しました家具もございます」
「あ……ありがとうございます」

「王様ぁ、五階に入りきらない分はどうしやしょう」と従者がきく。
「四階の倉庫に置いてくれ」

四階が倉庫よばわりされている。私はゼイツ准将の顔色をうかがった。彼は脚を組んで端末をいじっているだけで、全然気にしていなかったけど、私に気づいて顔をあげた。
「あ? なんだ?」
「い、いえ」
顔をあげたついでにゼイツ准将は言った。
「后は会わないと思うけどな」
「?」
「僕もそう思います」
とエリアス様はテーブルの上で手を組んだ。
「挨拶をさせようとしても、いうことをきかないでしょう。全て僕の不徳の致すところですが、どうぞフェルリナ姫は五階でお休みになっていてください」


     * * *

部屋で一人、鏡の前でドレスを着てみていると、

「フェルリナ、何の音だ?」

とゼイツ准将が言った。私はびっくりしてふりかえった。ノ、ノックしたっけ?

「はいっ? なんですか?」
「いや……コツコツ音がするから」

彼は私の履いているクリスタルのヒール靴に視線を落とし、着ているチュールのミニドレスを見て、
「目立ってしょうがないな」
と片眉を寄せる。
「もっと町村向きのないのか」
「町に行くんですか?」
「町も行きたいなら行ってもいいが、俺、あの草見たことある気がするんだよ」
「えっ」

私は目を丸くして、ゼイツ准将に向き直った。

「案外その辺に生えてるんじゃないか? 探しに行ってみるか?」

私は一気にうなずいた。
「行きたいです!」
「なら、まず羽を隠さねえと……、ん」

ゼイツ准将が気づいた。私の背中に羽がないことに。

「フェルリナ、羽がなくないか?」
「羽しまえるんです」
「そうなのか!?」

おしゃれに余念のないお姉様方は、人間のドレスも大好きだ。よって羽をしまい試着するんだけど、しまっていられる時間は個体差がある。一番長いのは三女のインライお姉様で、世界中に二百人彼氏がいてあちこち旅行しているから、ほとんどしまいっぱなしみたい。

「どうやってしまってるんだ?」
「……ある部分に力を入れて締めつけるんです」
「ある部分ってどこだ?」
「私にもわかりません。奥の方です」

私は無意識に下半身を指さしていた。

「そういや昨日も羽縮んだ気がするぞ」
「昨日?」
「……。いや、なんでもね」

ゼイツ准将があごを掻いて天井に目をやる。

「それやれば町歩けるんだな」
「ざんねんながら私は十分くらいしかできないんです。お姉様はもっとできるんですけど」

言っているそばから、背中に羽が戻ってきて私は自分の体を抱いた。

「ドレス脱ぎたいので、あの……」
「ああ悪い。んで、ドレス着る時、羽はどうするんだ?」
「エリアス様がテイラーを呼んでくださるそうです」
「そうか。じゃあ外で待ってる」

ゼイツ准将が部屋を出ていき、私はドレスを脱いだ。自前のワンピースを被って、羽を出す。ゼイツ様、意外と羽のことに興味があるんだな。驚いてた顔がおもしろかった。ふふ。

五階から飛びおりられるって知ったら、もっと驚くかな?

羽を隠すためのローブを探しだして、それを持って私は腰窓に足をかけた。窓枠を掴んで外へジャンプ! 羽を広げて、ふんわりと落ちていき、芝生へ着地した。えへへ、空は飛べないけど、パラシュートにはなるんです。

「うおっ。なんでいるんだ」

塔から出てきたゼイツ准将に、私はクスクスと笑った。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!

奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。 ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。 ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日

プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。 春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件

楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。 ※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

処理中です...