28 / 116
ドライヴランド編
27話 オンチ鳥vsフェルリナ
しおりを挟む※暴力的シーンがあります。ご注意くださいませ。
ペーター・ペペ・ピクシーアイランドは私の幼馴染で許嫁だった。
たくさんいじわるされて大嫌いだったけど、
今日の私は彼に感謝しなくちゃならない。
バトルだとか戦法について毎日聞かされていたおかげで、
それがいつしか私の中で蓄積されていたのだ。
「起きろー! 起きんかー若ぼうず~~!」
湖畔に戻ってくると、オンチドードーもゼイツ准将もまだそこにいた。良かった、連れて行かれてなかった。オンチドードーは私を追うどころか、蜂蜜を嫌がって毛づくろいしていた。
准将は未だ寝た状態で、その彼を起こそうとしてツリービアードが叫んでいる。
待っててゼイツ准将……! 今助けるから!
私の手には剣の代わりの、とがった枝がある。
彼らからすると、枝だけが宙に浮かんでいるように見えるはずだ。
体の後ろに隠したところで、真っ裸の透明だから透けちゃうんだ。
ツリービアードに見つかって騒がれないよう、木立にひそみながら、私はオンチ鳥へ忍び寄った。
ごくり……。
人でもあり、鳥でもあるオンチドードーの無防備な後ろ姿。
いざ背後に立つと私は二の足を踏んだ。
生き物に危害を加えるなんて、やっぱり抵抗がある。
だけど……このままじゃゼイツ准将が連れて行かれちゃう。
か、彼を守るのよ、フェルリナ。
えいっ!
びっくりしたオンチ鳥がバッと半回転する。驚いた顔の、強烈なアイラインがまぬけに見える。
もう一度、えいっ!
また枝で突くとオンチ鳥は後ろへぴょんと跳んだ。一体何が攻撃してきたのかと、瞳孔がピント合わせをしている。
「ルウッ? ララッ?」
動揺してる。私が枝を振り上げると、気づいた彼女は翼をせわしなくはためかせながら、湖の水面を後ろ向きに走った。鳥がそんな事するの初めて見た。やはり頭脳は人間なのだ。
って感心してる場合じゃない。湖の上で空中静止されてしまい、私はどんぐりや石をつかんで彼女へ投げた。
私の翅ではとうてい真似できない芸当。いいな空飛べて!
「ララッ! お前フェアリーだな!」
オンチドードーが目の色を変えた。上昇していったかと思うと、こちらめがけて滑翔してきた。
逃げるからこわいんだ。立ち向かえばそうでもない。そうだよねお父様! つっこんでくる直前、私は枝先を彼女に向けて槍のように構えてみた。
ブアアッ ズキィンッ!!
くらった! オンチ鳥に枝がぶつかった。頭脳が人間なら、目玉も人間。鳥のような動体視力はなかったのだ。
だが私もくらった。衝撃に吹き飛ばされた。
ひゃああっ。
ベシャッと水辺に倒れた。
泥跳ねを浴び、慌てて四つ這いになって立ち上がる。自分の体がこげ茶色に形をなしていた。
「おのれ卑怯者のハエ虫がァ!!」
泥だらけで私は逃げ出した。ゼイツ准将の横を走り去った。
ツリービアードが私に気づいた。「お前さんなぜ戻って来たんじゃ!?」
「!!」
ブツッ
すぐに例の、ゼイツ准将を眠らせた羽根が飛んできたけど、それは私の背中の翅がはたき落としてくれた。
バシッ バシッ
続けざまにもう二回投げつけられた。オンチ鳥、相当ムキになっている。
だけどこれに当たって眠ってしまったら一巻の終わりだ。絶対に当たるわけにいかない。
「ハァ、ハァ、こわいッ、ひゃあっ……!?」
私の足が地面から離れた。
肩をつかまれて空へと急上昇していく。
「イヤッ!!」
「飛べないハエ虫ゴミ虫ゴミゴミゴミ♪ 落下して死ね!!」
ラップ歌ってる!
ビョオッ
と風が私の羽を凧のようにさらった。
大樹の樹冠にバッサリ受け止められ、枝葉の間を転がるようにして落ちる。
最後に羽のパラシュートで地面へ手をついた。
落下した場所は完璧な位置だった。まるで風が、森が、ジョニーが、私の味方してくれてるみたいに感じた。
私の目的は、私自身の手で彼女を倒そうとしている、オンチ鳥にそう思い込ませることだった。
卑怯な手を使って、相手の頭に血を昇らせることで、冷静な判断力を奪う。
ずる賢いピクシー族のペーターが教えてくれたことだった。
「やめてやめて来ないで!」
私は尻もちをついたまま後退した。
白濁した目を血走らせて、オンチ鳥が突撃してくる瞬間、
私はすぐそばの木の根ぐらに潜りこんだ。とっさに逃げ込んだように見せたそこは、土のトンネルになっていた。
「悪あがきしやがって!」
バサササッ 私を追ってオンチドードーが潜りこんできて光が遮られる。
ハァッ ハァッ 怖い。
行き止まりのカーブ地点で、土壁に身をよせ私はへたり込んだ。
「おね、おねがい……助けて……」
茶色い瞳が私を見ている。
「飛べないハエ虫♪ ゴミ虫♪」
オンチ鳥がすぐそこまで来ている。
「おねがい……たすけてぇ……」
のっそり起き上がった巨体が、その場で激しくドルルルルルルッと毛皮を震わせる。
そして、私の前をすり抜けていった。
「バウッ! ガウウッ!」
「!? ギャッ!! ギャアアアッ!!」
ここはホシカゲグマのねぐらだった。木々を透視して見つけておいたのだ。
熊は、妖精は食べない。
彼らの好物は、あなたの顔にべったりついたハチミツなの。
10
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日
プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。
春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件
楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。
※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。
一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。
その肩書きに恐れをなして逃げた朝。
もう関わらない。そう決めたのに。
それから一ヶ月後。
「鮎原さん、ですよね?」
「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」
「僕と、結婚してくれませんか」
あの一夜から、溺愛が始まりました。
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる