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ドライヴランド編
34話 ギブソンには要注意
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※演出上の、差別発言などがありますので苦手な方はご注意くださいませ。
ダシンッ、とテーブルにウェンディ大佐がこぶしを打ち、お皿と私が跳ねた。
「フェルルン頑張ったのに水差すようなこというなよ」
「それとこれとどう関係あんだよ?」
「ねえバカなの? 自分の胸に手を当ててよーく考えてごらんよ??」
「うるせーな何なんだよ」
「ハルに行った時よぉ」
店に入ってきた男が声をはりあげる。
「マグマ族目撃したんだけどよ、あいつら岩から手足が生えてんだよ。クッソ笑った」
私はふたたび男の方に気をとられた。
今、この人ハル大陸って言ったのかしら?
無法地帯のハル大陸は、足を踏み入れたら最期、帰ってこられない場所だと伝えきく。
この男性はそのハルへ行ってきたというのだろうか。
堂々たる骨格の、鍛えた体はゼイツ准将と似ている。
汚れたカットソーに傭兵パンツという身なり、
濡れたようなミディアムレングスの黒髪に、無精髭の似合うワイルドな顔立ちをしていて、
ここにいる全ての人に注目されなきゃ気が済まないという、そんなオーラを放っていた。
「よーうゼイツ! 敵に尻をむけまくる男!」
手の平をこすり合わせて彼は、私たちのテーブルに腰を乗せた。
主にゼイツ准将の方だけを向いて、ものほしそうに爪を噛む。
「戻ってたのか、会いたかったぜ」
「よう。あっち行ってろ」
ゼイツ准将があごをしゃくる。
「なんでだよ。なあゼイツ、マグマランドの奴ら見たことあるか? こんなんだぞ、こんなん」
男が手足をばたつかせておどけてみせる。
ひどい種族差別。
たぶんこの人だ。ウェンディ大佐が「ギブソンには要注意」って話してた、そのギブソン。
「お前誰だ?」
話しかけられて私は硬くなった。
「ギブソン、汚いケツどけてくれる?」
私を庇うようなタイミングで、
素早くウェンディ大佐がギブソンの触れている椅子を蹴る。
「弟が任務で連れてるだけ。ちょっかいかけないで」
「正確には弟じゃないだろ。はとこだったか? またいとこだったか?」
「どっちだっていいでしょ。あんたがアタシを〝義姉さん〟って呼ぶ日は来ないんだから、ハハハ」
ギブソンは厚い唇をつきだして指をあてた。
「調子づくなよ孤児。アバズレ女がドライヴの男に捨てられ、そいつが産み落として捨てたのがお前だろ。身の程を知れ」
心臓を貫くような悪口に、私は息を飲んだ。
こんなこと人に対して、面と向かって言うなんて……信じられない。
「あんたさ、その生まれどうこうで人を馬鹿にすんのやめたら? ピュアブラッドに生まれたこと以外に誇れることないわけ?」
ウェンディ大佐は特にカッとなるわけでもなく、腕を組んでいた。
「ハッ」
と、ギブソンは口を開けっぱなしにして嘲笑った。
「これ以上に誇れることがあるかってんだ。俺は前世で偉業を成し遂げた。その結果、こうやって恵まれた肉体に生まれついたんだ。今の人生をあーだこーだ嘆いてる奴はみんな、過去にどれだけ自分がショボかったかを忘れてるだけだ」
「今のあんたもじゅうぶんショボいよ? 頑張んないと来世は虫けらにでも生まれて、びーびー嘆くはめになるんじゃない」
ギブソンは肩をすくめた。
「虫も悪くないね。羽虫スケルトンの××××はぶっ飛ぶらしいな、もう試したのか? ゼイツ」
元よりウェンディ大佐との会話になど興味がない、そんな風にギブソンは照準をゼイツ准将の方へ戻す。
やはり蔑称で呼ばれた。そのあとのスラングは、すぐには理解できなかったけれど、
卑猥な中傷を受けたのだということがわかってくると、顔が熱くなっていった。
左前の席にいるゼイツ准将を見られなかった。
ウェンディ大佐が前へ指を鳴らした。
「あ? なんだ?」
「あんた今の聞いてた?」
「いや?」
「何ぼけっとしてんの」
「おめーが考えろっつったんだろが」
ゼイツ准将がしかめた眉を持ちあげて、我に返ったように私たちを見る。
「あとにして! ここ怒るとこだから!」
「わぁったよ。おいギブソン、今なんつったんだ」
「別に? ただス……」
ド
ウッッッ!!!
衝撃にひっくり返りそうになる私が見たものは、殴りかかったゼイツ准将の拳をよけたギブソンが体を回転させたところだった。
私の膝をウェンディ大佐が掴んだ。ギブソンが振り向きざまに宙に浮いた。長くて太い彼の脚が、ゼイツ准将の頭蓋を横倒しにし、二段目をお腹に叩き込んだ。
ゼイツ准将が吹き飛んだ。
ダシンッ、とテーブルにウェンディ大佐がこぶしを打ち、お皿と私が跳ねた。
「フェルルン頑張ったのに水差すようなこというなよ」
「それとこれとどう関係あんだよ?」
「ねえバカなの? 自分の胸に手を当ててよーく考えてごらんよ??」
「うるせーな何なんだよ」
「ハルに行った時よぉ」
店に入ってきた男が声をはりあげる。
「マグマ族目撃したんだけどよ、あいつら岩から手足が生えてんだよ。クッソ笑った」
私はふたたび男の方に気をとられた。
今、この人ハル大陸って言ったのかしら?
無法地帯のハル大陸は、足を踏み入れたら最期、帰ってこられない場所だと伝えきく。
この男性はそのハルへ行ってきたというのだろうか。
堂々たる骨格の、鍛えた体はゼイツ准将と似ている。
汚れたカットソーに傭兵パンツという身なり、
濡れたようなミディアムレングスの黒髪に、無精髭の似合うワイルドな顔立ちをしていて、
ここにいる全ての人に注目されなきゃ気が済まないという、そんなオーラを放っていた。
「よーうゼイツ! 敵に尻をむけまくる男!」
手の平をこすり合わせて彼は、私たちのテーブルに腰を乗せた。
主にゼイツ准将の方だけを向いて、ものほしそうに爪を噛む。
「戻ってたのか、会いたかったぜ」
「よう。あっち行ってろ」
ゼイツ准将があごをしゃくる。
「なんでだよ。なあゼイツ、マグマランドの奴ら見たことあるか? こんなんだぞ、こんなん」
男が手足をばたつかせておどけてみせる。
ひどい種族差別。
たぶんこの人だ。ウェンディ大佐が「ギブソンには要注意」って話してた、そのギブソン。
「お前誰だ?」
話しかけられて私は硬くなった。
「ギブソン、汚いケツどけてくれる?」
私を庇うようなタイミングで、
素早くウェンディ大佐がギブソンの触れている椅子を蹴る。
「弟が任務で連れてるだけ。ちょっかいかけないで」
「正確には弟じゃないだろ。はとこだったか? またいとこだったか?」
「どっちだっていいでしょ。あんたがアタシを〝義姉さん〟って呼ぶ日は来ないんだから、ハハハ」
ギブソンは厚い唇をつきだして指をあてた。
「調子づくなよ孤児。アバズレ女がドライヴの男に捨てられ、そいつが産み落として捨てたのがお前だろ。身の程を知れ」
心臓を貫くような悪口に、私は息を飲んだ。
こんなこと人に対して、面と向かって言うなんて……信じられない。
「あんたさ、その生まれどうこうで人を馬鹿にすんのやめたら? ピュアブラッドに生まれたこと以外に誇れることないわけ?」
ウェンディ大佐は特にカッとなるわけでもなく、腕を組んでいた。
「ハッ」
と、ギブソンは口を開けっぱなしにして嘲笑った。
「これ以上に誇れることがあるかってんだ。俺は前世で偉業を成し遂げた。その結果、こうやって恵まれた肉体に生まれついたんだ。今の人生をあーだこーだ嘆いてる奴はみんな、過去にどれだけ自分がショボかったかを忘れてるだけだ」
「今のあんたもじゅうぶんショボいよ? 頑張んないと来世は虫けらにでも生まれて、びーびー嘆くはめになるんじゃない」
ギブソンは肩をすくめた。
「虫も悪くないね。羽虫スケルトンの××××はぶっ飛ぶらしいな、もう試したのか? ゼイツ」
元よりウェンディ大佐との会話になど興味がない、そんな風にギブソンは照準をゼイツ准将の方へ戻す。
やはり蔑称で呼ばれた。そのあとのスラングは、すぐには理解できなかったけれど、
卑猥な中傷を受けたのだということがわかってくると、顔が熱くなっていった。
左前の席にいるゼイツ准将を見られなかった。
ウェンディ大佐が前へ指を鳴らした。
「あ? なんだ?」
「あんた今の聞いてた?」
「いや?」
「何ぼけっとしてんの」
「おめーが考えろっつったんだろが」
ゼイツ准将がしかめた眉を持ちあげて、我に返ったように私たちを見る。
「あとにして! ここ怒るとこだから!」
「わぁったよ。おいギブソン、今なんつったんだ」
「別に? ただス……」
ド
ウッッッ!!!
衝撃にひっくり返りそうになる私が見たものは、殴りかかったゼイツ准将の拳をよけたギブソンが体を回転させたところだった。
私の膝をウェンディ大佐が掴んだ。ギブソンが振り向きざまに宙に浮いた。長くて太い彼の脚が、ゼイツ准将の頭蓋を横倒しにし、二段目をお腹に叩き込んだ。
ゼイツ准将が吹き飛んだ。
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