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ドライヴランド編
36話 ジェラートと恋愛流儀
しおりを挟む「フレーバーどれがいい?」
♡桃とキウイ
♡チェリーとティラミス
♡マンゴーとココナッツ
「おっけ」
席に戻った私は、ふりかえってアイハーツ様の姿を探した。彼はカウンターにいる野球帽のおじさんと話していて、私と目が合うとさりげないウインクをくれた。
「なんか……せっかく……」
「うん?」
「特効薬がぶ飲みしてきたのに意味なかったです。お店壊しちゃって……」
「あはは! 気にすることないよ、しょっちゅうやってんだ」
ジェラートが来て、ウェンディ大佐がコーンを一周させ、こぼれ落ちそうなところからかぶりついた。
「あのー、ウェンディ様?」
「ん?」
「私に気を遣ってくれたん……ですよね? 精力剤効果が消えてるって、」
「いや消えてるよ?」
気休めではない口調だった。私は首をかしげた。
「少なくともアタシは感じない。ゼイツは分かんないんじゃない? あいつ、女の子を本気で好きになった事ないんだと思うわ」
急に話題が変わった気がして、私はちょっと考えてから話した。
「恋愛興味ないって言ってました」
「そんな事言ってた?」
「はい。でもそれって、キェーマ后のせいで諦めてるとかだったら、かわいそうだなって……」
「いやぁ、キェーマの後も恋人いたんだけどね。バカだけどモテるからさ、女の方から寄ってくるわけ。で据え膳に手だしたからには責任とる! って感じでいつも付き合うのよ」
「へええぇ……」
な、なんだ。ゼイツ准将、女性経験豊富なんだ。
私は距離感をまちがって、食べようとしたジェラートを鼻のあたまにくっつけた。
「キェーマの時は、惚れ薬を自力で抜いて〝正々堂々俺を惚れさせてみろ〟って言ったらしいの。バカだよね、あれだけひどいことされて」
「それで付き合ったんです?」
「いんや、キェーマがエリアス王に言い寄るっつーわけわからん行動にでて自滅した。ゼイツはそういうのは許さないから、それで終わり」
★ ★ ★
一方、ゼイツは<バーズ>から離れた自然保護区域に来ていた。
見渡す限りの丘陵には青々と草が生い茂り、
生態系維持のため、区域内で土をひっくり返すことは禁止されている。
ここにてゼイツは、ギブソンの両手を前で拘束、両足首も拘束し、
彼の手首を足首の方に括りつけようとしていた。
つまり、膝立ちになったギブソンを
「悪言吐いてゴメンナサイもうしません」と
額を擦りつけさせ、股の間から両腕を引っ張りだしている状態だった。
「んでマグマ族は倒せたのか?」
縛り上げながらゼイツは訊いた。
「フハッ、あんなん倒せるわけねーだろ。逃げるに限る」
つむじを大地にこすりつけて、ギブソンは涎をこぼした。
「マグマなんて土の上位互換だからな。奴ら、それを鼻にかけてんだよ」
手足を鎖でひとまとめにすると、ゼイツはギブソンから離れた。
「よし。夕日に向かって反省しろ」
「夕日全然見えねえぞ!」
ギブソンが暴れ、鎖がガチャンガチャンと軋む。
ゼイツは清々しく疲れた顔をして、丘に動く物に気づいた。ドライヴスナギツネが偵察に来ている。
「もしもの時は骨は拾ってやる」
「ふ ざ け ん な」
「空にも気をつけろよ、ビッグコンドルに主峰にでも連れて行かれたら……帰るのに一苦労だぞ」
「普通に凍死すんだろ! その前にブッ殺してやる!」
「三ツ星天然記念物だから、そんな事すれば牢獄行きだ。あえてぶち込まれたいっつーなら……入れてやるよ(挑発)。じゃあな」
「クソッ///! からかってんじゃねえ! 待てって放置プレイ好きじゃねーんだよ!」
ハル大陸に通うギブソンは強くなるどころか、諦めをつけるのが当たり前になったようだ。逃げ足が速くなるのは感心だが、もっとギアを上げてきてくれないとこっちも全力でぶつかれる相手が限られてしまう。
「……ウォーイ! ゼイツー!」
強さとは最終的には精神力だ。まして自分たちはピュアブラッドとして生まれ、肉体的な強さは充分に備わっている。だったらさらに高みを目指すべきだ。
そんなゼイツは目下、妖精フェルリナの誘惑と戦っている。
今日の分は午前中にやっただろ?
明日は店の修繕をするだろうからそれを手伝って、午後にイークアル公国へ戻る。
エリアスは精密検査で宮殿にいる。(アイアンヘルムの奪い合いで蹴とばした時、脳震盪起こした為)
塔には自分とフェルリナの二人きりだ、夜やろう。
……いや待て。
ウシナウ草が見つかったせいで、元々消極的なフェルリナのことだ、「もう救命はいらない」なんて言ってくる可能性もある。
その時ショック受けた顔したらカッコ悪い。今から心構えをし……
「おいッ!! ゼイツッぐふっ!」
「あんだよ!」
ギブソンがダンゴムシのように転がってきていた。
「フハァ……フハァ、な……何をそんなにカッカしてんだよ……変だぞ今日……」
「まあな。確かにここ数日、ずっとムカついてる」
この怒りは精力剤効果のせいではない。自分が精力剤なんかに負けるわけがないし、そもそもここにフェルリナがいない時点で、この怒りは真の感情である。
「なんでそんなに怒ってる」
「流儀を貫けねえからだ」
ゼイツは今まで、手を出した女には責任をとると決めてきた。
だがフェルリナに関しては、責任をとらせてもらえない。
彼女を泣かせてばかりいるジョニーより、自分の方がよっぽど幸せにできるのに。
「だったら……夕日に向かって叫べ!」
「んなダセー事するか」
「感情は溜めるとよくねえ。俺はすぐに発散させてる」
「発散させすぎなんだよてめーは」
「フン。情熱の手本をみせる」
ハア、ハア、とギブソンが上唇をひんむいて切実な顔をあげる。
仕方なくゼイツは腕組みして、斜に構えて立っていた。
「お前をっ、幸せにできるのはっ、俺だーーーーー!!」
それを聞いてゼイツはギョッと腕組みをやめた。自分の心を読み取られたのかと思った。
「勝手に人の気持ち代弁すんな!」
「お前も俺と同じ気持ちなのかゼイツ!?」
「いやそうじゃねえ」
「そうなんだよ! いい加減気づけバカ!! 自分の胸に手を当ててよく考えてみろ!!」
「なにウェンディみたいなこと言って……」
ゼイツは動きを止めた。
ちょっと待て…………
何でフェルリナはここにいないのに、
精力剤効果が消えないんだ?
そもそも何で俺はずっと、
フェルリナのことばかり考えているんだ?
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