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ペーター編
51話 ⑤可愛い人質
しおりを挟む「へーふぁー……ふふーへはいほ」(ペーター……覚えてないの?)
「何が?」
それにより接近禁止令が処され、彼が会いに来る事はなくなった。
はじめの数年はホッとしていた。もう意地悪されることもない。ツリービアードに縛りつけられて猫じゃらしでくすぐられたりするのは御免だったから。
だけど大人になるにつれ、貴方が恋しくなる日もあった。元気かな、どうしてるかな、って思い出す日もあったのだ。
それなのに、この男の子は何も変わっていない……。
私はぬいぐるみを抱いていた。生きた子ぎつねは幻だった。
「チュウリッツー軍の准将さ~ん?」
腕に肩に、こぎつねたちをのっけてペーターが宙へ浮かぶ。
「キミ、ドライヴランド族っていうブランドだけで准将やってるの?」
「んな甘い世界じゃねーな。何が言いたいんだ」
「戦下国際法ちゃんと暗記してる? 第八章、背面戦闘の解放。後ろ向いて戦わなくていい相手、マグマランド族、ハルシェパード族、デッカイーナ族、って強種族がつらつらとあるけど、ピクシー族とはどこにも書いてないのよ?」
「……」
「それなのに何でキミ、さっきからボク相手に正面向いて戦ってるわけ?」
それが言いたかったんだ、もう。
特別な力を有する私たち妖精が、簡単に人と争ったり、戦争に参戦するべきじゃない。
だから記されてないだけなのに。
「わりぃな、決闘のつもりだった。ハンデが欲しいならやるよ」
そう言ってゼイツ准将が素直に背を向けるとすかさず、
ペーターが子ぎつねたちを投げつけた。
「いけ! フォックスぱぴーず! ハハハハハ」
ぽいぽいぽい!
二匹はあしをぴーんと伸ばして飛んでいき、
ちょむっ
ぺみっ
ゼイツ准将の背中と後ろ頭に抱きついた。
「フガッ!?」
何かとふりむいた顔面に三匹目が爪を立てぶら下がる。
「おっと手元が狂った。受け取って~」
「ぐおっ!」
慌ててゼイツ准将が大きく一歩踏み出し、目を見開いて四匹目をキャッチした。
「キャー」
「ミーミーミー」
「カウント3で雷撃用意。アオ~~~ン」
「なんだこいつらちょっと待て!!」
「キューキュー」
「へーふぁー!」(ペーター!)
私は月夜に浮かぶペーターを食い入るように見つめた。
喉をあげて遠吠えする彼の、陶酔した横顔を。
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