105 / 116
ペーター編
103話 ペーターの最期
しおりを挟むドゴッ!!ドドドドドドドドドド!!!!
頭上でゼイツ准将が壁を殴っている。
「やれるもんならやってみろ!! いくらでも邪魔してやるよォ!!」
「殺されなきゃわかんないの?」
「やめて!!」
ペーターが雷撃しようと手をかざす。私は無我夢中でその腕に飛びついた。
「なんでこんなことするの!? ペーターどうしちゃったのっ……」
「ボクはキミに救命しようとしてるだけ! なのにコイツがいつまでもここにいるからいけないんじゃないか!」
「だからってこんなやり方ひどいっ!」
「だったらこうすればいい!」
ペーターが私をウォールの前へ突き出す。ゼイツ准将が弾かれたように殴るのを止めた。
「ボクじゃなくてコイツにされてると思えば感じるでしょ!」
耳を疑うような台詞だった。目を丸くしたゼイツ准将と、私もきっと同じような表情をしていただろう。ペーターが後ろから抱いてきて、ウォールに押しつけられた私は叫んだ。
「もうやだむり! 私死ぬからほっといて! 早く0時になって死んじゃいたい!」
こんなの酷すぎる。こんな事されてできるわけないじゃない。死んだ方がマシだって本気で思った。
ゼイツ准将が真ん前へ来てしゃがみこみ、
おでこに血管を浮き上がらせ、ブオンブオンと能力をふかし始めた。
「頭を冷やしやがれ……この宙返り野郎……!!ぐっ……ぎぎぎぎっ……!!」
彼は部屋を持ちあげていた。
「きゃあ!」
ベッドが滑り台のようになり、私はペーターの上に転がり落ちた。その時マントも落ちて、胸ポケットからゼイツ少年の写真がのぞいた。
ザァンン――ッ!!
ラグもクッションも私たちも、
まるで掃除のように片側へ寄せたあと、部屋が勢いよく元に戻る。
私はペプーラ瓶と一緒に床を転がって、ベッドの脚にぶつかる手前で止まった。
わけがわからず立ち上がると、外でゼイツ准将が重たいものを持った後のように手首をふっている。
「今の素手で持ちあげたんですか?」
「まぁな。頭にキて能力使うの忘れた。それよりペーター! 次は【スカイハイ】で派手に飛ばすぞ。今みたいにフェルリナ守ってくれねえか」
私はちょっと怒った感じをだしてペーターを振り返った。
確かにベッドから落ちる時、意外なほど優しく守ってくれたけど、無理矢理キスされたりしたことはカンタンにはぬぐえない。
「いいわよ守らなくて。私、その壁とヘッドボードのすき間に入り込むから」
「それだと危険だな。おいペーター聞いてんのか」
ペーターは壁の傍らに立ち、うつむいて何かを見ている。
それは ゼイツ准将の少年時代の写真だった。
ゼイツ准将が野球ユニフォーム姿で、肩に乗ったミミズクの翼をくすぐったそうに笑っている。
「これが一番よく撮れてる」と、アイハーツ様が嬉しそうに私にくれたものを、
ペーターが引きちぎった。
「こんなものッ! こんなものッ!」
「やめて! なんてことするのよっ」
「なんで!! なんでボクよりコイツなの!!」
幾重にもやぶき、握り潰し床に叩きつけ火を噴くように怒鳴った。
「ボクは子供の頃からキミと一緒にいるのに!なのになんでボクよりコイツを選ぶんだよッ!!」
「だっ、だってゼイツ准将は優しいもん、ペーターと全然ちがうもん!」
「優しいもんかこんな母親殺して生まれてきた奴ッ!!」
「やぁめてよッ!!」
私は悲鳴のような声をあげた。
「何年一緒にいようとペーターなんか選ばない!! 昔から気持ち悪くて大っ嫌いだったもん!!」
自分で叫んで自分でびっくりして目をあけると、ペーターも目を見開いていた。
今、なんて言ったの、私。
ペーターは下を向いて、ひっそりと笑った。
「……それが聞けてよかったよ、フェル」
彼は私の前を素通りして、ゼイツ准将の方へ歩いていくと、ウォールに手をついた。
「フェ、フェルの、ポ、ポ、ポケットに……」
ゼイツ准将が、真剣な目でペーターを見あげる。
「写真だろ? 気にすんなあんなもん、親父が押しつけたんだよ」
「ア、ア、アレを……アリに……つ、つかえ……ま、まにあう」
「おい大丈夫か? しっかりしろ!」
ペーターの翅ピアスが床に落ちて鳴ると同時に、
彼はしゃがみこみ、
その肌が、翅の脈が、みるみるうちに白くなっていく。
「おいおいおい!」
ゼイツ准将がウォールに手をついて目をみはり、あぜんと息を飲んで私を見た。
「銀色になっちまったぞ!」
0
あなたにおすすめの小説
【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日
プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。
春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件
楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。
※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる