私をきらいになって! チェストラ様

夢沢とな

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#4 ひとり図書館

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翌日、メロディがチェストラの誘いを断りたいと言うと、父と母は表情をくもらせた。

「何で行かないんだ?」
「チェストラ様は本なんて読まないのよ。近くに大きな図書館ができたのに一度も行った事がないくらい興味がないのよ」
「これはデートでしょ、メロディ。本を読みに行くのではなくて、一緒にいる時間を楽しみに行くのよ」

メロディは信じられないような気持ちで両親を見た。
彼が友人につかみかかった時のことを、二人は忘れてしまったのかしら。

「昨日見たでしょう? 覚えてないの?」
「あれは……あなたの為にしてくれたことなのよ」
「どうして私の為なの?」
「それは……」

母ヴィオラは言葉をにごした。
メロディは、自分が侮辱ぶじょくされたことに気づいていない。それをわざわざ説明して、娘を傷つけたくないのだ。

「きっと家庭内暴力をふるうタイプの人よ。お母さまは私がそんな男性と結婚してもいいの?」
「物語の読みすぎよ。もっと現実の人をちゃんとみなさい」
「みてるわ」
メロディは口をとがらせて、父親の方を向いた。
「こんな婚約取り消して、お父さま」
「取り消す? バカなことを言うな! こんな良き縁談ないんだぞ!」
「どこが良き縁談なの?」
「イークアル公国といえば、ワインもパンも美味しいからな!」

それを聞いたメロディは、偉人の言葉を言ってみせた。

「『食べ物に対する愛ほど誠実なものはない』。お父さまは私よりワインとパンの方が大切だってことがよくわかったわ」
「うっ……。とつぜんことわざみたいなこと言うんじゃない! 言い返せないだろ!」

両親はクールダウンするために観光へ出かけた。

イークアル公国は食物豊かな国である。ワイン、小麦、ニワトリ、ラズベリーなどなど名産品が山ほどある。

「ひどいわお父さま。自分がイークアル公国に住んで、ぐるめぐりしたいだけなんだわ、ぜったい」

メロディは怒って、ひとり城館を飛び出した。さんさんと日が照るレンガ道を歩いていると、農夫がわらを積んだ荷馬車で通りかかった。

「めがねのお嬢様、クリスタル図書館にでも行かれるんで?」
「はい?」

あ、そうだわ……。クリスタル図書館、行ってみたい……けれど。

「ある方から一緒に行こうと誘われていたのですけど、……できたら一人で行きたいんです」
「良ければ乗せてあげますよ、通り道ですから」
「まあ、ありがとうございます」



「わあ……」

たどり着いた図書館に、メロディは目を輝かせた。
巨大なクリスタルをイメージした建造物は、壁だけでなく、床まで透明だった。
メロディはさっそく中へ入ってみた。

図書館へ来るのは、本が好きという理由もあるけれど……ここへ来ると静かで、心が落ち着くのよね。

メロディはラックに立てかけられているおススメ本に目を止めた。

<カレに嫌われる♡5つの方法  インライ・ルル・フェアリーアイランド著>
 
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