私をきらいになって! チェストラ様

夢沢とな

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#5 カレに嫌われる♡5つの方法

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ラックにおススメ本が立てかけられている。

<カレに嫌われる♡5つの方法  インライ・ルル・フェアリーアイランド著>

通りがかった二人組の女の子が、その本を手に取る。

「〝カレに嫌われる〟? 何この本」
「…………みてみて、結構おもしろい」
「え、どれどれ」

最初は鼻で笑っていた二人が、次第に本に夢中になっていくのを、メロディは本棚の影から気にしていた。

カレに嫌われる方法……? まるで今の私のためにあるような本じゃない。
だって、私がチェストラ様に嫌われてしまえば、むこうから婚約をことわってくるでしょう? そうすればお父さまは腹を立てて、ワインやパンどころじゃなくなるはずだわ!

二人が立ち去って、メロディはその本を取りに行った。
目次にはこうあった。

<カレに嫌われる♡5つの方法>
1♡うたがう。
2♡ネガティブな話を延々ときかせる。
3♡忙しいところを邪魔する。
4♡責める。
5♡悪者になる。

す、すごい……本当に嫌われそうなことが書いてある……。5つめだけよくわからないけど、この通りにやってみればいいのね。

♪ ♪ ♪

図書館の本は国民でないと借りられないことになっている。メロディは5つの項目を暗記しながら、歩いて帰った。

夕食はダイニングホールにて、メロディと両親、チェストラと、昨日のパーティーに来ていた数人で晩餐ばんさんテーブルを囲んだ。
チェストラの方はというと、彼はメロディの姿が見れて嬉しかった。今日、彼女は体調不良で一日部屋にいると聞いていたので、食事が終わると話しかけに行った。

「体調はいかがですか?」

自分といる時、彼女はつねに下を向いているし、眼鏡が分厚いので表情もわかりにくいけれど、まゆげで読み取れるということをチェストラは学んでいた。まだ具合が悪いのかな? 返事を待っていると彼女はこう答えた。

「大丈夫です。実は今日、一人で図書館へ行ってみたんです」

チェストラはピヨピヨとまばたきをした。

「どこの図書館ですか?」

「昨日あなたが教えてくれたクリスタル図書館です」

「えっ……」

チェストラはただただ驚いている。

「本当は私を図書館へ連れて行ってくれるつもりなんてなかったんですよね? チェストラ様は本なんて読まないんだから」

メロディはというと、夕食のあいだじゅうこのセリフを考えていた。

きっと怒り出すわ。当たり前よ。一緒に行こうという誘いを断って、体調不良だとウソをついて、実は一人で行っていた。こんな約束のやぶられ方をしたうえに疑われたら、誰だって怒るはず。
メロディは眉間に力を入れて、チェストラの反応を待った。すると、

「はははっ、ばれましたか」

と彼は赤くなって笑った。

「僕だって少しくらい読みますよ。ほら、あの、あれ、『走れピクシー』!」

チェストラが思い出そうとする。
〝ピクシーは激怒した。必ず、あの王を除かなければならぬと決意した〟で始まる、国語の教科書に載っている名作である。

「……ってありましたよね?」

小説のタイトルを言うだけで汗かいている人を、メロディは初めて見た。チェストラは真面目な調子に戻って、少しさびしそうに声を小さくした。

「……あなたの喜ぶ姿を見たかったんですよね……」

メロディは思わず聞いた。

「怒らないんですか?」

「ちょっと残念ではありますが、気にしないでください。図書館どうでしたか? 気に入っていただけましたか?」

「…………はい……すごく綺麗で」

「そうなんですよ。自分もよく通りかかるんですが、本がたくさんありますよね!」

「ええ……図書館ですから」


♬#♬#♬#♬#♬#♬#
お読みいただきありがとうございます♡
どうやら嫌われる方法の一つめはうまくいかなかったようですね。次は二つめです。今度こそ怒ってくれるのかな、チェストラ様。
つづきます♪
 
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