7 / 12
第07話「エルト編①」
しおりを挟む
俺の名はエルト。
エルト・レイリー。十八歳。B級の冒険者でポジションは剣士だ。
今はまだB級だが、近々A級に上がるだろうと言うのが周囲からの評判だし俺もそう思っている。
今はただのB級パーティで名前がついていないが、A級になればパーティに名前をつける事が出来る。いずれは俺の名はA級パーティ名と共に周囲に広がり俺の名を知らないものはいなくなるだろう。
先日我がパーティはちょっとした分岐点を迎えた。
魔術師のくせに魔術を使う事が出来なかったテオをパーティから追放したのだ。
レディーティア王国の悪法である「魔術師保護法」のせいで魔術師はパーティに一人しか入れられなかったため、うちのパーティはテオがいるせいで実質的に魔術なしでやっていたのだが、テオを追放して新しい魔術師を入れる事によってさらなる高みを目指す事が出来るようになった。
テオの恋人だったサラも俺の女にした事は大したことではないのであえて省く。それを伝えた時のテオの顔は今でも笑ってしまうくらいいいものだったがそれはどうでもいい。
新たな魔術師のB級冒険者のヴィルを仲間に加えて、今回が新生エルトパーティの初陣となる。
気合を入れていたのだがギルド支部で出鼻を挫かれてしまった。
受けた依頼内容の魔獣討伐に早速行こうとした時に、受付嬢に書類を出せと言われてしまったのだ。
「エルトさん。出発前の書類を出して行ってください」
「出発前の書類?」
俺はシェリーを見る。シェリーは首を横に振った。知らない時のアクションだ。
続いてサラを見る。サラも首を横に振った。知らない時のアクションだ。
「今までそんなもの出したことなかったぞ。何か勘違いしているんじゃないのか?」
俺は受付嬢にそう尋ねる。
「そっか。書類の存在知らなかったのですね。今までエルトさんのパーティの書類関係は全部テオさんが出していたんですよ」
衝撃的な事実を知った。
「テオが書類を出してた?」
「はい。エルトさんがパーティ組んで少ししてからずっとです。最初の頃は自分で出していたのを覚えていますよね?」
「あ、ああ」
確かに冒険者になりたての頃は書類を自分で書いて出していた記憶がある。
読み書きが苦手な俺はテオに教わっていた。思い返すとその内「書類関係はテオに任せる」ようなことを言ったのかもしれない。ランクが上がったから書類なしで良くなったわけじゃなかったのか。
テオの奴いつも出発前に少し時間かけているなと思ったらそんなことをやっていたのか。
「リーダー。早く行きましょう」
そう言いながら新たな仲間のヴィルが手に書類を持っている。
俺達より年上の二十歳だが礼儀正しい男だ。
「おお。ヴィル。書類を書いてくれたのか」
テオに変わって入っただけある。書類関係はこいつに任せよう。
「何言ってるんですか。これは自分のですよ。みなさん早く自分の書いてください」
そう言ってヴィルは受付嬢に書類を提出する。俺達の分は書いてくれる気はなさそうだ。
「待て、ヴィル」
俺はヴィルを呼びとめる。
「久しぶりすぎてわからない。書類の書き方を教えてくれ」
本当はリーダー命令で書類をこいつに書かせたかったが、それはこいつがなにかミスをしてからでいいだろう。少し悔しいがヴィルに頼んだ。
「私もいいかしら」
「わ、わたしも」
シェリーとサラもおずおずと手を上げてヴィルに頼み込む。
「三人共ですか?まったくしょうがないですね」
偉そうに言って来るヴィルを殴ってやりたかったがとりあえず我慢だ。
「それじゃあこっちで書きましょう」
こうして、俺と同じく書類の書き方がわからないシェリーとサラと共にヴィルから書類の書き方を教えてもらってようやくギルド支部を出る事ができた。
まさか出陣前に疲れてしまうとは思わなかった。多少重い足取りで俺達は魔獣討伐に向かうのだった。
エルト・レイリー。十八歳。B級の冒険者でポジションは剣士だ。
今はまだB級だが、近々A級に上がるだろうと言うのが周囲からの評判だし俺もそう思っている。
今はただのB級パーティで名前がついていないが、A級になればパーティに名前をつける事が出来る。いずれは俺の名はA級パーティ名と共に周囲に広がり俺の名を知らないものはいなくなるだろう。
先日我がパーティはちょっとした分岐点を迎えた。
魔術師のくせに魔術を使う事が出来なかったテオをパーティから追放したのだ。
レディーティア王国の悪法である「魔術師保護法」のせいで魔術師はパーティに一人しか入れられなかったため、うちのパーティはテオがいるせいで実質的に魔術なしでやっていたのだが、テオを追放して新しい魔術師を入れる事によってさらなる高みを目指す事が出来るようになった。
テオの恋人だったサラも俺の女にした事は大したことではないのであえて省く。それを伝えた時のテオの顔は今でも笑ってしまうくらいいいものだったがそれはどうでもいい。
新たな魔術師のB級冒険者のヴィルを仲間に加えて、今回が新生エルトパーティの初陣となる。
気合を入れていたのだがギルド支部で出鼻を挫かれてしまった。
受けた依頼内容の魔獣討伐に早速行こうとした時に、受付嬢に書類を出せと言われてしまったのだ。
「エルトさん。出発前の書類を出して行ってください」
「出発前の書類?」
俺はシェリーを見る。シェリーは首を横に振った。知らない時のアクションだ。
続いてサラを見る。サラも首を横に振った。知らない時のアクションだ。
「今までそんなもの出したことなかったぞ。何か勘違いしているんじゃないのか?」
俺は受付嬢にそう尋ねる。
「そっか。書類の存在知らなかったのですね。今までエルトさんのパーティの書類関係は全部テオさんが出していたんですよ」
衝撃的な事実を知った。
「テオが書類を出してた?」
「はい。エルトさんがパーティ組んで少ししてからずっとです。最初の頃は自分で出していたのを覚えていますよね?」
「あ、ああ」
確かに冒険者になりたての頃は書類を自分で書いて出していた記憶がある。
読み書きが苦手な俺はテオに教わっていた。思い返すとその内「書類関係はテオに任せる」ようなことを言ったのかもしれない。ランクが上がったから書類なしで良くなったわけじゃなかったのか。
テオの奴いつも出発前に少し時間かけているなと思ったらそんなことをやっていたのか。
「リーダー。早く行きましょう」
そう言いながら新たな仲間のヴィルが手に書類を持っている。
俺達より年上の二十歳だが礼儀正しい男だ。
「おお。ヴィル。書類を書いてくれたのか」
テオに変わって入っただけある。書類関係はこいつに任せよう。
「何言ってるんですか。これは自分のですよ。みなさん早く自分の書いてください」
そう言ってヴィルは受付嬢に書類を提出する。俺達の分は書いてくれる気はなさそうだ。
「待て、ヴィル」
俺はヴィルを呼びとめる。
「久しぶりすぎてわからない。書類の書き方を教えてくれ」
本当はリーダー命令で書類をこいつに書かせたかったが、それはこいつがなにかミスをしてからでいいだろう。少し悔しいがヴィルに頼んだ。
「私もいいかしら」
「わ、わたしも」
シェリーとサラもおずおずと手を上げてヴィルに頼み込む。
「三人共ですか?まったくしょうがないですね」
偉そうに言って来るヴィルを殴ってやりたかったがとりあえず我慢だ。
「それじゃあこっちで書きましょう」
こうして、俺と同じく書類の書き方がわからないシェリーとサラと共にヴィルから書類の書き方を教えてもらってようやくギルド支部を出る事ができた。
まさか出陣前に疲れてしまうとは思わなかった。多少重い足取りで俺達は魔獣討伐に向かうのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる