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追放イベント中に前世の記憶が蘇りこのままじゃパーティ全滅すると気付いた男
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破滅へ向かう選択肢は、それが破滅へ向かう選択肢だと気付かないうちに選択してしまっている。
「アベル。お前を追放する」
リーダーのギルバートが高々にそう宣言した。
A級冒険者パーティ「プロミネンス」
全員がまだ19歳の若者だが冒険者ギルドのトュレーゼ支部において三つしかいないA級パーティでありその中でも最強と言われていた。
「そんな。ギル。どうして急に」
追放を宣言されたアベルはギルバートに反論する。
「お前は実力が足りていないんだ。うちのパーティにいるのは分不相応なんだよ」
戦士のグレゴールが叫ぶように伝えた。
「じ、実力不足って」
アベルは反論しようとする。
「アンタ。足手纏い」
魔術師のラミアが静かに、だがはっきりと告げた。
「最後にモンスター倒したのいつ?」
ラミアの問いにアベルは汗を流しながら焦った様子で口を開く。
「たしかにここ一年はモンスターを倒してないけど、僕は回復士(ヒーラー)だよ」
アベルはそう反論した。アベルは回復士。補助職だった。敵を倒す事よりも後方支援に徹するポジションだ。
「アベル。回復士でも戦闘に参加して敵を倒しつつ味方を援護すると言うのが上級の冒険者だ。君はそれができない。つまりS級に上がろうとしている我々には不要だ」
ギルバートがそう告げて、アベルがショックで何も言えなくなった瞬間だった。
俺は雷が落ちたような衝撃を受けた。
「……どうかしたのか。カイン?」
ショックで固まるアベルをよそに、ギルバートは俺に話しかけた。
「い、いや」
俺は口ごもった。
そしてまるで走馬灯のように色々な映像が脳裏に浮かび上がった。
俺の名はカイン・ランフォード。
A級冒険者パーティ「プロミネンス」の弓士。
必要な事以外あまり喋らない魔術師のラミアよりも無口な存在だ。
アベルが不要であると考えていながらも特に何も言わなかった。
ギルバートもそれをよくしっているのでグレゴールとラミアが喋ってから俺の言葉を聞くことなく最終通告をしたのだ。
だが、今の雷の用の衝撃が走ったのは、俺に前世の記憶が一部蘇ったからだ。
名前は思い出せない。
確か三十半ばで友達が運転する車に乗ってダンプカーに激突したのが最後の記憶だからあのまま事故死したのだろう。そして異世界転生した。
そして、ここで俺は気付いた。
これはネット小説のざまぁ系の作品だ。
ざまぁ系は女性主人公ものが多かったが、俺は男主人公の作品が好きだった。
パーティから追放されて追放したパーティが崩壊するシーンは大好きだ。
そして今、その主人公を追放して崩壊するパーティに俺はいる。
さらに場所が悪い。
よりによってこの出来事は、ダンジョンのど真ん中で起こっているのだ。
「ここでお別れた。アベル」
「そんな。ここで一人にされたら僕は死んでしまう」
そう。追放するに飽き足らず、アベルをここで始末しようと考えていたのだ。
ろくでもない四人だ。俺も記憶が戻る前には賛成していたから同罪だ。
だが、ここで別れて死ぬのは下手したらアベル以外の四人だ。
回復士には稀にパーティ全員の基本能力を上げる力を持つ者がいる。
アベルがまさにそれだ。
なぜそれに気付いたかと言うと、前世の記憶が加わった今、過去を振り返るとこのパーティを離れて臨時で組んだパーティでやたらと調子が悪かった。
たまたま体調の悪い日と重なった気もするが、今思うとアベルの補助がなくなったせいだ。憶測だがあの時が俺の本当の実力だとすると俺の実力はC級と言ったところだ。多分他の三人もそうだろう。
ここは最低でもB級レベルでないと生き残れないほどモンスターが凶暴だ。アベルはアベルで自分の身体能力を強化できるわけじゃないからこのままじゃ全員死ぬ。
「みんな。聞いてくれ」
俺はみんなに話をした。
普段無口な俺が滅茶苦茶話すものだからみんな静かに聞いていた。
前世の記憶とか言ったわけではない。
ただ、アベルの存在でA級のパーティになっているのだと根拠ごと伝えた。
そして却下された。
「カイン。そんな嘘をついてまでそんなクズを庇うな」
却下と言うより信じてもらえなかったようだ。
「そうか。ならば俺も抜けさせてもらう。アベル。一緒に行くぞ」
「えっ。カイン」
なにか言いかけるアベルの腕を掴んでそのまま歩きだした。
後ろからギルバート達の喚く声が聞こえてきたがそれは無視してダンジョンを進んだ。
一番大きなグレゴールの叫び声みたいな声も聞こえなくなった頃には腕を掴んでいなくても二人で並んで歩いていた。
「カイン。ありがとう」
アベルは俺にお礼を言った。
「礼を言われるような事はしていない。生き延びる方法を実行しただけだ」
俺はいつものように淡々と告げた。
「ううん。やっぱりお礼を言わせて、君だけは僕をバカにしなかったから」
違うんだ。アベル。
俺は無口だから口にしないだけでずっと君をバカにしていた。ごめん
と言うかこの世界じゃたいした意味は無いが、アベルとカインだとカインはアベルを殺す神話がある。
だから俺がカインで主人公級の名前がアベルだったのは完全な死亡フラグではとも考えたくらいだ。
「アベル。幼馴染のギルバートにあんな風に言われて悲しいと思うが、これからは俺と二人でパーティを組んでくれるか?」
俺はアベルに尋ねる。俺がA級でいられるのはこいつがいてこそだ。
「もちろんだ。よろしく。カイン」
そう言われて俺は微笑んだ。そんな俺も見てアベルも微笑んだ。
その後、モンスターに何度か遭遇したが、危なげなくダンジョンの入り口まで引き返すことができた。
こうして俺はなんとか生き延びるのだった。
*
追放イベントから数日後。プロミネンスのメンバーは全滅したと聞いた。
ギルバートとグレゴールとラミアの遺体も発見されたそうだ。
俺は、この後アベルにしがみついてこの世界で生きていこうと改めて誓うのだった。
「アベル。お前を追放する」
リーダーのギルバートが高々にそう宣言した。
A級冒険者パーティ「プロミネンス」
全員がまだ19歳の若者だが冒険者ギルドのトュレーゼ支部において三つしかいないA級パーティでありその中でも最強と言われていた。
「そんな。ギル。どうして急に」
追放を宣言されたアベルはギルバートに反論する。
「お前は実力が足りていないんだ。うちのパーティにいるのは分不相応なんだよ」
戦士のグレゴールが叫ぶように伝えた。
「じ、実力不足って」
アベルは反論しようとする。
「アンタ。足手纏い」
魔術師のラミアが静かに、だがはっきりと告げた。
「最後にモンスター倒したのいつ?」
ラミアの問いにアベルは汗を流しながら焦った様子で口を開く。
「たしかにここ一年はモンスターを倒してないけど、僕は回復士(ヒーラー)だよ」
アベルはそう反論した。アベルは回復士。補助職だった。敵を倒す事よりも後方支援に徹するポジションだ。
「アベル。回復士でも戦闘に参加して敵を倒しつつ味方を援護すると言うのが上級の冒険者だ。君はそれができない。つまりS級に上がろうとしている我々には不要だ」
ギルバートがそう告げて、アベルがショックで何も言えなくなった瞬間だった。
俺は雷が落ちたような衝撃を受けた。
「……どうかしたのか。カイン?」
ショックで固まるアベルをよそに、ギルバートは俺に話しかけた。
「い、いや」
俺は口ごもった。
そしてまるで走馬灯のように色々な映像が脳裏に浮かび上がった。
俺の名はカイン・ランフォード。
A級冒険者パーティ「プロミネンス」の弓士。
必要な事以外あまり喋らない魔術師のラミアよりも無口な存在だ。
アベルが不要であると考えていながらも特に何も言わなかった。
ギルバートもそれをよくしっているのでグレゴールとラミアが喋ってから俺の言葉を聞くことなく最終通告をしたのだ。
だが、今の雷の用の衝撃が走ったのは、俺に前世の記憶が一部蘇ったからだ。
名前は思い出せない。
確か三十半ばで友達が運転する車に乗ってダンプカーに激突したのが最後の記憶だからあのまま事故死したのだろう。そして異世界転生した。
そして、ここで俺は気付いた。
これはネット小説のざまぁ系の作品だ。
ざまぁ系は女性主人公ものが多かったが、俺は男主人公の作品が好きだった。
パーティから追放されて追放したパーティが崩壊するシーンは大好きだ。
そして今、その主人公を追放して崩壊するパーティに俺はいる。
さらに場所が悪い。
よりによってこの出来事は、ダンジョンのど真ん中で起こっているのだ。
「ここでお別れた。アベル」
「そんな。ここで一人にされたら僕は死んでしまう」
そう。追放するに飽き足らず、アベルをここで始末しようと考えていたのだ。
ろくでもない四人だ。俺も記憶が戻る前には賛成していたから同罪だ。
だが、ここで別れて死ぬのは下手したらアベル以外の四人だ。
回復士には稀にパーティ全員の基本能力を上げる力を持つ者がいる。
アベルがまさにそれだ。
なぜそれに気付いたかと言うと、前世の記憶が加わった今、過去を振り返るとこのパーティを離れて臨時で組んだパーティでやたらと調子が悪かった。
たまたま体調の悪い日と重なった気もするが、今思うとアベルの補助がなくなったせいだ。憶測だがあの時が俺の本当の実力だとすると俺の実力はC級と言ったところだ。多分他の三人もそうだろう。
ここは最低でもB級レベルでないと生き残れないほどモンスターが凶暴だ。アベルはアベルで自分の身体能力を強化できるわけじゃないからこのままじゃ全員死ぬ。
「みんな。聞いてくれ」
俺はみんなに話をした。
普段無口な俺が滅茶苦茶話すものだからみんな静かに聞いていた。
前世の記憶とか言ったわけではない。
ただ、アベルの存在でA級のパーティになっているのだと根拠ごと伝えた。
そして却下された。
「カイン。そんな嘘をついてまでそんなクズを庇うな」
却下と言うより信じてもらえなかったようだ。
「そうか。ならば俺も抜けさせてもらう。アベル。一緒に行くぞ」
「えっ。カイン」
なにか言いかけるアベルの腕を掴んでそのまま歩きだした。
後ろからギルバート達の喚く声が聞こえてきたがそれは無視してダンジョンを進んだ。
一番大きなグレゴールの叫び声みたいな声も聞こえなくなった頃には腕を掴んでいなくても二人で並んで歩いていた。
「カイン。ありがとう」
アベルは俺にお礼を言った。
「礼を言われるような事はしていない。生き延びる方法を実行しただけだ」
俺はいつものように淡々と告げた。
「ううん。やっぱりお礼を言わせて、君だけは僕をバカにしなかったから」
違うんだ。アベル。
俺は無口だから口にしないだけでずっと君をバカにしていた。ごめん
と言うかこの世界じゃたいした意味は無いが、アベルとカインだとカインはアベルを殺す神話がある。
だから俺がカインで主人公級の名前がアベルだったのは完全な死亡フラグではとも考えたくらいだ。
「アベル。幼馴染のギルバートにあんな風に言われて悲しいと思うが、これからは俺と二人でパーティを組んでくれるか?」
俺はアベルに尋ねる。俺がA級でいられるのはこいつがいてこそだ。
「もちろんだ。よろしく。カイン」
そう言われて俺は微笑んだ。そんな俺も見てアベルも微笑んだ。
その後、モンスターに何度か遭遇したが、危なげなくダンジョンの入り口まで引き返すことができた。
こうして俺はなんとか生き延びるのだった。
*
追放イベントから数日後。プロミネンスのメンバーは全滅したと聞いた。
ギルバートとグレゴールとラミアの遺体も発見されたそうだ。
俺は、この後アベルにしがみついてこの世界で生きていこうと改めて誓うのだった。
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