A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光

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第02話「新たな仕事と試練」

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 冒険者にはランクがある。
 新入りのE級。新入りが一年経過するとD級に上がる。そこから一般的に一人前と認められるC級。C級を超える実力者であるB級。トップクラスの冒険者であるA級。この五つに分類される。
 俺はA級パーティにいた。なので俺のランクはA級だ。
 だが俺自身にA級の実力は無かった。B級でも勝てそうな気がしない。個人で言うとC級くらいであろう。一人年前ではあるが実力者ではない。
そんな俺はひょんなことからギルド職員としての生活が始まった。
 初日からいきなりうまくいった。
 酔った冒険者が暴れかけるシーンもうまくさばけた。
 これからもやっていける。……と言うのは甘かった。
 昨日の俺はあくまでギルド職員でない人間でもできる業務をエリナが回してくれただけ。他の職員もその上で職員経験のない俺がうまく仕事をこなした事を褒めてくれたのだ。
 現に今日から通常の業務をまわされるようになって早速戸惑う事が増えた。
 戦闘の裏方をずっとやっていたとはいえ、ギルドの業務はまったくの未経験。受付嬢や職員たちの素早い手捌きを見ていると、自分が場違いな場所にいるような気さえしてくる。昨日はあんなにできる気がしたのに。
 エリナは「本当はもっと慣れたからにしようと思ったけど、リオンなら大丈夫だと思うから」と言ってくれた。フォローも忘れないできた上司だ。
「リオン。今日の依頼管理をお願いします。これ、提出用の報告書」
 エリナが俺の机に書類の束を置く。何気ない仕草だが、彼女の手際の良さは見事だ。
「ありがとう。えっと……」
 書類をめくり、確認する。依頼の内容、報酬、必要な装備、危険度――。数字や管理業務には慣れているつもりだったが、ギルドのフォーマットはA級パーティの内部管理とは勝手が違う。情報量が多く、注意深く確認しなければならない。
「中々うまくいかないな」
 ちょっとした愚痴が零れる。
「大丈夫よ」
 エリナに聞かれていたようで静かな声でそう言われた。
「昨日ほど簡単にはいかないと思うけど、初日は皆バタバタだしミスも多いわ。リオンなら慣れれば大丈夫」
 エリナが微笑む。
 その言葉に少し安心しながら、俺は書類の整理を始めた。
 しかし、慣れる前に問題は次々と降りかかってきた。
「リオン、新しい武器庫の管理リストを作成してくれ。最近、在庫の確認が曖昧になっていてな」
 俺とは違う経緯で冒険者引退後に職員になった強面の職員に頼まれる。
「わかりました。作成します」
 書式のフォーマットは違えどなんとかまとめる。自分のパーティ以外の多数のパーティ分全部はさすがに骨が折れる。
「報酬の支払いにミスが出たみたいだ。すぐ確認してくれ」
「わかりました。確認します」
 帳簿を見て内容を確認。ミスが出たところに謝罪したり色々と大変だった。
「依頼の調整でダブルブッキングが発生してる!なんとかならないか?」
「わかりました。調整してみます」
 二つのパーティの話を聞いたりしながらなんとか調整する。
 次々と舞い込む仕事と問題。これまでパーティの管理をしてきた経験があるとはいえ、ギルドの仕事は規模も範囲も違う。俺は書類をめくりながら、深く息をついた。
 ギルド職員の仕事は、想像以上に忙しく、そして、やりがいがありそうだった。
「お疲れ様」
 エリナが机の上に飲み物を置いてくれた。
「ありがとう」
 一瞬。次の依頼かと身構えてしまった事は内緒だ。
「ギルドの仕事はどう?」
 エリナから昨日と同じ質問が来た。
「大変だな。いつもエリナ達はこんなことをしていてくれたんだな。ありがとう」
 昨日と同じ返答をした。
 今までパーティのみんなが戦闘に集中できるように裏方をしていた俺だが、冒険者達がきちんと働けるように裏方をしてくれていたのがギルド職員のみんなだ。昨日に引き続き俺は改めて感謝の気持ちが芽生えた。
「そう言ってもらえると嬉しいわ。でも私達は命の危険は無いから」
 エリナも面白がって昨日の会話そのままに続ける。
「そうだったな。ここにはモンスターはいないのだけが救いだな。ビクトルはいるけど」
 最後だけ変えてそう伝えた。
 俺とエリナはお互いの顔を見ながら笑った。

          *

 一ヶ月が経過した。
 慌ただしい日々の中で、少しずつギルドの仕事にも慣れてきた。特に数字に関する業務は得意分野だ。武器庫の管理リストも、独自のフォーマットを作り、在庫状況を一目で把握できるように改善した。報酬支払いのミスも、計算ミスのパターンを洗い出し、チェック体制を強化することで解決した。書式のフォーマットも改善させてもらってやりやすくさせてもらっている。
「リオン、すごいな。おかげで随分と仕事がスムーズになったぞ」
 同僚の職員が感謝の言葉をかけてくれる。評価されるのは素直に嬉しい。だが、まだまだ課題は多い。
「リオン。ちょっといい?」
 エリナが困った顔で俺のもとにやってきた。
「どうした?」
「緊急の依頼が入ったの。でも、適任の冒険者がいないのよ」
 ギルドでは日々さまざまな依頼が舞い込む。その中には、ただの雑務では済まないものもある。俺は書類に目を落としながら、エリナに問いかけた。
「依頼の内容は?」
「街道沿いで魔物の出没が増えていて、商人たちが困っているみたい。でも、適任の冒険者はすでに別の依頼に出てしまっていて」
「なるほど」
 適任者不在のまま放置すれば、商人たちの被害は増す一方だ。だが、これは結構危険な任務だ。無理に手配して失敗でもしたら、今度はギルドの信用問題にも関わる。どちらにせよ、慎重な判断が必要だった。
「リオンなら、どうする?」
 エリナが真剣な眼差しで俺を見つめる。
 俺は少し考えた後、答えた。
「適任者がいないなら、代替案を考えるしかない。戦闘能力が高くなくても対応できる方法があるはずだ」
 ギルド職員としての手腕が、試される時が来た。などと言うと大袈裟かもしれないが、俺の今までの経験を活かすチャンスだ。
 自分がその任務にあたろうか。
 そんな風に考えたが、それでは根本的な解決にならない。
 一瞬ビクトルと組んで行ってくるかなども考える辺り俺もまた武闘派だった。
「エリナ。地図を見せてくれるか」
「ええ。これだけど」
 エリナがギルドの地図と記録を持ってきてくれた。
 俺はすぐにその資料を確認し、街道沿いの地形や魔物の出現傾向を調べた。そして、直接戦闘ではなく、護衛対象のルート変更や囮を使う方法を考えた。
「ここに魔物が頻繁に現れるなら、逆にこのルートを迂回すれば遭遇率は大幅に下がる。それでも危険がある場合は、囮を用意して敵の注意を逸らせばいい」
 エリナは俺の案を聞き、納得したように頷いた。
「確かに、それなら無理に冒険者を手配しなくても解決できるわね」
「うまくいけばだけどな」
「大丈夫よ。それで行くわ」
「いいのか」
 あくまで俺の考えをエリナがいいと思っただけだ。
 幹部やギルドマスターなどの判断案件ではないだろうか。
 その旨を伝えると
「任せて。これでも私も幹部の一人よ」
 エリナから頼もしすぎる答えが返ってきた。

          *

 それからさらに一ヶ月後。
 例の件はすっかりと解決されていた。
 さっそく商人ギルドと連携し、商隊のルート変更と囮役を務める人員の確保を進めた。結果的に、依頼は無事に解決し、商人たちからも感謝の言葉をもらうことができた。
「リオン。あなたの判断のおかげよ」
 エリナが微笑む。
「いや、俺は考えただけだ。それを実行してくれたのはエリナじゃないか」
 幹部のエリナが提案してくれた案件と言う事ですぐに通ったと聞いた。
「その考えがだれでもできる事じゃないのよ」
 エリナが微笑みかける。
「それにこの件はリオンの案だってみんなに言っておいたわ」
「それでか」
 みんなに褒められる機会が増えたがそういうことだったか。
「エリナ」
「何?」
「ありがとう」
 いろいろな意味を込めて俺はエリナに礼を言った。
 エリナから返事は無い。「わかっているよ」と言うような笑みを浮かべていた。
 俺は、ギルド職員としてここでやっていける。
 そして、俺にしかできないことが、確かにあるのだ。
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