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わざとです。
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「……なんでドンを知ってるんだ?」
「そりゃあ有名人だからさ! 俺は何度かあんたを見掛けたことがある。その晩は決まって寝付くことが出来ないほど、恐怖が全身を襲った。だけどなんだ? そん時とは雰囲気が違うな……」
「まぁ、いろいろあってね」
セルジョの言葉には、正直苦笑いを浮かべるしかどうしようもない。
見掛けただけで、一晩寝付くことが出来ないほどの恐怖を振り撒くとは……一体ドンはどうしたらそんな事が出来る。
考えたところで意味はないが。
セルジョはオレを値踏みでもするように、じっと全身に視線を向けてくる。
時間にして数秒──
セルジョは不思議そうに首を傾げては、眉を潜めた。
「やっぱりだ……今のあんたからは、前に感じた恐さがない。寧ろ、そっちの二人の方がよっぽど恐怖だよ。俺が強くなったのか? それともあんたが激弱になったのか?」
そっちの二人とは、フェルモとエルモの事か。
それは関して否定はしない。
なにせオレは身体に入り込んだだけで、見た目がマフィアのドンであるだけの存在。
セルジョの言葉に、セルジョの左右に並ぶ連中も同じことを思ったらしく、次々に口を揃えて告げる。
「今なら恐くねぇ」
「ああ、殺せるんじゃねえか?」
「あの有名なドンの首を取ったなんて知れたら、俺達も有名になれっかな?」
「なるだろう絶対」
「けど部下は強そうだ」
「なに、人数で抑え込めばいいさ」
「セルジョ、早いとこあいつの首取ろうぜ」
「お前ら、そう早まるなって。目的を忘れるな」
「黙れ……それ以上は、ドンへの侮辱として取りますよ」
仲間の早る気持ちを抑えようと、セルジョは笑いながらも制止の声を掛ける。
だが両手に持つ刃物を上下に振ることから、相手によっては挑発してるようにも見て取れる。
そこにエルモの声が掛かる。
先程オレに向けた怒りの声は別として、普段ののんびりした声からは想像できない、ドスの効いた声がエルモの口から放たれた。
「あなた達のようなクズ集団に、ドンに傷を付けれると一瞬でも考えた自分の愚かさに泣けば良い」
エルモは狂気を含んだ笑みを口元に見せ、一歩前に進み。
一方フェルモは、オレに身を近付け背を向けてはいるが、声を潜めて語る。
「さっきも言ったが、傍を離れないでくれ。あの派手な兄ちゃんに関しては、多少出来そうだ」
その声に反応し、なるべく相手連中にそれが悟られないよう気を付け、フェルモには視線を向けずオレも声を潜める。
「強いのか?」
「ああ。ま……でも、俺達より百倍は弱い」
そうか、それは良かった──オレは心の中で呟いておく。
チリチリと肌に刺さる両者の殺気。
互いに今すぐにも走り出し、乱闘が起きそうだ。
ここに来たオレ達の目的を忘れちゃいけない。
そう言えば……セルジョも今しがた言っていたな──
「そっちの目的は何だ? お前達流のご挨拶をしてくれたんだ、歓迎はしてくれたんだろう?」
「ははっ、勿論だ! なんたって、プロベンツァーノの旦那が来るのを俺は待ってたんだからな」
「待ってた?」
返ってきたセルジョの答えに、訳がわからないと首を捻る。
確かここへ来る前にカルロから聞いた話では、ドンはこのギャング集団を眼中にすらなかったと言った。
自分の縄張りでコソコソ暴れていようが、特にプロベンツァーノファミリーにとって悪害にならなければ放っていても問題ないと。
過去に何度かこいつらの存在はドンに報告はされていたみたいだが、その報告に相槌すら打たれない程度──本当にドンには興味の無い存在だった。
だからこうして接触するのは初めてであり、なにより相手にとっては逆に都合が悪いはず。
恐怖して眠れない程の相手──それも縄張りの首領が来たとなっては、自分達は追い出される側になるだろうに。
待っていたとは、どういう意味だ。
そこまで思案してから再度問うと同時に、まだ聞きたい事があったのを思い出す。
「お前達は金集めに人拐いしてる、って聞いてたんだけど──他にも目的がありそうだな。それはマフィアと関係あるのか? それに、表に運ばれた死体は何だ? どうしてあんな事をした?」
距離にして約十五メートル程離れた位置に立つセルジョを見据え、脳裏に浮かぶ疑問を淡々と問う。
それに対してセルジョは、こちらの問いひとつひとつに頷き笑顔を見せる。
一通りの質問を告げ終えると、暫し黙ってセルジョは手に持っている刃物──柄から刃先まで三十センチはあるシースナイフを、右手首を器用に跳ねさせ宙に飛ばす。
クルクルと宙を回転した刃物は、再び手元に戻る。
それを何度か繰り返し遊んだ後、飽きたのか漸くセルジョは口を開く。
「確かに俺達は──……」
だがまたしても、狙ったかのように、その声をかき消そうと被さる者が居る。
「ドン、あいつとのお話は止めにして、早くお片付けしましょう? あなたの命令さえあれば、ぼくはこいつらをパズルのピースみたいにバラバラにしてあげますよ」
「俺は関節から引き千切ってやるぜ」
「はぁ……だから、殺しは駄目だ」
「……わざとだろ? あんたら、わざと俺の言葉を遮ってるだろ!?」
「違いますよ、ドン。殺さずにバラバラにします!」
「え!? そうなのか? あー……じゃあ俺は殺さずに千切る」
「胴体をバラすな、千切るな」
「……」
相変わらず耳を疑いたくなる発言をする部下二人に、頭を悩ませ大きな溜め息が止まない。
ここに居るギャング集団との事が片付いたら、やはり部下の更生をどうにかするしかないな。
とは言えは、今この場ではこの二人の力が頼りだ。多少の事は目を瞑ろう。
そうこう話してる内にセルジョが黙ってしまったが、彼の言葉を再度待つ。
時間にしてたっぷり三十秒。工場内部はシーンと静まる。
流石にもう邪魔はないかと疑い目を向けつつ、セルジョは肩を落としやや呆れ気味に声を出す。
「……もう良いかい? 俺は喋っても」
「そりゃあ有名人だからさ! 俺は何度かあんたを見掛けたことがある。その晩は決まって寝付くことが出来ないほど、恐怖が全身を襲った。だけどなんだ? そん時とは雰囲気が違うな……」
「まぁ、いろいろあってね」
セルジョの言葉には、正直苦笑いを浮かべるしかどうしようもない。
見掛けただけで、一晩寝付くことが出来ないほどの恐怖を振り撒くとは……一体ドンはどうしたらそんな事が出来る。
考えたところで意味はないが。
セルジョはオレを値踏みでもするように、じっと全身に視線を向けてくる。
時間にして数秒──
セルジョは不思議そうに首を傾げては、眉を潜めた。
「やっぱりだ……今のあんたからは、前に感じた恐さがない。寧ろ、そっちの二人の方がよっぽど恐怖だよ。俺が強くなったのか? それともあんたが激弱になったのか?」
そっちの二人とは、フェルモとエルモの事か。
それは関して否定はしない。
なにせオレは身体に入り込んだだけで、見た目がマフィアのドンであるだけの存在。
セルジョの言葉に、セルジョの左右に並ぶ連中も同じことを思ったらしく、次々に口を揃えて告げる。
「今なら恐くねぇ」
「ああ、殺せるんじゃねえか?」
「あの有名なドンの首を取ったなんて知れたら、俺達も有名になれっかな?」
「なるだろう絶対」
「けど部下は強そうだ」
「なに、人数で抑え込めばいいさ」
「セルジョ、早いとこあいつの首取ろうぜ」
「お前ら、そう早まるなって。目的を忘れるな」
「黙れ……それ以上は、ドンへの侮辱として取りますよ」
仲間の早る気持ちを抑えようと、セルジョは笑いながらも制止の声を掛ける。
だが両手に持つ刃物を上下に振ることから、相手によっては挑発してるようにも見て取れる。
そこにエルモの声が掛かる。
先程オレに向けた怒りの声は別として、普段ののんびりした声からは想像できない、ドスの効いた声がエルモの口から放たれた。
「あなた達のようなクズ集団に、ドンに傷を付けれると一瞬でも考えた自分の愚かさに泣けば良い」
エルモは狂気を含んだ笑みを口元に見せ、一歩前に進み。
一方フェルモは、オレに身を近付け背を向けてはいるが、声を潜めて語る。
「さっきも言ったが、傍を離れないでくれ。あの派手な兄ちゃんに関しては、多少出来そうだ」
その声に反応し、なるべく相手連中にそれが悟られないよう気を付け、フェルモには視線を向けずオレも声を潜める。
「強いのか?」
「ああ。ま……でも、俺達より百倍は弱い」
そうか、それは良かった──オレは心の中で呟いておく。
チリチリと肌に刺さる両者の殺気。
互いに今すぐにも走り出し、乱闘が起きそうだ。
ここに来たオレ達の目的を忘れちゃいけない。
そう言えば……セルジョも今しがた言っていたな──
「そっちの目的は何だ? お前達流のご挨拶をしてくれたんだ、歓迎はしてくれたんだろう?」
「ははっ、勿論だ! なんたって、プロベンツァーノの旦那が来るのを俺は待ってたんだからな」
「待ってた?」
返ってきたセルジョの答えに、訳がわからないと首を捻る。
確かここへ来る前にカルロから聞いた話では、ドンはこのギャング集団を眼中にすらなかったと言った。
自分の縄張りでコソコソ暴れていようが、特にプロベンツァーノファミリーにとって悪害にならなければ放っていても問題ないと。
過去に何度かこいつらの存在はドンに報告はされていたみたいだが、その報告に相槌すら打たれない程度──本当にドンには興味の無い存在だった。
だからこうして接触するのは初めてであり、なにより相手にとっては逆に都合が悪いはず。
恐怖して眠れない程の相手──それも縄張りの首領が来たとなっては、自分達は追い出される側になるだろうに。
待っていたとは、どういう意味だ。
そこまで思案してから再度問うと同時に、まだ聞きたい事があったのを思い出す。
「お前達は金集めに人拐いしてる、って聞いてたんだけど──他にも目的がありそうだな。それはマフィアと関係あるのか? それに、表に運ばれた死体は何だ? どうしてあんな事をした?」
距離にして約十五メートル程離れた位置に立つセルジョを見据え、脳裏に浮かぶ疑問を淡々と問う。
それに対してセルジョは、こちらの問いひとつひとつに頷き笑顔を見せる。
一通りの質問を告げ終えると、暫し黙ってセルジョは手に持っている刃物──柄から刃先まで三十センチはあるシースナイフを、右手首を器用に跳ねさせ宙に飛ばす。
クルクルと宙を回転した刃物は、再び手元に戻る。
それを何度か繰り返し遊んだ後、飽きたのか漸くセルジョは口を開く。
「確かに俺達は──……」
だがまたしても、狙ったかのように、その声をかき消そうと被さる者が居る。
「ドン、あいつとのお話は止めにして、早くお片付けしましょう? あなたの命令さえあれば、ぼくはこいつらをパズルのピースみたいにバラバラにしてあげますよ」
「俺は関節から引き千切ってやるぜ」
「はぁ……だから、殺しは駄目だ」
「……わざとだろ? あんたら、わざと俺の言葉を遮ってるだろ!?」
「違いますよ、ドン。殺さずにバラバラにします!」
「え!? そうなのか? あー……じゃあ俺は殺さずに千切る」
「胴体をバラすな、千切るな」
「……」
相変わらず耳を疑いたくなる発言をする部下二人に、頭を悩ませ大きな溜め息が止まない。
ここに居るギャング集団との事が片付いたら、やはり部下の更生をどうにかするしかないな。
とは言えは、今この場ではこの二人の力が頼りだ。多少の事は目を瞑ろう。
そうこう話してる内にセルジョが黙ってしまったが、彼の言葉を再度待つ。
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