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凍雪国編第2章
第6話 始祖の誕生秘話2
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ロナリアが話す始祖とは、ロシュフォール帝国の礎を築いた人物である。
「始祖さまはね、今から3000年以上前にお生まれになったの」
「うん」
フレイは、合いの手を入れ、ベッドの上に座りなおして、続きを待つ。
ニアは、いつものように控えめにして、静かに聞き入っている。
「あっ、そうそう。私たちたちは、始祖さまのことを名前で呼ばずに、始祖さまとお呼びしているのだけど、フレイはその理由について聞いたことがあるかしら?」
「ううん、知らない」
「始祖さまはね、お名前がころころと変わられたの。だから、どれが本当のお名前か今でも分かっていないのよ」
「へぇ~」
「私たちは、畏敬の念を込めて、始祖さまとお呼びしているわ」
「ふ~ん」
フレイは、そういうものなんだねというように、軽く頷いて返事をする。
「始祖さまは、ロシュフォール帝国よりも遙か以前にお生まれになったの。そして、始祖さまには、お父さまもお母さまもいらっしゃらないの」
「どうして? 死んじゃったの?」
「いいえ。始祖さまは、容器の中でお生まれになったのよ」
ロナリアは、始祖が父と母からではなく、人工物の容器から誕生したことを告げる。
「よく分からない……」
フレイは、容器といわれても、想像が追いついていかない。
それは、ニアも同じで、顔に疑問を浮かべる。
「そうね。フレイやニアには、まだ早いけれど……。子供はね、お父さんとお母さんが愛し合って、授かるものなのよ」
「うん。それは知っているよ」
フレイは、素直に頷き、ニアも首を縦に振る。
「でも、始祖さまの場合は、魔法実験が行われた容器の中でお生まれになったの。だから、始祖さまには、お父さまもお母さまもいないのよ」
「お母さん、人って容器から生まれることがあるの?」
「本来は、ないわ。だって、それは神の摂理に反することだもの。だけどね、当時の研究者たちは、自分たちの手で命を作り出そうとしたの。それで、禁忌とされる魔法実験を繰り返して……。そうして、お生まれになったのが始祖さまなのよ」
始祖が誕生した魔法実験は、ベルテオーム族が寿命を延ばすために行った実験である。
この実験は、神の領域に土足で踏み入る禁じられた実験であり、人族に長命なエルフの血を混ぜて、命を誕生させるというものであった。
また、実験では、エルフのほかにも、長命な竜種や龍種、フェンリル、ユニコーンなどの血も混ぜた。
そのため、これらの種族は、実験材料のために狩り尽くされ、数千年が経った今でも人族を憎しみ続けている。
「ふ~ん」
フレイは、うまく想像できないのか、また生返事をする。
「始祖さまはね……、幾つもの失敗を重ねた上で誕生された唯一の成功例なのよ」
「ほかの子たちは、どうなったの?」
「ほとんどは、生まれることすらできずに終わったわ。なかには、運よく生まれた子もいたけれど、始祖さまみたいに長くは生きられなかったみたいね」
「なんだか、悲しいね」
フレイは、小さな命がたくさん消えていく様を想像して、言葉に言い表しきれない寂しさを感じる。
「そうね。命を弄ぶ実験だからね……。でも、その報いは、始祖さまがお与えになったわ」
ロナリアも、非人道的な魔法実験は許せない。
言葉に少し怒りを込めながらも、始祖が行ったことを話す。
「始祖さまが?」
「えぇ。始祖さまは、お生まれになったあと、研究者たちから、一方的な教育をお受けになられたの。だけど、始祖さまは、その聡明さと純真さで、善悪を正しく判断することを学ばれたのよ」
「始祖さま、えらいね」
「そうね。そして、始祖さまは、自身がお生まれになったあとも繰り返される実験を悲しみ、力を発現できるようになったあと、その実験を止めさせたのよ」
「どうやって?」
フレイは、始祖が悪い研究者をどのように粛正したのかを、ロナリアに尋ねる。
「始祖さまはね、今から3000年以上前にお生まれになったの」
「うん」
フレイは、合いの手を入れ、ベッドの上に座りなおして、続きを待つ。
ニアは、いつものように控えめにして、静かに聞き入っている。
「あっ、そうそう。私たちたちは、始祖さまのことを名前で呼ばずに、始祖さまとお呼びしているのだけど、フレイはその理由について聞いたことがあるかしら?」
「ううん、知らない」
「始祖さまはね、お名前がころころと変わられたの。だから、どれが本当のお名前か今でも分かっていないのよ」
「へぇ~」
「私たちは、畏敬の念を込めて、始祖さまとお呼びしているわ」
「ふ~ん」
フレイは、そういうものなんだねというように、軽く頷いて返事をする。
「始祖さまは、ロシュフォール帝国よりも遙か以前にお生まれになったの。そして、始祖さまには、お父さまもお母さまもいらっしゃらないの」
「どうして? 死んじゃったの?」
「いいえ。始祖さまは、容器の中でお生まれになったのよ」
ロナリアは、始祖が父と母からではなく、人工物の容器から誕生したことを告げる。
「よく分からない……」
フレイは、容器といわれても、想像が追いついていかない。
それは、ニアも同じで、顔に疑問を浮かべる。
「そうね。フレイやニアには、まだ早いけれど……。子供はね、お父さんとお母さんが愛し合って、授かるものなのよ」
「うん。それは知っているよ」
フレイは、素直に頷き、ニアも首を縦に振る。
「でも、始祖さまの場合は、魔法実験が行われた容器の中でお生まれになったの。だから、始祖さまには、お父さまもお母さまもいないのよ」
「お母さん、人って容器から生まれることがあるの?」
「本来は、ないわ。だって、それは神の摂理に反することだもの。だけどね、当時の研究者たちは、自分たちの手で命を作り出そうとしたの。それで、禁忌とされる魔法実験を繰り返して……。そうして、お生まれになったのが始祖さまなのよ」
始祖が誕生した魔法実験は、ベルテオーム族が寿命を延ばすために行った実験である。
この実験は、神の領域に土足で踏み入る禁じられた実験であり、人族に長命なエルフの血を混ぜて、命を誕生させるというものであった。
また、実験では、エルフのほかにも、長命な竜種や龍種、フェンリル、ユニコーンなどの血も混ぜた。
そのため、これらの種族は、実験材料のために狩り尽くされ、数千年が経った今でも人族を憎しみ続けている。
「ふ~ん」
フレイは、うまく想像できないのか、また生返事をする。
「始祖さまはね……、幾つもの失敗を重ねた上で誕生された唯一の成功例なのよ」
「ほかの子たちは、どうなったの?」
「ほとんどは、生まれることすらできずに終わったわ。なかには、運よく生まれた子もいたけれど、始祖さまみたいに長くは生きられなかったみたいね」
「なんだか、悲しいね」
フレイは、小さな命がたくさん消えていく様を想像して、言葉に言い表しきれない寂しさを感じる。
「そうね。命を弄ぶ実験だからね……。でも、その報いは、始祖さまがお与えになったわ」
ロナリアも、非人道的な魔法実験は許せない。
言葉に少し怒りを込めながらも、始祖が行ったことを話す。
「始祖さまが?」
「えぇ。始祖さまは、お生まれになったあと、研究者たちから、一方的な教育をお受けになられたの。だけど、始祖さまは、その聡明さと純真さで、善悪を正しく判断することを学ばれたのよ」
「始祖さま、えらいね」
「そうね。そして、始祖さまは、自身がお生まれになったあとも繰り返される実験を悲しみ、力を発現できるようになったあと、その実験を止めさせたのよ」
「どうやって?」
フレイは、始祖が悪い研究者をどのように粛正したのかを、ロナリアに尋ねる。
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