ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第3章

第73話 ミショウ村の異変2

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「おぉ……。お初にお目にかかります。私は、ビーバといい、魔嶽鋒の青帯隊長を務めております」

 ビーバは、跪いたままダイザへ体を回し、拝手して頭を垂れる。

「ご丁寧な挨拶、感謝します。しかし、今は、ミショウ村のことを教えて欲しい」

「はっ!」

 ビーバは、宗主にまみえることができ、光栄なのか、表情を輝かせて説明を始める。

「ミショウ村の結界が解けた理由は分かりません。ただ、見張りの言葉では、突然、爆発的な閃光が炸裂し、その後、幾つもの火柱が落ちていったようです」

「落ちた?」

 ダイザは、疑問を呈す。
 通常、火柱は下から上に立ち上るものである。

「はい。おそらく、何者かが飛竜に乗り、火魔法……いや、この距離からですと、炎魔法を村に向けて発動させたのだと思われます」

「火ではなく、炎ですか……」

 ダイザは、火魔法が炎魔法に格上げされると、その威力が格段に増すことを知っている。
 ミショウ村を襲った火が、ボーキョウからはっきりと見て取れたのならば、ビーバが言うように、炎魔法が使われたと見て、まず間違いがない。

「この後から私自身の目で確認しましたが、村の上空に飛竜らしき黒い点が群がり、一斉に地上へ降りて行きました。しかし、そのほとんどが、再び舞い上がることなく終わっています」

「ほとんど? 逃れたものがいたのか?」

 ルイビスが、横から口を挟む。

「はい。遠くから見た限りでは、一つの黒い点が南の方へ飛翔しています」

「その後は、どうなりました?」

 ダイザが、ビーバに続きを促す。

「それからしばらくして、村の中の火は鎮火されました。私が出発するときには、いぶされた煙だけが立ち上っておりました」

「分かりました。他に、何か変わったことはありませんでしたか?」

 ビーバは、報告し忘れていたことを思い出す。

「1つだけ……。襲撃の最後に、ミショウ村から大きな青い炎が立ち上ぼり、魔法の攻防が終わりました」

「青い炎……?」

 ダイザは、青い炎とは蒼炎のことではないかと推測する。
 しかし、村の中で蒼炎の使い手はいないはずである。
 魔法に長けたモールやホレイも、蒼炎属性を持っていない。
 不可解なことが1つ増えたが、それが村の窮地を救ったのならば、憂慮することではない。

「貴重な情報をありがとうございます。私たちが、ここに居合わせたのは偶然でした。しかし、村の危難を知ることができ、本当に感謝しています」

 ダイザは、上座から降りて、ビーバの前に膝を付き、心からの礼を述べる。

「そんな! 宗主様、お止めください」

 ビーバは、慌ててダイザに言う。

「私は、任務に従ったにすぎません」

「宗主様。ビーバへの心遣いは有り難いですが、今は、これからの行動が大事です。一旦、村へ戻られますか?」

 ルイビスは、非常事態が起きたことで、ダイザたちの護衛に魔嶽鋒をつけるつもりである。
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