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ぼんの宇宙日記(57日目)
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57日目。今日は、ジンの声が遠くなった日。
朝、ぼくは廊下で寝転がっていた。静かな船内に、微かに響くジンの声。いつもなら低くて落ち着いた音が、今日はどこか遠く感じられた。ぼくは耳を澄まして、声のほうをじっと見つめた。
ジンは通信室にいた。厚い扉の向こうから、話し声が時折漏れてくる。でもその声は、壁の奥で響く水音のようにぼんやりしていた。ぼくは扉の前に座って、しっぽを体に巻きつけながら待っていた。普段なら扉越しでも会話の輪郭がつかめるのに、今日はそのすべてが遠い。
昼、マヤが廊下を通り過ぎる。「ジン、今日も研究? 真面目だなあ」とつぶやいた。ぼくはマヤの足音を聞きながら、やっぱり通信室からジンの声が小さくしか届かないことを気にしていた。ミナが「ぼん、ジンは今忙しいみたいだよ」と優しく声をかけてくれたが、ぼくは返事をしなかった。
扉の向こうでは、ジンが何かを真剣に話している。モニターの点滅する光と、小さな機械音。それでも、ぼくが知っているジンの声はもっと近くにあるはずだった。ぼくは扉の下に鼻を寄せてみた。そこから流れてくる空気は、静かで少しだけ冷たかった。
午後、船長が通信室の前を通った。「ジン、無理はするなよ」と低い声をかける。扉の向こうで何かが動く音がしたが、やっぱり返事は遠いままだった。ぼくはそのやり取りを聞きながら、扉の前でじっと丸くなった。
夕方、ジンの声はますます遠くなった。船内の他の音が大きく感じられて、ぼくは少し寂しくなった。
夜、やっと扉が開き、ジンがゆっくりと出てきた。ぼくは足元にすり寄った。ジンは無言でぼくの頭をそっと撫でてくれた。その手の温度だけが、いつも通り近くにあった。
おやすみ、遠い声。おやすみ、近くの手。また、声が近づく日を。
朝、ぼくは廊下で寝転がっていた。静かな船内に、微かに響くジンの声。いつもなら低くて落ち着いた音が、今日はどこか遠く感じられた。ぼくは耳を澄まして、声のほうをじっと見つめた。
ジンは通信室にいた。厚い扉の向こうから、話し声が時折漏れてくる。でもその声は、壁の奥で響く水音のようにぼんやりしていた。ぼくは扉の前に座って、しっぽを体に巻きつけながら待っていた。普段なら扉越しでも会話の輪郭がつかめるのに、今日はそのすべてが遠い。
昼、マヤが廊下を通り過ぎる。「ジン、今日も研究? 真面目だなあ」とつぶやいた。ぼくはマヤの足音を聞きながら、やっぱり通信室からジンの声が小さくしか届かないことを気にしていた。ミナが「ぼん、ジンは今忙しいみたいだよ」と優しく声をかけてくれたが、ぼくは返事をしなかった。
扉の向こうでは、ジンが何かを真剣に話している。モニターの点滅する光と、小さな機械音。それでも、ぼくが知っているジンの声はもっと近くにあるはずだった。ぼくは扉の下に鼻を寄せてみた。そこから流れてくる空気は、静かで少しだけ冷たかった。
午後、船長が通信室の前を通った。「ジン、無理はするなよ」と低い声をかける。扉の向こうで何かが動く音がしたが、やっぱり返事は遠いままだった。ぼくはそのやり取りを聞きながら、扉の前でじっと丸くなった。
夕方、ジンの声はますます遠くなった。船内の他の音が大きく感じられて、ぼくは少し寂しくなった。
夜、やっと扉が開き、ジンがゆっくりと出てきた。ぼくは足元にすり寄った。ジンは無言でぼくの頭をそっと撫でてくれた。その手の温度だけが、いつも通り近くにあった。
おやすみ、遠い声。おやすみ、近くの手。また、声が近づく日を。
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