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ぼんの宇宙日記(63日目)
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63日目。今日は、ジンの手が止まった日。
朝、ぼくは操舵室の隅で丸くなっていた。ジンが機器の点検をしている音が、規則正しく船内に響く。カチカチ、カチャリ。いつものリズム。ぼくはその音を子守唄のように聞きながら、しっぽを小さく揺らしていた。
ふと、音が途切れた。静けさが突然、部屋いっぱいに広がる。ぼくは顔を上げて、ジンの様子をうかがった。彼は作業台の前でじっと立ち止まり、どこか遠くを見つめている。手にはドライバーを握ったまま、動かない。まるで時間ごと止まってしまったみたいだった。
ぼくはそっとジンの足元に近づいた。彼はぼくに気づいているのかいないのか、ただ前を見ている。船の振動、空調の音、遠くで誰かが話す声――それらすべてが、ジンの静止した時間の外側で流れているように感じた。
ジンはまだ同じ姿勢でいた。たまにまばたきをするだけで、手元は動かない。ぼくはその足元でじっと座り、ジンの静けさを身体で感じ取った。何か考え事をしているのか、それとも何も考えていないのか。その間にも船は宇宙を進み、光が操舵室の壁にゆっくりと揺れていた。
やがて、ジンは小さく息をついた。ぼくはその音に反応して、しっぽをぴんと立てた。ジンはようやくドライバーを置き、静かに窓の外を見た。その横顔は、どこか遠い星のことを思っているようだった。
「ぼん」とジンが低くつぶやいた。ぼくは返事をするかわりに、そっとジンの足に身体を預けた。ジンは無言でぼくの頭を一度だけ撫でてくれた。その手は、少しだけ震えていた。
しばらくすると、ジンは再び手を動かし始めた。機器の音がまた船内に戻る。でも、あの止まっていた時間だけは、ほかの日と違う特別な静けさを残した。
夜、ぼくは操舵室の窓辺で眠った。ジンの手が止まった時間のことを思い出しながら、船が静かに進む音を聞いていた。
おやすみ、止まった手。おやすみ、静止の時間。また、心が動き出す日を。
朝、ぼくは操舵室の隅で丸くなっていた。ジンが機器の点検をしている音が、規則正しく船内に響く。カチカチ、カチャリ。いつものリズム。ぼくはその音を子守唄のように聞きながら、しっぽを小さく揺らしていた。
ふと、音が途切れた。静けさが突然、部屋いっぱいに広がる。ぼくは顔を上げて、ジンの様子をうかがった。彼は作業台の前でじっと立ち止まり、どこか遠くを見つめている。手にはドライバーを握ったまま、動かない。まるで時間ごと止まってしまったみたいだった。
ぼくはそっとジンの足元に近づいた。彼はぼくに気づいているのかいないのか、ただ前を見ている。船の振動、空調の音、遠くで誰かが話す声――それらすべてが、ジンの静止した時間の外側で流れているように感じた。
ジンはまだ同じ姿勢でいた。たまにまばたきをするだけで、手元は動かない。ぼくはその足元でじっと座り、ジンの静けさを身体で感じ取った。何か考え事をしているのか、それとも何も考えていないのか。その間にも船は宇宙を進み、光が操舵室の壁にゆっくりと揺れていた。
やがて、ジンは小さく息をついた。ぼくはその音に反応して、しっぽをぴんと立てた。ジンはようやくドライバーを置き、静かに窓の外を見た。その横顔は、どこか遠い星のことを思っているようだった。
「ぼん」とジンが低くつぶやいた。ぼくは返事をするかわりに、そっとジンの足に身体を預けた。ジンは無言でぼくの頭を一度だけ撫でてくれた。その手は、少しだけ震えていた。
しばらくすると、ジンは再び手を動かし始めた。機器の音がまた船内に戻る。でも、あの止まっていた時間だけは、ほかの日と違う特別な静けさを残した。
夜、ぼくは操舵室の窓辺で眠った。ジンの手が止まった時間のことを思い出しながら、船が静かに進む音を聞いていた。
おやすみ、止まった手。おやすみ、静止の時間。また、心が動き出す日を。
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