ぼんの宇宙日記

ぼん

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ぼんの宇宙日記(62日目)

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62日目。今日は、ミナの声が揺れた日。

朝、ぼくは植物室の前で丸くなっていた。ガラス越しに差し込む光の中で、ミナがひとり、葉っぱにそっと手を伸ばしている。彼女はいつも通り、植物に小さく話しかけていた。でも、今日はその声がほんの少しだけ震えていることに、ぼくは気づいた。

「大きくなったね、元気だった?」ミナの声は、ふだんよりもやわらかく、でもどこか不安げだった。葉っぱをなでる手も、少し力が入っている。ぼくは静かに立ち上がり、ミナの足元に歩み寄った。
ミナはぼくの存在に気づくと、ふっと微笑んだ。「おはよう、ぼん。見て、この葉っぱ……昨日より大きくなったんだよ」と話しかけてくる。でも、その言葉の端にも、かすかな揺れが残っている。ぼくはしっぽを軽くふり、静かに見守った。

昼、ミナは何度も植物に水をやり、何度も葉を撫でていた。ときおり「大丈夫だよ」と自分に言い聞かせるような声も混じる。ぼくはその声の波をじっと聴いていた。ミナの声は、まるで船内に流れる小さな風みたいに、弱くて透明だった。
やがて、マヤがやってきて「ミナ、大丈夫?」と優しく尋ねた。ミナは「うん、大丈夫」と答えたけれど、声はやっぱり揺れていた。ぼくはミナの膝にあごを乗せてみる。ミナはぼくの頭をそっと撫で、「ありがとう、ぼん」と小さくささやいた。その指先にも、言葉にも、温度と不安が同時に混ざっていた。

夕方、ミナはまた植物に話しかけていた。「もうすぐ花が咲くかな……」と期待を込めた声。でも、その期待もどこかおそるおそるだった。ぼくは葉っぱとミナの間でじっと座り、静かな空気の流れに身を委ねた。

夜になって、ミナはようやく少しだけ表情をやわらげた。「明日はきっと、いい日になるよね」と、植物にもぼくにも言い聞かせるようにつぶやいた。ぼくはしっぽを巻き、ミナのそばで目を閉じた。声の揺れはまだ残っていたけれど、その優しさがぼくの胸にも静かにしみこんだ。

おやすみ、揺れた声。おやすみ、そっと伝わるぬくもり。また、声が強くなる日を。
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