雑貨屋ヤマーダの日々

ぼん

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「未来への架け橋」

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帳簿を整理していると、店の扉が勢いよく開いた。

「山田さん!ちょっと、話を聞いてほしくて!」

入ってきたのは、町の若者たちだった。先頭の青年が、一枚の地図を広げてみせる。

「実は……この町に、観光案内所を作ろうって話が出ているんです!」

「……いやいや、いきなり? 観光案内所って大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃないから、山田さんに相談しているんですよ!」

「いや、それはそれでプレッシャーなんだけど!?」

とりあえず話を聞くと、発端は町に立ち寄った旅人の言葉らしい。

「この町って、あったかくて面白くて、すごく魅力的ですよね。もっとたくさんの人に知ってもらえたらいいのに」

その一言が、住民たちの心に火をつけたらしい。

「で、どうしてうちの雑貨屋に?」

「だって、山田さんの店って、もう町の“名所”になっていますから!」

「名所!?いや、商品がたまに暴走するだけの店なんだけど!?」

「それが面白いんです!」

──こうして、案の定というかなんというか、話は町の中心で“発信力のある拠点”を作ろうという流れになった。そして、そのモデルケースとして俺の店が参考にされるという、ぶっ飛んだ話がきたというわけだ。

「つまり、俺の雑貨屋が“未来への架け橋”になるかもしれないってこと?」

「はい!」

「いやいや、語感はいいけどプレッシャーすごいな……」

だが、真っ直ぐな目で訴えてくる若者たちを見ていると、なんだか断れなくなってしまった。

「……分かったよ。できる範囲で協力する。無理はしないけどな!」

「ありがとうございます!じゃあさっそく会議を――」

「え、今から!?」

気づけば、町の広場の一角にテーブルが並び、即席の会議場が出来上がっていた。
ルファはちゃっかりお茶とクッキーを用意しているし。

「お前、どこまで話聞いてた!?」

「全部♪」

住民たちが集まり始め、案内所計画の議題が本格的に動き出す。

「町の魅力を伝えるには、 “伝説”とか“逸話”とか、そういうのをまとめたらどうだ?」

「 “幻獣の足跡マップ”とか、作ったら面白くない?」

「案内所で売るお土産、ヤマーダ製で!」

「いやいや、うち、なんでも屋じゃないからな!? ……っていうか、否定する気力がなくなってきた……」

会議は予想以上に白熱した。

「幻獣スタンプラリーとかどう?町を巡る理由になるし!」

「町の昔話、朗読劇にして広場で上演するのもいいかも!」

「いやいや、みんなの発想が自由すぎるって!誰が脚本書くんだよ、演出は!?ってか、誰が演じるの!?」

「ルファに決まっているでしょ」

「えっ、私!?台詞覚えるの苦手なんだけど~!」

「俺は無理だからな!? “ナレーション山田”とか絶対やらんからな!」

笑いとツッコミが飛び交うなか、だんだんと町の人たちの表情が明るくなっていくのが分かった。

この町に、こんなに情熱があったんだ。こんなに“変えていきたい”って思っている人がいたんだ。
──俺の心に、静かに何かが灯る。

「……よし。じゃあ、試作的に“雑貨屋ヤマーダ式案内所ミニブース”を作ってみるか」

「えっ、ほんとに!?やった!」

「ただし、うちの店の片隅に一角だけな!無理はしない!暴走商品展示は禁止!」

「 “現在沈黙中の喋る茶碗”は展示OKですか?」

「微妙なラインを攻めるな!!」

さっそくルファが“手書き風マップ”や“謎の幻獣グッズ”を並べ始め、クッキー片手にプレゼンを始める。
俺はその様子を眺めながら、ふと思った。

「……こうやって誰かと一緒に、未来のことを考えるのって、いいもんだな」

いつの間にか、俺の“居場所”は、この町になっていた。静かで、あたたかくて、でも少しずつ変わっていくこの町が、ちょっと誇らしい。

その日の夕暮れ、幻獣が店の前にふらりと現れた。

「お、久しぶり。今日は何か用か?」

幻獣は店の看板を見上げたあと、俺をじっと見つめた。

「……ふふん。お前も思っているのか?この店、なかなか頑張っているって」

幻獣は静かに頷いたような気がした。
その姿を見て、俺は決意した。

「よし。俺も、この町の“未来への架け橋”になってみるか」

ルファが後ろからひょこっと顔を出す。

「山田、看板の下に“案内所協力店”って札、つけていい?」

「……もう勝手にやってるんだろ?」

「さすが山田、察しが早い!」

「いやいや、褒められている気がしないんだけど!」

広場では子供たちが幻獣の足跡マップを広げて遊んでいた。

案内所の本格運営は、きっとまだ先だろう。でも、未来への小さな一歩は、もう始まっている。

俺は看板を見上げながら、心の中で呟いた。

「……これからも、この町で頑張らないとな」

店の中から、ルファの声が響いた。

「山田ー! “幻獣クッキー改良版”の試食、いるー?」

「いやいや、前のやつ砂みたいだっただろ!?もっと美味くなってるんだろうな!」

町の夜空には、今日も笑い声が響いていた。
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