雑貨屋ヤマーダの日々

ぼん

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「町の危機と団結」

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「なんか空気が変じゃないか……?」

朝、店の前で掃除をしていた俺は、ふと手を止めた。空は晴れている。風も気持ちいい。なのに──空気がピリついている。

「山田さーん!」

駆け寄ってきたのは、魚屋のおじさん。額に汗をにじませて、息を切らしている。

「ど、どうしたんですか?」

「川が……川の水が、止まっちまったんだよ!」

「は!? いやいや、川って止まるのか!? 水道じゃないんだから!」

「とにかく来てくれ!見りゃ分かる!」

呼ばれるがままに川へ向かうと、そこには信じられない光景が広がっていた。

「いやいやいやいや……マジで止まってる……」

町を流れる小川が、途中からピタリと流れを止めていた。水面は鏡のように静まり返り、まるで時間が凍ったかのようだ。

「昨日の夜までは普通に流れていたんだが、今朝になったらこの通りでな……」

「原因は……?」

「分からん。上流も見に行ったが、異常なし。ただ、なんか、森の方が……変な音がしてたらしい」

「いやいや、また森かよ!異世界の森、トラブル起こしすぎじゃない!?」

そこへ、ルファが現れた。お約束のようにパンをかじりながら。

「山田ー。ねえ知ってる?川が止まってるって噂」

「今まさに目の前でそれを見てるところだよ!」

「じゃあ、調査隊、再結成だね!」

町にとって水は命だ。農業にも生活にも欠かせない。すでに住民たちは集まり始めていて、不安そうな声が飛び交っていた。

「これじゃ畑が干上がっちまう……」

「風呂の水、昨日の残りでしのげるかしら……」

「店で使う水もなくなったら、営業できなくなるぞ」

町の広場が、徐々に“非常時”の空気に染まっていく。

「こりゃ、ただ事じゃないな……」

俺は、覚悟を決めた。

「よし、調査行くぞ。原因を突き止めて、元通りにしてやる!」

「わぁ、山田、やる気ある~!」

「いや、俺の店の茶碗も洗えなくなるんだよ!死活問題なんだよ!!」

ルファとともに、魔法に詳しい老人、動物と心を通わせる少女、そしてただの好奇心旺盛な若者たちが、調査隊として同行することになった。

「このメンバー……前にも見た気がする……いや、まあいいか!」

そうして、町の水を取り戻すための“小さな冒険”が始まったのだった。
森の中は、静かすぎた。

「なんか……音がしないな」

「うん。風の音も鳥の声も、全部消えてる感じがする」

ルファの言葉に俺も同意する。普段なら鳥のさえずりや草木のざわめきが聞こえてくるはずの森が、まるで呼吸を止めてしまったように沈黙している。

そんな中、魔法に詳しい老人が小声で呟いた。

「……ここだ。昔、同じように川が止まったことがあってな……この先に、不思議な石碑があったはずだ」

「いやいや、なんでそれ先に言わなかったんですか!?」

石碑の場所まで進むと、確かにそこには、苔むした石の柱が立っていた。表面には見慣れない文字が刻まれていて、そこから、ぼんやりと紫色の光がにじみ出ている。

「これ……魔力の流れを妨げている?」

ルファが額に手を当て、集中する。

「うん、間違いない。この石碑、地下に広がる魔力の管を“締めて”るみたい」

「水道の元栓を締めるなよ!」

「でも……これ、最近誰かがいじった形跡があるよ」

「……誰が?何のために?」

ルファは石碑の周囲を調べる。そこには獣のような足跡と、妙に焼け焦げた草の跡が残っていた。

「魔獣だな……魔力を喰うタイプのやつかもしれない」

「いやいや、そういうのは冒険者の仕事でしょ!?なんで雑貨屋の俺が毎回出張ってんの!?」

とはいえ、放っておけるわけもなく、住民たちと力を合わせて石碑の封印を解除する方法を探ることになった。

魔法に詳しい老人の持ってきた古文書、動物と心を通わせる少女が持つ不思議な葉、好奇心旺盛な若者がなぜか持っていた“音に反応する小鳥型アイテム”。

「このメンツ、やっぱり前も似たようなことしてたな……」

それぞれの知識と得意分野を活かし、石碑に対する“共鳴解除”の儀式が始まった。

「じゃあ、俺がこの葉っぱをかざして……ルファが呪文唱えて……小鳥が音に反応して……って、おい、これ成功率どのくらいなんだよ?」

「五分五分?」

「いやいや、ギャンブルすぎるだろ!?」

……結果から言おう。成功した。
石碑の光がふっと消え、地下から風のような流れが吹き抜けた。

「これで……川、戻るかな」

森を抜け、川のほとりに戻ると──

「流れてる!」

町の子供たちが歓声を上げ、大人たちも拍手し始めた。止まっていた川が、ふたたびきらめきながら流れを取り戻していた。

「やった……俺たち、やったぞ!」

町に戻ると、住民たちが温かく迎えてくれた。

「山田さん、ありがとう!」

「やっぱり頼りになるわ!」

「いやいや、俺、ただの雑貨屋だからな!?」

その夜、町の広場で即席の“感謝の夕べ”が開かれた。焚き火のまわりには料理が並び、子供たちの笑い声が響く。

ルファは木箱を持って現れた。

「山田、今日の騒動にちなんで“流れる器”っていう新商品作った!」

「名前からして嫌な予感しかしないんだけど!?」

でも──町の人々の笑顔を見て、俺は思った。

「……悪くないかもな、こういう騒動も」

人と人とが繋がって、助け合って、笑い合う。雑貨屋「ヤマーダ」は、今日もまた、誰かの生活にちょっとだけ彩りを加える場所になっていた。

俺は空を見上げながら、つぶやいた。

「これからも、この町で、がんばらないとな」

ルファが横から、ニヤニヤしながら言った。

「山田、次は“空が止まる事件”とか来ないかな~」

「やめてくれえぇぇぇぇぇ!!」
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