雑貨屋ヤマーダの日々

ぼん

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「新たな挑戦と成長」

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「よし、今日は――新商品開発日だ!」

朝から気合いを入れた俺は、店のカウンターに広げた紙に“やりたいことリスト”をずらりと書き並べた。

「ルファー!今日こそは真面目にアイデア出すぞー!」

「えっ、今日って“新商品ふわっと考える日”じゃなかったっけ?」

「そんなゆるい日あるか!」

そう、このところ俺たちの雑貨屋「ヤマーダ」は好調だった。商品は好評、住民からの注文も増えてきた。だが――ここで満足してはいけない。雑貨屋は進化し続けなければならないのだ!

「というわけで、今回は“便利だけどちょっと楽しい”系を目指す」

「なるほど。じゃあ、 “浮かぶ掃除布”とかどう?」

「いや、それどこまで浮くの!?空中分解したらどうすんだよ!」

「じゃあ“しゃべるミトン”。料理中に応援してくれるの」

「いやいや、ただでさえ鍋と格闘してるのに横から『がんばって!』とか言われたら集中できないだろ!」

「じゃあ、がんばらない方向で“癒しのミトン”にする?」

「……ちょっとそれ、悪くないかもしれない」

そうして生まれたのが、「癒しのミトン(仮)」だった。

手にはめると、ほんのりあったかくなって、編み込まれた魔法糸が心拍に合わせてやさしく振動する仕組み。疲れている人ほど気持ちよく感じるらしい。

「これ、実験してみるか」

俺はミトンを手にはめてみた。

「おぉ……なんか、手のひらでおふとん抱えてるみたいな感覚……」

「ふふっ、山田がうっとりしてるの、珍しい」

「いやいや、違うって!これはほら、技術者としての感動であって……」

そのとき、店の扉がガラリと開いた。

「すみません、山田さん!頼みがあって――」

駆け込んできたのは、鍛冶屋の若旦那だった。汗だくで、手には何かの設計図。

「ちょっと困ったことになりまして……これ、見てもらえませんか?」

差し出されたのは、複雑な魔力回路が描かれた設計図だった。

「これ……かなり高度な魔道具の図面だな。鍛冶屋さんが作るには、ちょっと魔力制御が難しすぎる気がするけど……」

「はい、正直、町の技術だけじゃ無理があるかと。でも、どうしてもこれが必要で……」

「何に使うんだ?」

「町の水門です。最近の水量変化に対応するために、魔力で自動調整できる仕組みにしたいんです」

「……なるほど。つまり、町のために?」

「はい!」

「分かった。力を貸すよ」

「ありがとうございます!」

横でルファがにやりと笑う。

「新商品開発、延期だね」

「いやいや、こういうのも“挑戦”ってやつだろ!」

俺は、設計図を抱え、店の奥の作業机へと向かった。

設計図を見つめながら、俺は呟いた。

「いやいや……これ、難易度高すぎないか?」

描かれているのは、水門の開閉を魔力の流れで制御する複雑な回路。そして、誤作動を防ぐための“感応式魔法信号フィルター”……って、名前からしてイヤな予感しかしない。

「山田、眉間にシワ寄ってるよ~。大丈夫?」

「いや、寄るだろ普通!?魔道具職人でも唸るぞ、この構造!」

「でも、挑戦なんでしょ?」

「ぐぬぬ……くそ、やるしかないか……!」

まずは、回路の要になる“魔力共振結晶”の代替素材を探すところから始めた。町の工房を巡り、古い魔石の在庫を掘り出し、ルファの実験アイテムを分解し……。

「ルファ、これ使っていいか?」

「それ“幻獣の涙”を再現しようとして失敗したやつだけど、いいよ!」

「……お前、何作ろうとしてたの……?」

とにかく、町中の知恵と素材をかき集めて、試作を始める。

一度目の試作は、火花を散らして失敗。
二度目は、魔力が暴走して店のランタンが踊り出す。
三度目は、何も起きず。

「いや、反応なしかい!!」

「山田、ここでくじけちゃダメ!」

「誰がくじけてるか!……って、俺、今“成長フラグ”立てられてない!?」

町の住民たちも、次第に協力してくれるようになった。

「これ、昔うちのじいちゃんが使っていた魔導金属よ」

「山田さん、失敗しても応援していますから!」

「子供たちが“水門マン”ってあだ名つけていました!」

「いやいや、それはちょっと恥ずかしい!!」

――そして、五度目の試作。
魔力を流すと、設計通りに結晶が反応し、信号を受けて水門が“ゆっくり”開いた。

「……やった。やったぞ!」

歓声が上がる。鍛冶屋の若旦那が、手をぎゅっと握りしめていた。

「山田さん、本当に……ありがとうございました!」

「いや、俺ひとりの力じゃない。町のみんながいてくれたからだ」

俺の言葉に、周囲があたたかく笑った。
そしてその夜。店の片隅で、俺は“癒しのミトン”を再び手にはめていた。

「……なんか、いつもより、あったかく感じるな」

ルファが横に座りながら言った。

「山田ってさ、最初は“便利な雑貨で異世界ライフ”って言ってたじゃん。でも最近、 “町の課題に真正面から向き合っている”よね」

「いやいや、そんな意識高いこと考えてないって……ただ、放っとけないだけで……」

「うん、でもそれが“成長”だと思うよ」

ルファの笑顔を見ながら、俺はそっと目を閉じた。

「……次は、何を作ろうかな」

まだ見ぬ課題が待ち受けているかもしれない。でも、それを“挑戦”に変えていける今の自分なら、きっと大丈夫だ。

「よーし、次は“空飛ぶスリッパ”だ!」

「それはやめとけ!!」

店に笑い声が響いた。

明日も、きっと面白くなる。
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