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「僕らの町、明日への店先」
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春の風が、町の空気をやさしく撫でていた。
案内所の前には、見慣れない旅装の人々と、馴染み深い住民たちが肩を並べて立ち、何かを指差しながら楽しげに話している。
雑貨屋の前も、開店前からにぎやかだった。
「山田さん、今日も“幻獣マップ”見せていい?」
「この“香り袋”、前に手紙に書いてあったやつですよね?」
「また来ちゃいました。やっぱり、ここの空気、好きだなあ」
山田は笑いながら、看板を出し、扉を開けた。
「ようこそ。雑貨屋ヤマーダ、今日も開店です」
朝日が棚の上を照らし、商品たちが小さくきらめいた。
町の広場では、住民たちによる“未来を語る集会”が始まろうとしていた。
きっかけは、旅人から届いた一通の手紙。そしてそれに心を動かされた町の人々の連鎖反応だった。
「この町をもっと元気にしたい!観光地として有名になったって、悪いことじゃないと思うの!」
「けど、静かな日常を手放すのは……ちょっと怖いよなあ」
「それぞれの暮らしがあって、その中で町が形作られてきたんだもんね」
若者たち、子どもたち、年配の住民までが輪になり、思い思いの“町の未来”を語る。
山田はその輪の少し外で、静かに見守っていた。
ルファが隣でぽつりとつぶやく。
「昨日の焚き火で、山田が言ってた“守りたいもの”……あれ、きっと、町のみんなにもあるんだね」
「……そうだな。俺の想いは昨日、話した。でも今は、みんなの番だ」
山田は輪の中心に行こうとはせず、耳を澄ませていた。
「私はね、この町に嫁いできたとき、最初は不安でいっぱいだったの。でも、住民のおばあちゃんが“ようこそ”って笑ってくれて──それで、この町が好きになったの」
「俺は子どものころ、近所の店先の紙芝居が好きでさ……こんな場所がずっとあったらいいって、思ってたんだ」
「外の人が来てくれるのは嬉しい。でも、何より“この町に住んでる自分たち”が、笑って暮らせる未来がいい」
誰も否定しない。
誰の声も、真剣だった。
そして、自然と視線が山田に向けられた。
「山田さんは、どう思う?」
山田は、少し笑って応えた。
「……俺は、もう決めてるよ。でも今日は、みんなの声を聞きたくて、ここにいるんだ」
それを聞いて、場にやさしい空気が流れた。
「山田に任せるんじゃなくて、みんなで作っていく……そういう町にしたいよね」
「 “雑貨屋ヤマーダ”が、そういう気持ちの“橋”になってくれる気がする」
誰かがそう言うと、何人ものうなずきが重なった。
「 “変わる”って、誰かに決めてもらうんじゃなくて、自分たちで選んでいくことだよね」
そして、町は少しずつ“未来への一歩”を踏み出し始めていた。
「……というわけで、雑貨屋の一角に“町の伝言板”を作ってはどうでしょうか!」
広場の集会は“アイデア発表会”のような熱気に包まれていた。
「観光客の人も自由に書けるノートとか、ほら、ありますよね。旅の感想とか、町の人へのメッセージとか!」
「 “幻獣マップ”も、山田さんのとこで更新してくれたら、案内所の人たちも助かるって!」
「町の人が手作りした小物とか、棚の一角で展示販売できないかな。ほら“地元愛コーナー”!」
「おいおい、どこまで店の棚を侵食する気だ……!」
山田の思わずのツッコミに、周囲からどっと笑いが起きる。
けれど、その笑いの奥には、確かな想いがあった。
この町に、何かを残したい。この町で、誰かとつながりたい。
それは山田が、この雑貨屋で抱いてきた願いと、同じものだった。
数日後。
雑貨屋ヤマーダの一角に、新しく設けられた“伝言棚”には、すでに色とりどりの便箋が貼られていた。
「今日、この町でプロポーズしました! ありがとう、あたたかい町!」
「幻獣マップ、ほんとに出会えた!感動!」
「山田さんの“ぶっきらぼうだけど親切”な接客、最高でした!」
「え、親切はいいとして“ぶっきらぼう”って誰のこと……?」
棚の下に置かれたノートにも、訪れた人々の言葉が綴られていた。ページをめくるたび、山田はひとり、くすっと笑ってしまう。
その様子を、ルファが背後から覗き込んだ。
「楽しそうだね、山田」
「……まあな。なんか“自分の知らない雑貨屋ヤマーダ”がここにある感じだ」
「……ほら、今日も新しい一日が始まるよ」
山田は一息ついて、カウンターをひと拭きする。
そして、いつものあの言葉を静かに口にした。
「雑貨屋ヤマーダ──今日も開店!」
【終】
ーーーーーーーーーーーーーー
物語はここで終わります。 でも、あなたが読んでくれたことが、この世界に風を吹かせました。最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
案内所の前には、見慣れない旅装の人々と、馴染み深い住民たちが肩を並べて立ち、何かを指差しながら楽しげに話している。
雑貨屋の前も、開店前からにぎやかだった。
「山田さん、今日も“幻獣マップ”見せていい?」
「この“香り袋”、前に手紙に書いてあったやつですよね?」
「また来ちゃいました。やっぱり、ここの空気、好きだなあ」
山田は笑いながら、看板を出し、扉を開けた。
「ようこそ。雑貨屋ヤマーダ、今日も開店です」
朝日が棚の上を照らし、商品たちが小さくきらめいた。
町の広場では、住民たちによる“未来を語る集会”が始まろうとしていた。
きっかけは、旅人から届いた一通の手紙。そしてそれに心を動かされた町の人々の連鎖反応だった。
「この町をもっと元気にしたい!観光地として有名になったって、悪いことじゃないと思うの!」
「けど、静かな日常を手放すのは……ちょっと怖いよなあ」
「それぞれの暮らしがあって、その中で町が形作られてきたんだもんね」
若者たち、子どもたち、年配の住民までが輪になり、思い思いの“町の未来”を語る。
山田はその輪の少し外で、静かに見守っていた。
ルファが隣でぽつりとつぶやく。
「昨日の焚き火で、山田が言ってた“守りたいもの”……あれ、きっと、町のみんなにもあるんだね」
「……そうだな。俺の想いは昨日、話した。でも今は、みんなの番だ」
山田は輪の中心に行こうとはせず、耳を澄ませていた。
「私はね、この町に嫁いできたとき、最初は不安でいっぱいだったの。でも、住民のおばあちゃんが“ようこそ”って笑ってくれて──それで、この町が好きになったの」
「俺は子どものころ、近所の店先の紙芝居が好きでさ……こんな場所がずっとあったらいいって、思ってたんだ」
「外の人が来てくれるのは嬉しい。でも、何より“この町に住んでる自分たち”が、笑って暮らせる未来がいい」
誰も否定しない。
誰の声も、真剣だった。
そして、自然と視線が山田に向けられた。
「山田さんは、どう思う?」
山田は、少し笑って応えた。
「……俺は、もう決めてるよ。でも今日は、みんなの声を聞きたくて、ここにいるんだ」
それを聞いて、場にやさしい空気が流れた。
「山田に任せるんじゃなくて、みんなで作っていく……そういう町にしたいよね」
「 “雑貨屋ヤマーダ”が、そういう気持ちの“橋”になってくれる気がする」
誰かがそう言うと、何人ものうなずきが重なった。
「 “変わる”って、誰かに決めてもらうんじゃなくて、自分たちで選んでいくことだよね」
そして、町は少しずつ“未来への一歩”を踏み出し始めていた。
「……というわけで、雑貨屋の一角に“町の伝言板”を作ってはどうでしょうか!」
広場の集会は“アイデア発表会”のような熱気に包まれていた。
「観光客の人も自由に書けるノートとか、ほら、ありますよね。旅の感想とか、町の人へのメッセージとか!」
「 “幻獣マップ”も、山田さんのとこで更新してくれたら、案内所の人たちも助かるって!」
「町の人が手作りした小物とか、棚の一角で展示販売できないかな。ほら“地元愛コーナー”!」
「おいおい、どこまで店の棚を侵食する気だ……!」
山田の思わずのツッコミに、周囲からどっと笑いが起きる。
けれど、その笑いの奥には、確かな想いがあった。
この町に、何かを残したい。この町で、誰かとつながりたい。
それは山田が、この雑貨屋で抱いてきた願いと、同じものだった。
数日後。
雑貨屋ヤマーダの一角に、新しく設けられた“伝言棚”には、すでに色とりどりの便箋が貼られていた。
「今日、この町でプロポーズしました! ありがとう、あたたかい町!」
「幻獣マップ、ほんとに出会えた!感動!」
「山田さんの“ぶっきらぼうだけど親切”な接客、最高でした!」
「え、親切はいいとして“ぶっきらぼう”って誰のこと……?」
棚の下に置かれたノートにも、訪れた人々の言葉が綴られていた。ページをめくるたび、山田はひとり、くすっと笑ってしまう。
その様子を、ルファが背後から覗き込んだ。
「楽しそうだね、山田」
「……まあな。なんか“自分の知らない雑貨屋ヤマーダ”がここにある感じだ」
「……ほら、今日も新しい一日が始まるよ」
山田は一息ついて、カウンターをひと拭きする。
そして、いつものあの言葉を静かに口にした。
「雑貨屋ヤマーダ──今日も開店!」
【終】
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物語はここで終わります。 でも、あなたが読んでくれたことが、この世界に風を吹かせました。最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
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