旅する創造主――アノンの世界観

ぼん

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伝承時代:星見の岬フィラリア・魔王と勇者伝説

【星見の岬フィラリア・魔王と勇者伝説】 プロローグ:「神々の対話」

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 外なる領域――。

 世界と世界のはざまは、形を持たぬ光と影が静かに重なり合っていた。音も匂いも乏しいその空間は、ただ原初の静けさだけが満ちている。

 名もない風が星々の狭間を巡り、淡い揺らぎが闇に滲んだ。

夜と昼の境はまだ曖昧で、どこかでひとつの『祈り』が芽吹こうとしていた。

 遥か遠く――星見の岬フィラリア。

そこへ集まる命の気配が微かな震えとなって、この領域へと染み入ってくる。

 私は、この場所でその揺れを見つめていた。

 過去も未来も、呼吸を潜めたまま静かに交差する。

風はまだ言葉を持たず、それでも誰かの想いをたしかに運んでくる。

 星々は淡く光りはじめ、祈りを受け止めるためにその瞬きの色を変えていく。

 私は問いかけた。

――希望は、どこから芽吹くのだろう。

――祈りは、なぜこの世界へと託されるのだろう。

 始まりの静けさの奥で、世界は目覚めを待っている。

 私は、そっと視線を上げた。

 そのとき、光の欠片が集い、私の周囲に暖かい気配が満ちていく。

創造主の使いたちがここに集まった。

 統括のエリウス。

 秩序を司るオルド。

 命の流れを宿すラクシア。

 沈黙と再生のヴァルガ。

 時の彼方を見つめるイスト。

 そして、大精霊たち。

 彼らは、それぞれの属性が宿す自然律そのもののように、淡く揺らめきながら場を満たした。

 外なる領域には、静かな共鳴が広がっていく。

 時代のはじまりを見守る者たちの呼吸が、ひとつの調和となって重なりあった。

 すべての問いは、この静けさから始まる。

 希望も恐れも、命の祈りも、やがて誰かの物語へと姿を変える。

 創造主の使いたちと大精霊たちは、言葉少なに視線を交わし、わずかな気配の揺らぎで思考を伝えあった。

 風の温度や星の瞬き、光の淡い移ろい――それらが語る無言の対話。

 まさに、この世界の『根』にある呼吸そのものだった。

 やがて、エリウスが私に視線を向ける。

「アノン様。時代の端に、新たな鼓動が生まれています。希望と恐れ……その両方が、世界の底でせめぎあっているようです」

 その声音には、静かな確信が宿っていた。

 私はゆっくりと頷く。

「世界は揺らぎのなかで生まれ、選びながら歩いてきた。祈りは夜を裂き、星の道となり……だが、希望と恐れはいつも寄り添う。誰もがそのはざまで手を伸ばす」

 オルドは眉を寄せ、短く頷いた。

 ラクシアは穏やかな眼差しで私を見る。

「秩序も命も、選ばれることを願っているのかもしれません」

 ラクシアの声は、草原を渡る風のように柔らかかった。

「生まれゆく命は、皆それぞれの物語を抱えて芽吹きます。祈りはやがてつながりとなり、世界に根づいていくのでしょう」

 ヴァルガは沈黙を選び、胸の奥で短く息を吐く。

 イストは、遠い未来の流れを聴くように目を閉じていた。

 大精霊たちは自然律そのものの存在として、言葉を持たぬ意志を光や揺らぎに託し、この場と静かに響き合っている。

 その様は、始まりと終わりを包み込む大地のようでもあり、まだ名もない物語をささやく風のようでもあった。

 私は祈りと問いの狭間に立ち止まる。

――この世界のどこかで、またひとつ新しい『冒険』が芽生えようとしている。

 その気配は、星見の岬の遥か遠くから、確かにこの外なる領域にまで届いていた。

 わずかな鼓動が胸の奥でひとつ響く。それは不安でも期待でもなく、まだ形を持たない未来が静かに羽ばたこうとする前触れのようだった。

――勇気とは、恐れを知り、それでも前へ進む選択なのだろうか。

――祈りとは、命の連なりから生まれる小さな灯火なのだろうか。

 誰も、その答えを急がない。

 誰かが歩み始める瞬間を、ただ受け止めるように見守っている。

 沈黙の奥で、ひとつの時代がそっと動き出した。

 星々は淡く輝き、風は世界の端から端へと新しい息吹を運ぶ。

 祈りは形を持たぬまま、やがて『物語』へと変わっていく。

 私はもう一度、そっと問いかけた。

『始まりの静けさ』の奥で、誰かの願いが未来を照らし出す。

 世界は今日も、選択と祈りの交差点で、静かに目覚めていく。

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