学校の怪談

結城朔夜

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第二章 想いの壁

case.19

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愛鈴の話を聞いて、複雑な状況が絡み合っている中で、真相がどこかに隠されているのではないかと、何度も頭の中で反芻させて。
仮説はあくまでも仮説に過ぎず、真相までには至らない。
何か見落している部分はないか?
愛依は目を閉じて、そしてふと思い出したようにポケットの中に入れていたタロットカードを取り出した。
そして徐にカードを1枚引いてみた。

「正位置の、月………か。これは一体どういう意味かしら?疑心暗鬼、誤解、………親友の裏切り?」
「え?親友の裏切りって、そんな意味もあるの?」
「ええ、対人関係に関する捉え方だと、そう言う解釈もあるのよ。でも………愛鈴さん、こんな質問はあまりしたくないけれど………。仲のよかった友人はいましたか?」
『友人………、か。そこまで仲がよかったとか、そう言うのじゃないけど………一人だけ居たわ』
「その人のこと、何か思い出せることありませんか?名前とか、好きなものとか」
『同じ芸術関係で親しくなったって子とは覚えているのだけれど………。確か、その子は絵を描くのがすごく好きで、いつも何かをスケッチしていたと思うわ。名前は、なんて言ったかしら………?』

そう言って愛鈴はその子の名前を思い出そうと、考える仕草をして。
するとふと由宇が何かを思い出したように「あれ?」っと声を上げた。

「絵を描くのが好き………。そういや、以前巫子達の件でお世話になった子も絵を描くのが得意だったよな。名前はたしか………紅映、だったっけ?」
『”くれは”………?そう言えば、あの子の名前も”くれは”って言っていたような………』
「え?本当ですか?」
『ええ、確かにそう言っていたような気がするわ』
「これも偶然………?それとも、もしかして………」
「まさか、ね………」

由宇が言いたいことを察した愛依はそう返すが、他のメンバーには意味が伝わってないようで、簡単に説明した。

「前に旧校舎に入ったときにも異空間に飛ばされたことあっただろ?その時に美術室で一緒に居た子が四縞紅映って名前だったんだけど、覚えてない?」
「ああ、そう言えばそんなコトもあったね。言われてみれば、その子も確かに絵を描くのが得意だったし………まさか、同一人物?」
「それはまだわからないけど、確かめてみる価値はあるよな」
「そうね。それでもし同一人物だったなら、何か知っているかもしれないし………。と言うことで巫子、今の話聞いてた?」

愛依はいつも持ち歩いていた手鏡に声を掛けると、巫子はすぐに返事をして姿を見せた。

『大体の話は聞いていたわ。紅映と連絡が取れれば良いのよね?』
「うん、話が早くて助かるわ。お願いできるかしら?」
『少し時間掛かるかもしれないから、ちょっと待ってて』

そう言って巫子は一旦姿を消して、暫く経つと困った表情をしながら戻ってきた。

『ごめんなさい………。何故かわからないけど、紅映と連絡が取れないの。切名にも頼んでみたけど、やっぱり繋がらないみたい………』
「そうなの?紅映さん、どうしたんだろう………?」
「まさか、早々に状況を把握して逃げたとか………?」
「バカなこと言わないの。そもそも、どうやってこっちの世界の状況を紅映さんが知ることが出来るのよ。私たちだって、巫子が居なかったら何もわからないのに………」
「それもそうだけど………。もし、万が一に他にこっちの状況を知ることが出来る手段があったら、どうする?」

由宇の突発的な意見に、流石に誰もそこまで考えられなかった。
だが、もし万が一にもその手段があるとすれば………紅映はこちらの状況を知ることが出来るということだ。
そうなると何か理由があって会うことを拒んでいるとも考えられる。
その理由がわからない限り、こちらから会うことが出来ないということになる。

「う~ん………どうしたものかね?」
「でもさ、こっちの状況を知った上で会うのを拒んでいるとして、その理由は愛鈴さんの件と何か関係があるって取ってもよくないか?」
「確かに、そう考えられはしなくもないけど………。実際、会えないことに変わりはないけれど、何か理由があるから会えないのは確かよね」
『その紅映って子が、私の知っている”くれは”なのかも、まだわからないけれど………。その子の特徴って、何かないかしら?』
「特徴か………。猫目で、髪は脇の下までのお下げに縛っててちょっと癖毛っぽい、って感じかな。あとは、………なんかあったか?」
「私もそれくらいしか覚えてないわ」
「ごめん。その時は他のことで頭がいっぱいだったから………。そこまではっきりとは覚えてないんだ」
『ううん、それでも大丈夫よ。たぶん、あなた達が会った紅映って子は、間違いなく私の知っている”くれは”の特徴と一致してるわ。その子、こんな模様のスケッチブックを持っていなかった?』

そう言って、愛鈴は手元にあったメモ用紙に、シンプルな模様を描いた。
その模様を見て、由宇は「ああ、確かにこんな模様のスケッチブック、持ってたかも!」と叫ぶと、『じゃあやっぱりそうなのね』と愛鈴は納得したように頷いた。

どうやら愛鈴がいう”くれは”は由宇達が会った紅映と同一人物だという事は分かったが、だがなぜ今回は会うのを避けるようなことをしているのか?
謎が謎を呼び、真相はいつまでも見えそうにない。

「紅映さんに会えない限り、進展はなさそうね。とりあえず、巫子は引き続き紅映さんに連絡が取れないか試してみて。私たちは別の方法を考えましょう」
『わかったわ、何かあったらまた連絡するわ』
「ありがとう、お願いするわね」

そうして、巫子はまた紅映との連絡を取れないか、試行錯誤してみたものの、やはり連絡は一向に取れずに苦戦していた。

「連絡が取れるまでの間に、私たちは他のことで模索しましょう。カードの導きは『正位置の月』だったわね。他の意味合いからして、考えられるとしたら………疑心暗鬼、かしら?」
「それって、疑り深くなってるって状態のことだろう?でも、何に対して疑ってるのかで、意味が変わるんじゃないのか?」
「確かにそうね。何に対してそう言う状態なのかが鍵になるかもしれない」
「そうと決まれば、俺たちがすることは、その鍵についての検証か?」
「検証………っていうか、確認ね。もう一つに意味として、誤解って言うのもあるから。何かしら見誤っている可能性も、ないわけでもないから。とりあえず、行動するには慎重にしないといけないわね」

そう言いながら愛依は何かを考えるように、口元に手を当てる。
その行動に、由宇を含め他のメンバーは、愛依が集中するときにする仕草であることを知っていたので、声を掛けはしなかった。
その時チャイムが鳴り響き、『下校時間になりました。校内に残っている生徒は作業を辞め、下校の仕度をしてください』という放送が流れた。

「え、もうそんな時間?」
「う~ん、流石に今日はここまでかな。ごめん、愛鈴さん。続きはまた明日でも良いですか?」
『構わないわ。私はいつも此処にいるから、いつでも会いに来て』
「わかりました、では今日はこれで失礼します」

「また明日」と言い音楽室を後にして皆が一旦教室へ戻ると、ちょうど見回りの先生がやって来て。

「ほら、もう下校時間だぞ。早く仕度して、気をつけて帰れよ」
「「「は~い」」」

そう声を掛けて他の教室へと見回りに行って先生を見送り、一葉達は帰り仕度をして教室を出た。
そして玄関に向かい、靴を履き替えているときに、ふとポケットから1枚の紙切れが落ちたのに気付いて。
何かメモを入れていたかな?と、拾い上げてみると、その紙切れには小さな文字でこう書かれていた。

―――目に見えるものだけが、真実とは限らない―――。

その言葉の意味がわからず、また、なぜこんな者がポケットに入っていたのかさえ気付かずにいたのか。
一葉は疑問に思いながらそのメモを見つめていると、急にその紙がふわりと宙に浮かんだ。
そして、まるで誰かが小さく破いているかのように細かく千切れ、そしてどこからともなく風が吹いて、掻き消されていった。

「………今のは………?」

そう呟いて周りを見渡していると、先に校庭に出ていた由宇が声を掛けた。

「お~い、一葉。何ぼけ~っとしてるんだよ?早く帰ろうぜ」
「………ああ、今行く」

急いで靴を履き、由宇達と合流して。
校舎から出て帰り道に赴くと、またいつものように他愛のない話に盛り上がっていた。

その時、旧校舎の中からある人物がその光景を見つめていることに、誰も気付くことはなかった―――。

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