4 / 108
二章 水霊祓い
4、白を基調とした淡泊
しおりを挟む
白を基調とした淡泊な建物が立ち並び、野性の鹿が街道を往来する様を散見できる古都、ロオマ県であったが、そんな古めかしい風物の一画にある花屋の二階に、ノノバラは居候をしていた。味気のない空き部屋であり、必要最低限の家具くらいしか目に留まる物は置かれていなかった。ただ、机の上には手配書が散乱しており、ノノバラは、椅子に腰かけ、その一枚一枚を食い入るように見漁っていた。その手配書のいずれもが、ルージュと呼ばれる組織に名を連ねる犯罪者の顔と氏名を明記したものであった。多くの暗殺や麻薬取引に携わり、世界を股に掛けて暗躍する巨大な犯罪組織こそが、ルージュである。その構成員の中でも、所業が露見している人間については、密かに報奨金をかけられ、名うての賞金稼ぎの獲物に仕立て上げられるのである。
ノノバラもまた、危険な生業を始めようかと、この頃になって頭を悩ませている。手前味噌と言われようが、腕っぷしには自信があったし、一介の犯罪者くらいであるならば、容易く捕らえられるのではないかと高を括っている。そんな想念を抱きつつも手配書を代わる代わる手に取って確認している最中、身勝手にも部屋に押し入り、ノノバラの前に姿を現した者がいた。一見すると、変哲もない素朴な少女であるものの、ノノバラにとっては、かねてより見知った顔である。名をミキキ・キキミミといい、“赤獣の女王”という教会に属する教徒である。かつてノノバラも、そこに腰を落ち着けていたけれど、ほんの数時間前に仕事を放り出して無断で抜け出したため、彼女は、きっと連れ戻そうと説得をしに来たのだろうと察した。
カノンの死の直後まで遡ってみると、ノノバラに対する農民からの視線は冷ややかなものであった。両親ばかりかカノンまでもが亡くなったせいで、ノノバラは呪いの子だとか、親殺しだとか、そんな噂がまことしやかに流布されたばかりか、再び孤児となった彼を誰一人として引き取ろうとはしなかった。散々除け者として扱われ、その挙句、赤獣の女王に預けられたので、否応無しに新たな生家とせざるを得なかった。ところが、この教会は、並大抵の教会とは一線を画しており、悪に対して武闘派の姿勢を貫いているものだから、むしろ自警団と似通っていた。そこに所属する教徒は皆、敢然と悪に抗う戦士である。猫も杓子も武器を手に取り、世に跋扈する犯罪の温床を根絶やしにして回っている。とりわけ、ルージュに対しては非常に好戦的であり、今日に至るまで臆することなく戦いを挑み続けている。差し出がましいようにも思えるが、ルージュの手回しによって警察が腐敗しきってしまったので、それに成り代わる存在として、庶民から一目置かれている。
ノノバラもまた、危険な生業を始めようかと、この頃になって頭を悩ませている。手前味噌と言われようが、腕っぷしには自信があったし、一介の犯罪者くらいであるならば、容易く捕らえられるのではないかと高を括っている。そんな想念を抱きつつも手配書を代わる代わる手に取って確認している最中、身勝手にも部屋に押し入り、ノノバラの前に姿を現した者がいた。一見すると、変哲もない素朴な少女であるものの、ノノバラにとっては、かねてより見知った顔である。名をミキキ・キキミミといい、“赤獣の女王”という教会に属する教徒である。かつてノノバラも、そこに腰を落ち着けていたけれど、ほんの数時間前に仕事を放り出して無断で抜け出したため、彼女は、きっと連れ戻そうと説得をしに来たのだろうと察した。
カノンの死の直後まで遡ってみると、ノノバラに対する農民からの視線は冷ややかなものであった。両親ばかりかカノンまでもが亡くなったせいで、ノノバラは呪いの子だとか、親殺しだとか、そんな噂がまことしやかに流布されたばかりか、再び孤児となった彼を誰一人として引き取ろうとはしなかった。散々除け者として扱われ、その挙句、赤獣の女王に預けられたので、否応無しに新たな生家とせざるを得なかった。ところが、この教会は、並大抵の教会とは一線を画しており、悪に対して武闘派の姿勢を貫いているものだから、むしろ自警団と似通っていた。そこに所属する教徒は皆、敢然と悪に抗う戦士である。猫も杓子も武器を手に取り、世に跋扈する犯罪の温床を根絶やしにして回っている。とりわけ、ルージュに対しては非常に好戦的であり、今日に至るまで臆することなく戦いを挑み続けている。差し出がましいようにも思えるが、ルージュの手回しによって警察が腐敗しきってしまったので、それに成り代わる存在として、庶民から一目置かれている。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる