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六章 天国分譲
39、権威の持ち主を探し回った
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ユウカリは、アマクサに勝る権威の持ち主を探し回った。騎士に出くわすたびに、最も地位のある人間を誰なのかと質問を投げかけて、その末に一人の騎士の存在を知った。騎士のみならず、大騎士までもが口を揃えて同じ名前を口にしたので、その女性がシチューリア支部において最も権威ある者だと確信を抱いた。大騎士候補の一人で、名をアナウンシアといった。聞く所によると、シチューリア支部の長を自称しているらしく、実力も然る事ながら、面倒見のいい性格であるからして、大騎士を含む多くの騎士から慕われているという。なので、アマクサがどれほど威張り散らして主張しようとも、騎士の概ねはアナウンシアを支部長として推している。
アナウンシアは、中庭にて空を仰ぎ見ており、西日が差す頃合いの心なし黄ばんだ快晴を見つめるその面持ちは、真剣なものであった。ユウカリは、ずかずかと彼女に近寄って、声を掛けた。
「失礼。あなたがアナウンシアという人間かしら?」
アナウンシアは、声の方へ視線を転じると、すぐに微笑した。「お客様ね。どちらさま?」
ユウカリは、軽く自己紹介をして素性を明かし、それから単刀直入にこう切り出した。
「本日はお願いがあってわざわざ訪問しましたの。あなたがた赤獣の女王は、この地上に天国を創造するために聖碑石を七つ集めようとしている。しかし、その内の四つはルージュの手中にあり、もうじき飛来する最後の聖碑石をも奪取されかねない状況にある。そこで、サクラダ財閥が全面的に後援してさしあげますわ。あなたがた赤獣の女王が、悲願を達成するその日まで」
それを受けてアナウンシアは、微笑みをたたえて答えた。「ありがたい申し出ねぇ。けど、慈善ではないでしょ?」
「後援する代わりに、晴れて天国を創造した暁には、その土地をサクラダ財閥に分譲していただきますわ。もっとも、天国がどういったものなのかは、いまだ定かでないけれども、どんな形であれ一部を譲っていただきますわよ」
「ふざけるにもほどがあるぞ!」アマクサは、黙っていられなくなって怒声を上げた。「財閥風情が、口を慎みなさい!赤獣の女王の悲願は、易々と誰かに売り渡せるものではない!ただちに帰宅し、泡銭という言葉の意味を学びなさい!」
そういきり立つアマクサに、アナウンシアは、「こら!騒がしくしない!」と声を張り上げて叱りつけた。
アナウンシアは、中庭にて空を仰ぎ見ており、西日が差す頃合いの心なし黄ばんだ快晴を見つめるその面持ちは、真剣なものであった。ユウカリは、ずかずかと彼女に近寄って、声を掛けた。
「失礼。あなたがアナウンシアという人間かしら?」
アナウンシアは、声の方へ視線を転じると、すぐに微笑した。「お客様ね。どちらさま?」
ユウカリは、軽く自己紹介をして素性を明かし、それから単刀直入にこう切り出した。
「本日はお願いがあってわざわざ訪問しましたの。あなたがた赤獣の女王は、この地上に天国を創造するために聖碑石を七つ集めようとしている。しかし、その内の四つはルージュの手中にあり、もうじき飛来する最後の聖碑石をも奪取されかねない状況にある。そこで、サクラダ財閥が全面的に後援してさしあげますわ。あなたがた赤獣の女王が、悲願を達成するその日まで」
それを受けてアナウンシアは、微笑みをたたえて答えた。「ありがたい申し出ねぇ。けど、慈善ではないでしょ?」
「後援する代わりに、晴れて天国を創造した暁には、その土地をサクラダ財閥に分譲していただきますわ。もっとも、天国がどういったものなのかは、いまだ定かでないけれども、どんな形であれ一部を譲っていただきますわよ」
「ふざけるにもほどがあるぞ!」アマクサは、黙っていられなくなって怒声を上げた。「財閥風情が、口を慎みなさい!赤獣の女王の悲願は、易々と誰かに売り渡せるものではない!ただちに帰宅し、泡銭という言葉の意味を学びなさい!」
そういきり立つアマクサに、アナウンシアは、「こら!騒がしくしない!」と声を張り上げて叱りつけた。
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