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流せ、綴れ、情愛
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まもなくシフォンはオッド=アインに駆け寄り、その怪我の程度を確かめつつも身を案じた。「怪我は大丈夫でしょうが、もうあまり無茶な事はしないでください…!あなたのそんな姿は、もう見たくありません…!」
「うるさい!!」オッド=アインは、シフォンの手を撥ね除けた。「俺に情けなど必要ない!!ましてや、父を裏切った者などに!!」と反駁すると、よろつきながらも茂みの中へと消えていった。
オッド=アインに突っぱねられた事が余程ショックだったのか、シフォンは気落ちしたように、うつむいた。そんな彼女に対し、ポワソンは楽観しながら、こう声をかけた。
「まぁ、いいじゃないか!あの男は、シュラプルを自然に帰そうとしたんだ、返り討ちにされたって文句は言えないよ!それに、これからは、この洗礼のエラクレスがシュラプルを導いていくんだから、仮にあの男が仕返しに来たとて、何も心配する事はないよ!」
「お前がシュラプルを導くだなんて、冗談は顔だけにして、いい加減に大人になれ!」メルヘンは、ポワソンを叱りつけた。
「いや、僕は本気さ。本気でシュラプルを繁栄に導こうとしているのさ」ポワソンは、やけに荘厳な風格を漂わせて言った。「このシュラプルの中で最も強大な力を持つ僕こそが、住人を束ねるにふさわしい。見ただろう?あの将軍までもが僕を認め、大いなる力を授ける所を!僕こそが王の器である事を彼だって理解しているし、君たちだって僕を支配者として認めざるを得ないはずだ。ならば、僕は、その期待に応える責務があるんだ」
傲慢なポワソンに腹を立てたアスレチックは、アンデスとブブゼラに対してこう呼びかけた。「なぜ貴公らは黙っているのだ!?このままではポワソンをつけあがらせるだけではないか!!」
アンデスとブブゼラは、伏し目になり、一言も返そうとはしなかった。とりわけ、ブブゼラは、差し含む涙を必死に堪えつつも、そそっかしく焦燥していた。彼らは長年に渡る軋轢により、口を利こうにも聞けず、次兄の台頭を黙認しようとしているのだ。それほどまでに気まずい思いをしていたのだ。父母を同じくする兄弟でありながら、既にその関係は、赤の他人と同等かそれ以下にまで腐り果てていたのだ。
「ハハハ!!もはや僕に敵う者は誰一人としていない!!遂に、僕がシュラプルを導く時が来たんだ!!」ポワソンは、おごり高ぶり、悠々とシュラプルへ帰っていった。
幾ばくか時が経った頃、シュラプルの住人は、新たな導き手の姿を仰いでいた。支配者を自称する青年、ポワソンである。自然を操るほどの力と揺るぎない自信を兼備しているが故の傲慢にも似た佇まいは、住人を心服させ、その眼差しを一身に集めていた。彼は、高台から住人を一望しつつもこう宣言した。
「ここにいるのが、シュラプルを未曽有の繁栄へと導く者、洗礼のポワソン・エラクレスである!!」
そして、原初の雷と震撼を呼ぶ鉾を高々と掲げ、その大いなる力を皆の前に知らしめてやった。天に放たれた稲妻を鉾の力によって大きく揺さぶり、嘶く馬を形作ると、自らが自然を超越した証を立ててみせたのだ。稲妻すらも従える勇姿に圧倒された住人からは、拍手喝采が沸き起こり、誰もがポワソンを畏れ多き王として崇め始めた。しかし、熱気を帯びる群衆より遥か後方、六人の廻仔らは、冷ややかな目でその様子を遠巻きに見ていた。とりわけ、アンデスは、ポワソンの自尊心の強さを危惧していた。住人にもてはやされ、祭り上げられ、今のポワソンは有頂天となっていた。
ふとトロンは、群衆に紛れてポワソンを見上げるエシレウスを目撃した。自らの手で仕立て上げた支配者の晴れ舞台だというのに、その表情は険しく、ポワソンに対して不快感を露わにしているようにも見えた。
「うるさい!!」オッド=アインは、シフォンの手を撥ね除けた。「俺に情けなど必要ない!!ましてや、父を裏切った者などに!!」と反駁すると、よろつきながらも茂みの中へと消えていった。
オッド=アインに突っぱねられた事が余程ショックだったのか、シフォンは気落ちしたように、うつむいた。そんな彼女に対し、ポワソンは楽観しながら、こう声をかけた。
「まぁ、いいじゃないか!あの男は、シュラプルを自然に帰そうとしたんだ、返り討ちにされたって文句は言えないよ!それに、これからは、この洗礼のエラクレスがシュラプルを導いていくんだから、仮にあの男が仕返しに来たとて、何も心配する事はないよ!」
「お前がシュラプルを導くだなんて、冗談は顔だけにして、いい加減に大人になれ!」メルヘンは、ポワソンを叱りつけた。
「いや、僕は本気さ。本気でシュラプルを繁栄に導こうとしているのさ」ポワソンは、やけに荘厳な風格を漂わせて言った。「このシュラプルの中で最も強大な力を持つ僕こそが、住人を束ねるにふさわしい。見ただろう?あの将軍までもが僕を認め、大いなる力を授ける所を!僕こそが王の器である事を彼だって理解しているし、君たちだって僕を支配者として認めざるを得ないはずだ。ならば、僕は、その期待に応える責務があるんだ」
傲慢なポワソンに腹を立てたアスレチックは、アンデスとブブゼラに対してこう呼びかけた。「なぜ貴公らは黙っているのだ!?このままではポワソンをつけあがらせるだけではないか!!」
アンデスとブブゼラは、伏し目になり、一言も返そうとはしなかった。とりわけ、ブブゼラは、差し含む涙を必死に堪えつつも、そそっかしく焦燥していた。彼らは長年に渡る軋轢により、口を利こうにも聞けず、次兄の台頭を黙認しようとしているのだ。それほどまでに気まずい思いをしていたのだ。父母を同じくする兄弟でありながら、既にその関係は、赤の他人と同等かそれ以下にまで腐り果てていたのだ。
「ハハハ!!もはや僕に敵う者は誰一人としていない!!遂に、僕がシュラプルを導く時が来たんだ!!」ポワソンは、おごり高ぶり、悠々とシュラプルへ帰っていった。
幾ばくか時が経った頃、シュラプルの住人は、新たな導き手の姿を仰いでいた。支配者を自称する青年、ポワソンである。自然を操るほどの力と揺るぎない自信を兼備しているが故の傲慢にも似た佇まいは、住人を心服させ、その眼差しを一身に集めていた。彼は、高台から住人を一望しつつもこう宣言した。
「ここにいるのが、シュラプルを未曽有の繁栄へと導く者、洗礼のポワソン・エラクレスである!!」
そして、原初の雷と震撼を呼ぶ鉾を高々と掲げ、その大いなる力を皆の前に知らしめてやった。天に放たれた稲妻を鉾の力によって大きく揺さぶり、嘶く馬を形作ると、自らが自然を超越した証を立ててみせたのだ。稲妻すらも従える勇姿に圧倒された住人からは、拍手喝采が沸き起こり、誰もがポワソンを畏れ多き王として崇め始めた。しかし、熱気を帯びる群衆より遥か後方、六人の廻仔らは、冷ややかな目でその様子を遠巻きに見ていた。とりわけ、アンデスは、ポワソンの自尊心の強さを危惧していた。住人にもてはやされ、祭り上げられ、今のポワソンは有頂天となっていた。
ふとトロンは、群衆に紛れてポワソンを見上げるエシレウスを目撃した。自らの手で仕立て上げた支配者の晴れ舞台だというのに、その表情は険しく、ポワソンに対して不快感を露わにしているようにも見えた。
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