心の傷は残り続ける

濃霧

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4地雷と盗聴器

傷跡

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 自分が地雷を踏んでしまったせいで、そのあとの話もなんだか弾まなくなってしまった。申し訳ない気持ちと、柿本さんに何とかしてあげたいという気持ちが交錯していた。
 急に風が吹いたのか、それとも磁力が弱まったのかどちらの要因かは分からないが、黒板に磁石で貼り付けてあった掲示物がひらりと床に落ちた。気まずい雰囲気になっていた自分にとって、気をそらす機会が出来て少し安心した気持ちになった。視線を柿本さんに合わせる必要がなくなったからだ。
 その掲示物を、近くにいた能勢さんが拾い上げて再び同じ磁石で黒板に貼り付けた。その直後に柿本さんが黙って席を立って、湖さんを呼んで彼女と一緒にトイレに行った。
 柿本さんがトイレに行っている間、自分は自分の席で、一人で自分を責めていた。何であんな軽はずみは発言をしてしまったんだろう・・・・・・
 ある意味、不可避な地雷ではあったのだが、偶発的な事故であっても、その根本的な原因は自分にある。
それにしても、今日だけで色々な事実やら普段見られない様子を知ったり見たりしている気がする。小沼さんについてもそうだ。あの職員室での自分と彼女との会話は異様なものでしか見て取れない。そして、荻原さんに関してもだ。カラーコーンを発見したときの彼女の様子。普段から確かに近寄りがたい雰囲気を出しているということに関しては否めないものの、普段の彼女らしからぬ様子だった。いい意味においては、外山。彼のリーダーシップは普段見られない様子であり、非常に頼もしい存在に思える。
 逆に湖さんはいつも通りの感じだ。飯村は・・・・・・特に変な様子を見せることはなかったが、一瞬だけ何かが引っかかっていた。だが、それが何なのかは分からない。
 罪悪感と違和感が渦巻くこの自分の心情および脳内を整理するのはそう簡単なことではない。もし、ここで何らかの事件が起きたとしたら、自分の頭はパンクするかもしれない。
 自分は机に右肘を当てて、右手は頭を抱えていた。その様子を心配したのか、飯村が自分の右肩を二回つついてから喋りかけてきた。
 「大丈夫?なんか悩んでるみたいに見えたけど」
「あ、うん。大丈夫だよ」
 自分の問題なのに、他人に迷惑をかけるわけにはいかない。ただ、こういうお互いを励ましあうことは非常に大事なことだなと思った。
 しかしどうやら飯村が自分に喋りかけてきたのはただ単に自分のことを心配してくれているだけではなかった。
 「ちょっとトイレ行きたいんだけど、一緒についてきてくれる?」
「あ、いいよ」
 特に断る理由もないので、飯村と一緒にトイレに行くことにした。
 トイレの中には手を洗う洗面台が二つあり、その洗面台は隣り合っていた。トイレを済ませた後、自分と飯村がその二つの洗面台を使った。
 自分が手を洗っているとき、ふと飯村のほうを見ると、飯村の左腕にひっかき傷のようなものがあるのが見えた。
 この時期はちょうど制服の移行期間というやつで、夏服を着ても冬服を着てもいいというルールになっているのだが、この五月の終わりでほとんどの生徒が夏服を着ている中、飯村はずっと冬服を着ていた。ずっと長袖の制服姿の飯村しか見てこなかったため、自分はその飯村の傷には気づかなかった。
 「飯村、その傷どうしたんだ?」
 すると、飯村は水道の蛇口を急に止めて、視線を彼自身の傷の方に向けた。
 「ああ、これは猫に引っかかれたんだよ」
「へえ、猫飼ってるんだ」
「うん」
 飯村が少し動揺しているように感じた。だが、ここでまた変に話を掘り進めていってさっきのようなことになるのが嫌だったため、深堀りはせずにここで会話を止めた。
 ただ、あの傷は本当に猫に引っかかれたものなのだろうか。自分は動物を飼ったことがないため、実際に動物に引っかかれた傷跡というものがどういう風な感じなのかは分からない。だが、動物の爪よりももっと浅くて細い・・・・・・そんな感じの傷に見えた。あくまで自分の想像するものとの違いであるため、彼がその傷について誤魔化していると断定はできないが。
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