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一巻 未知の始まり 第一章 始まりの時
02
しおりを挟む「そんな事、ママに聞かれても分かる訳がないでしょー? ほら、早く来て!」
涙目になりながら、守莉は直志の服を引っ張った。
「しまった……汚しちゃった」
そう呟き、何とかして汚れを取ろうとしている直志だったが、諦めてソファーから腰を上げる。そうして、何が起きたのかと綺麗な顔を上げる真誠を置いて、直志は守莉と共に飛華流の方へ歩いていく。
もたもたしていた二人に待たされていた飛華流は、目に涙を浮かべて不満を口にする。
「遅いよ二人共っ! 今、一大事なんだよっ!」
「きゃーー! ひ、飛華流……後ろー!」
いきなり叫び声を上げた守莉は、飛華流の背後に怯えた瞳を向けている。それは、その隣に居る直志も同様だった。
「――えっ? う、後ろ?」
とても嫌な予感がしながらも、飛華流はそっと振り返った。
すると、飛華流の目の前に、さっきの少女が立っていた。い、いつの間に?
半泣き状態の飛華流の顔を、少女はじっと覗き込む。何だよこの子……僕をガン見してくるんだけど。少女に恐怖を感じ、ビクッとする飛華流から彼女は全く目を離さない。
普通ではあり得ない出来事が起き、上野家は大混乱だ。全員、間抜けに口をあんぐりさせている。
目の前の少女に怯え、飛華流は泣きながら守莉に飛びついた。
「うわーーーー。ママー!」
言葉を失ったまま、守莉は飛華流の背を優しくさする。少女に驚きつつも、直志は怖がる二人にこう言った。
「うおっ……二人共、落ち着いて。ほら、小さな女の子だよ」
艶のある桜色の長い髪に、透き通った白い肌。お人形の様に、整った顔立ちをしている。アニメの世界から出てきた様な、どこか異質な雰囲気を醸し出す、容姿端麗な美少女――
いや、どこが普通の女の子だよっ! そう、二人は心で突っ込んだ。
突然、少女は歩き出し、飛華流へ接近する。
「――えっ?」
自分と少女の距離がどんどん縮まっていく事に、飛華流は困惑した。そんな彼を、何故か少女は無表情でじーっと見つめる。その同年代くらいの少女に、飛華流は見惚れていた。
なんだか、前にもこの子と会った事がある様な、そんな気がするよ。懐かしさを感じるが、飛華流はこの少女の事を全く知らなかった。それなのにそんな妙な感覚がある事を、彼自身も不思議に思った。
いや、でも――この顔、どこかで見た事が――と、何かを思い出そうとしていた飛華流。彼は、「あっ、そうかっ!」と、納得のいく答えを見つける。
飛華流は、趣味で漫画を描いている。そこに登場する姫のキャラクターに、この少女はよく似ていた。だから、彼は少女に懐かしさを感じたのだろう。
まじまじと少女を眺め、直志と守莉は顔を見合わせる。そして、大きな目を見開いて煩い顔を更に強調させた直志に、守莉は声を潜めて言う。
「ねえ、また? ……何で?」
「こらっ……もういいって」
不愉快そうな顔をし、直志は守莉を叱る。すると、守莉は「あっ……ごめん」と口を押えた。そんな不自然な二人に、飛華流は尋ねる。
「えっ? またって何? こんな事、前にもあったの?」
「うーんとね……なんて言えばいいのかな。この女の子と……」
困った様子で何かを言いかける守莉を、直志が遮る。
「もう、この話はやめやー。……とりあえず、今はこの子をどうにかしないかんよ」
落ち着きを取り戻した守莉は、少女に優しく話しかける。
「あら、すごく可愛い子だね……どうしたの? 迷子になっちゃった?」
「ナコゾコノハテドキコ?」
ロボットの様な可愛らしい声で、少女は謎の言語を発した。聞いた事の無い、摩訶不思議な少女の言葉を、皆は繰り返す。
「……ナコゾコノハテドキコ?」
辺りをキョロキョロと見渡し、少女は再び口にする。
「ナコゾコハ……テドキコ?」
「いや、待て待てっ! それって、どこの国の言葉だよっ!」
全員、思わず声を揃えてそう突っ込んだ。予想外の謎の少女の登場に、呆気に取られる上野家。これでは、少女との意思疎通は難しそうだ。
小さく首を傾げる少女を見て、守莉は頭を悩ませる。
「ちょっと、どうしよう……この子、うちらに何か伝えようとしてるみたいだよ。分かってあげられなくて、なんか申し訳ないなー」
「英語ではないよな……あれは、何語なんだ?」
壁に隠れ、真誠はチラッと顔を出して少女の様子を伺っていた。
「異世界語じゃない?」
「宇宙語でしょ」
飛華流に続き、守莉がそんな馬鹿げた事を発した。その後に、直志までふざけ出す。
「リンゴだよリンゴ」
「はっ? 皆して、何馬鹿な事言ってんだっ! もっと、真面目に考えろよっ!」
真誠に怒られ、守莉は真面目に考え始める。
「パパさ……新婚旅行でアメリカに行った時、話しかけてきた外人にノリとジェスチャーで返してたじゃん? あんな感じに、この子にもやってみてよ」
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