9 / 51
一巻 未知の始まり 第一章 始まりの時
09
しおりを挟む真誠の視線の先には、飛華流の部屋を興味深そうに見渡しながら歩き回る少女の姿があった。
それを見つめ、真誠は何に驚いているのだろうと不思議に思う飛華流だったが、その原因は、直ぐに明らかとなる。
なんと、少女の尻から、ギザギザとした尻尾の様なものが生えていたのだ。それは、どの動物にも該当しない、見た事の無い独特な形をしていた。
飛華流は、間抜けな声を上げる。
「ひゃっ……えっ? こ、この子……尻尾があるの? う、嘘でしょ?」
驚く二人に振り返り、少女は小さく首を傾げた。
まあ、角が生えているんだから、尻尾があったっておかしくはないけど……なんで、人間に動物のものが二つも生えてるんだよっ!
あまりにも多くのあり得ない情報が入ってきて、飛華流の脳内は故障寸前だった。
午後五時を回った頃、真誠はピアノのレッスンへ行った。そうして、得体の知れない少女と、飛華流は二人きりとなってしまった。
なんだか、落ち着かないな。さて、これからどうしようか。
しばらく頭を悩ませた後、飛華流は本棚から可愛らしい表紙の絵本を取り出した。
この子に日本語を教えてやれと、ママから頼まれてるし、絵本の読み聞かせでもしてみるか。
「これ、僕のお気に入りの絵本なんだ……読んであげるよ」
飛華流はベッドへ腰を下ろし、少女に手招きをする。そして、「孤独な宇宙人」とタイトルの記された絵本の最初のページを見開いた。
少女は飛華流の隣にちょこんと座り、彼が物語を語ると一生懸命に聞いていた。
飛華流が少女に読み聞かせをしている作品は、地球で迷子になった幼い宇宙人が、友達を作る為に人間に化けて生活していくストーリーになっている。
思考や容姿が特殊だった為、いじめられたり仲間外れにされる、宇宙人の悲しい日々が描かれている。これを読むと、飛華流はかなり切なくなった。
「トロリンは、周りの子供から心無い事を言われ、とても傷つきました。どうして皆、僕を笑うのだろう。どうして皆、僕を嫌うのだろう……」
絵本を音読している飛華流の目から、自然と涙が溢れてきた。僕はこの宇宙人と、似た様な環境にいるんだ。
主人公の宇宙人に共感する点が多く、飛華流は幼い頃から今でもこの絵本をとても好んでいる。
一人で寂しそうに夜空を見上げる宇宙人のイラストは、自分を見ているみたいだと、飛華流は感じていた。
全てを読み終えると、少女が飛華流の手に絵本を押し付ける。彼女はもう一度、飛華流に読んでほしいのだろう。
それを感じ取った飛華流は、何度も少女に同じ話を聞かせた。宇宙人と、自分をリンクさせながら――
「僕は皆と違うから、嫌われているんだね……トロリンは、悲しそうに微笑んだ」
きっと、飛華流の言葉を、少女は理解できていないだろう。だが、イラストも多くあるので、何となくでも内容が彼女に伝わっているかもしれない。
吸い込まれていきそうな程、絵本に釘付けになっている少女を横目で見て、飛華流は母親に言われた事を思い出す。
「飛華流……この子が困っていたら、助けてあげてね」
それって――つまり、僕がこの子を守っていくって事? 自分に人を支えられる力なんて無いし、自分の事で精一杯だから面倒だなと思う飛華流だったが――微かに口角を上げ、嬉しそうにしている少女に、何かしてあげられたらないう気持ちは、飛華流にもほんのりと湧いていた。
0
あなたにおすすめの小説
氷結の夜明けの果て (R16)
ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン)
よくある異世界転生?
使い古されたテンプレート?
――そうかもしれない。
だが、これはダークファンタジーだ。
恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも――
まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。
穏やかな始まり。ほのかな優しさ。
だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。
その時が来れば、闇は牙を剥く。
あらすじ
失われた魂――影に見つめられながら。
だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか?
異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。
生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。
――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。
冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、
彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。
だが、栄光へと近づく一歩ごとに、
痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。
光の道を歩んでいるかのように見えて――
その背後で、影は静かに育ち続けていた。
――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。
🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。
🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。
🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。
ヴェイルは進む。
その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。
それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
借金5億で異世界転移、よりによって金本位制の世界だった
夜明け一葉
ファンタジー
32歳の個人トレーダー・佐藤慧は、5年間の雪辱を賭けたトレードで5億円の借金を抱え、意識を失った。目覚めると、そこは剣と魔法が存在する見知らぬ世界だった。常識が通じない異世界で、金貨を見るだけで嘔吐する「金アレルギー」を抱えながら、若き冒険者リナと出会い、生き延びる術を探し始める。諦めることだけができなかった男が、新たな世界で再び立ち上がる異世界サバイバル譚。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる